冨永昌敬監督&主演のムーディ勝山がオムニバス映画『同じ星の下、それぞれの夜』を語り尽くす!
2月9日(土)より、富田克也監督・冨永昌敬監督・真利子哲也監督による映画『同じ星の下、それぞれの夜』が公開されます。
本作は、東南アジアの3ヵ国を舞台としたオムニバスムービー。富田克也監督がタイにて『チュンライの鐘』、冨永昌敬監督がフィリピンにて『ニュースラウンジ25時』、真利子哲也監督がマレーシアにて『FUN FAIR』を手がけています。
公開に先駆け、『ニュースラウンジ25時』のメガホンを執った冨永監督、映画初主演のムーディ勝山を直撃しました!
――本作を製作するに至った経緯は?
冨永 2011年の11月中旬にお話をいただいたんですけど、翌年の沖縄国際映画祭に間に合うようにつくってほしいと。だから急なお誘いだったんですよ。
ムーディ勝山(以下、ムーディ) それ、めちゃめちゃ時間ないですね。
――そこで、フィリピンと日本を行き来する男の話を思いつかれたんですね。
冨永 どう考えても製作期間が短いので、たぶん撮影日数も4~5日しかないだろうと。しかも現場はまったく未知数のフィリピンなので、安全策として、半分は日本のシーンにしたわけです。で、主人公が2国を行ったり来たりする話になったと。
ムーディ なるほど。そうだったんですか。
冨永 そうなんです。実際の撮影日数は……現地の準備も含めれば1週間くらいあったと思います。
ムーディ 体感的に3日くらいでしたけどね。
冨永 そうですか? ムーディさんは全編に出ているから、日本での撮影も含めると4~5日間くらいでしたよ。
ムーディ 日本で2日間、撮影しましたもんね。フィリピンでの最後の1日は何もなかったんで、みんなの撮影をあたたかく見守ってました。
――ところで冨永監督、今回なぜムーディさんを主役に選ばれたんですか?
ムーディ それ、僕も聞きたかったんです!
冨永 実は前々からムーディさんを狙ってたんですよ。で、吉本さんの企画だったから、せっかくならお願いしてみようと。
――いつくらいから狙われてたんですか?
冨永 ヒゲを剃った2~3年前くらいですかね。気づいたんですよ、この人は俳優の顔をしているってことに。
ムーディ えっ、ほんまですか?
冨永 はい。ヒゲを生やしていたときは、芸人さんにしか見えなかったんです。ある番組での佇まいが――失礼ながらも――笑いを狙っているように見えなくて。で、“この人はカメラの前での存在の仕方が他にあるんじゃないかな”と勝手ながら思ったわけです。
ムーディ ふふふ……そ、それは芸人としてどうやねんって話ですけどね。でも、まさかヒゲをそった僕に、そんなことを思ってくれる人がいたとは驚きました!
冨永 『ロストクライム -閃光-』っていう映画に、チラッと出てましたよね?
ムーディ はい、ほんまにチラッと。主人公の女の子のパシリというか、車で迎えに行った運転手っていう一瞬の役で出てました。
冨永 あれを観たときに、“なんてもったいない使い方をしてるんだ”と思ったんです。隣りにいるから言うわけじゃないですけど、ムーディさんは脇役にはあまり向いてません。
ムーディ えっ、それで今回、主役で使ってくれたんですか!? うわぁ、うれしい(と、噛みしめるようにつぶやく)。
――ムーディさん、選ばれた理由を訊いてなかったんですか?
ムーディ はい。そんなうれしいことならば、開口一番に言ってほしかったです!
冨永 まあ、撮影前にこういうこと言って、変に意識させちゃうのもマズいですから。僕としてはムーディさんのスケジュールをいちばん気にしてました。第2候補は考えてなかったので。
ムーディ ほんまにありがとうございます。めちゃくちゃうれしいです!
――実際、主演を初めてやってみていかがでしたか?
ムーディ 本当にいい経験をさせていただきました。でも僕、実は初日に油断してまして。
――というと?
ムーディ 今日はそんなに撮らないんじゃないかなと勝手に思って、現場に行ったんです。そうしたら、ニュースの原稿をめっちゃ読まなきゃいけなくて。“あ、今日はガッツリやるんや”と気づいてから、メイク室でずーっと台本を覚えてました。ほんまにすみません。
冨永 (笑)あの日は長かったですからね。
ムーディ フィリピンでは4日間くらいホテルに泊まったんですけど、唯一の娯楽は僕の前に泊まった日本人が忘れていったと思われる『ゴルゴ13』でした。当然のごとく、フィリピンには娯楽がなくて。部屋に帰ってテレビをつけても言葉がわからないし、お店にお酒を飲みに行くわけにもいかないし、ヒマやったんです。
冨永 そのホテル、日本人向けだったんですよ。
ムーディ はい。で、休憩時間とかに『ゴルゴ13』を読んでいたら、ちょっとだけ芝居がゴルゴっぽくなりました。
冨永 どのシーンですか?
ムーディ 寡黙なシーンで、眉をひそめたりしてたんですよ(笑)。
冨永 あぁ、イメトレになったんですね(笑)。しかもあの本、コンビニで売ってるペーパーバックでしたよね?
ムーディ はい。監督も『ゴルゴ13』がお好きで、撮影中、イルカの回の話で盛り上がりました。すごいんですよね、あの話って。
冨永 ゴルゴに「ザ・イルカ」という回があって、その話をしたんですよね。
――思わぬところで共通の話題ができたんですね。冨永監督、ムーディさんの役者ぶりはいかがでしたか?
冨永 これは僕のせいなんですけど……2国間を行き来する話にしてしまったので、腰を据えて落ち着いて撮影できる環境じゃなかったんです。だから、もうちょっと長く一緒にやりたかった。ご本人は俳優活動へシフトしていくという考えはあるんですか?
ムーディ いまのところはないですけど、いろんなことにチャレンジさせてもらいたいなとは思ってます。
冨永 芸人さんはお芝居が上手な人が多いですからね。森繁久彌さんとか渥美清さんとか、チャップリンもそうでしょうけど、昔は喜劇俳優という人たちが大勢いたわけじゃないですか。そういう才能って、いまでいうところのお笑いでしょう。やっぱり芝居が安定してますよね。芝居の基礎が、芸人活動のなかで身についてると思うんですけど、どうなんですか?
ムーディ どうでしょう? 余計なことはしないでおこうとは思いますけど。
――若い頃から、お客さんの前に立っているのがいい影響を及ぼしているのかもしれないですね。
ムーディ たしかに。コントや漫才は監督、脚本、演出、主演をふたりで全部やってるっていいますし。
冨永 そういう客観性を持っているところもいいんでしょうね。
――では、ほかの2作品についての感想は?
ムーディ 僕はナルシストなので、やっぱり自分が出ているところを重点的に観ちゃいました。でも、『チェンライの娘』の川瀬さんが女性に囲まれている感じもいいなと思いましたし、先輩であるRGさん(レイザーラモン)も出ていて、楽しく観られましたね。
冨永 偶然なんですけど、3作品とも共通した部分が多いですね。そもそも、日本人の男が東南アジアの国々へ行ってトラブルに巻き込まれる、という大筋が共通してる。別に3作品のあいだで示し合わせたわけではないんですけど、監督もみんな日本人の男なので、南国に対する願望が同じなんでしょうね。都合よく言うと、そう感じました。
ムーディ たしかに、南の国ってワクワクしますよね。どこかに下心が見えたり、浮ついた気持ちになるというか。
冨永 そういえば、この撮影の前どこかへ行かれてましたよね? そうとう日焼けしてましたけど。
ムーディ はい、シンガポールに行ってました。
冨永 東京に住んでいるっていう設定のムーディさんが真っ黒で、マニラにずっと住んでいる設定の(恋人役の)阿部(真理)さんが真っ白で。あのとき言わなかったけど、スタッフはムーディさんを白く塗るか、阿部さんを黒く塗るか相談してましたよ(笑)。結局、そのまま撮りましたけどね。
ムーディ すみません。……南の国で浮かれて、日焼けしてしまいました。
――(笑)そんなところも細かくチェックしてもらいたいですね。では、最後にニュースセンターを読んでくださっているみなさんへ、メッセージをお願いします。
ムーディ 2007年、一大旋風を巻き起こした男がフィルムを通して、どんな演技をしているのか。ぜひ観てください。
冨永 2007年っていうことは、あれから6年経ったんですか?
ムーディ そうなんです。6年間に酸いも甘いも知った男の演技を観ていただきたいですね。
冨永 いい映画なのは前提として、ムーディさんはいい俳優なので確かめに来てくださいと僕も言いたい。とにかく、ムーディ勝山を俳優と信じ込んで指名したので、僕の目の正しさを証明するためにもぜひ観ていただきたいなと思います。
――先ほど、監督が「もっと長く一緒にやりたかった」と言われていました。ムーディさん、次回作でまたお声がかかるといいですね。
ムーディ はい。僕、ほんまに出たいんですけど。
冨永 もちろん常にムーディさんのことを考えてますので、そのときはよろしくお願いします。
ムーディ こちらこそお願いします!
●作品情報
同じ星の下、それぞれの夜
公式サイト:http://www.onajihoshi.com/
2013年2月9日より公開!
『チュンライの娘』
監督:富田克也
出演:川瀬陽太、Ai、スシットラボン・ヌッチリ、レイザーラモンRG
『ニュースラウンジ25時』
監督・脚本:冨永昌敬
出演:ムーディ勝山、阿部真里、森松剛憲、西方凌
『FUN FAIR』
監督・脚本・編集:真利子哲也
出演:山本剛史、スン・ジェニー、アズマン・ハッサン
【ムーディ勝山】