吉本新喜劇座長・小籔千豊がよしもとクリエイティブカレッジ大阪で特別講義を開催!
8月18日、吉本興業が2008年に設立した、クリエイター及びスタッフを育成する養成校≪よしもとクリエイティブカレッジ:略称YCC≫で在校生とエンタメ業界に興味を持っている方々に向けた特別講義を開催することとなり、特別講師として吉本新喜劇座長、小籔千豊が大阪校に登壇しました。
小籔千豊は『「KOYABU SONIC」をはじめとするイベントの立案・企画におけるクリエイティブな考えと吉本新喜劇の将来における展望』と題して、「KOYABU SONIC」の主催者としての立場や、また吉本新喜劇座長としてのこだわりや今後の展望のほか、エンタメ業界を志す在学生に向けて心構えや求められるスタッフ像、自己プロデュース術など約1時間に渡って講義しました。なお、この講義はユーストリームを通じてYCC東京校、よしもと沖縄エンターテイメントカレッジにも配信され、3校合わせて147名が聴講しました。
冒頭は「KOYABU SONIC」開催の経緯を。レイザーラモンとのラップユニット“ビッグポルノ”結成から2008年の第1回『KOYABU SONIC』 までの出来事を語る小籔。持ち前の毒舌を挟みながら、悔しかったことなども包み隠さず話します。ですが、「開催できたのは多くのスタッフ、アーティスト、芸人」のおかげとも。ビッグポルノのラップは下ネタが多いのですが、「口からはゲスい言葉が出ていますが、心では感謝の気持ちでいっぱいです」とこぼしていました。
また、「KOYABU SONIC」を開催して楽しいことは?と司会者が尋ねると、「本人がやりたいことよりも、お客さん、アーティストの方を盛り上げることが大事」と小籔。「でも、やりたいことの先に他者へのメリットがあったらいい。お客さんが一番喜ぶことをすることが大切だと思います」と話しました。
そして話題は吉本新喜劇に。吉本新喜劇には代々の座長による“お笑い虎の巻”のようなものがあるそうですが、それを理解したり、学ぶことはとても大変なことなのだそう。「きっちり3時間、昆布でだしを取るよりも、簡単な出汁で十分おいしくできると。でも、料亭などでは毎日、時間をかけて昆布で出汁を取っているんですよね。この作業をするかしないかで、おいしいさが違ってくる。新喜劇の中でもきっちり出汁を取る作業が残っていると思うので、きっちり出汁を取るということを嫌がらずにした方がいいということを後世に伝えたい。僕はそれが一番大事かなと思います。8割そういう製法を使いながら、2割は斬新な味でお客様を飽きさせないようにする」と吉本新喜劇のさらなる発展を“出汁”に喩えて話しました。
吉本新喜劇のお客様の幅をさらに広げるための戦略もいくつか飛び出し、その一つとして「英語で吉本新喜劇を上演して、外国人を笑わせたい」という“世界進出”を視野に入れた展望も。そのためにはどんな段取りを踏むべきか、その手の内も明かしました。また、吉本新喜劇のブームを起こすためにと、サブカルチャー寄りのアプローチについて具体的な案も披露。「チャーリー浜さんで『ウォーリーを探せ』のような本を作り、美容院とかに置く」「Mr.オクレさんのおしゃれなフォトブックを作る」など、常日頃から考えているというアイデアを語りました。
特別講義では在校生からの質疑応答もあり、まずは沖縄校から「トークのポイントを教えてください」との質問が。この質問に対しては具体例を挙げながら「話し方など誰かの真似してもダメ。あと、誰もが分かる嘘はいいけど、整合性のない根本的な嘘はつかないこと」とのアドバイスを。
また、東京校からは、吉本新喜劇の台本を書きたいという方から「作家には何を求めますか」との質問がありました。「YCCにも新喜劇の作家になる方もいると思いますが」と前置きしつつ、「基本的に作家の書いた本がおもろいという試しは、ほとんどないです。9割9分9厘9毛おもろないです」と厳しい意見を。ですが、その理由は「作家は勉強しづらいポジションにいるから」と。常に現場の意見を聞ける環境に身を置き、芸人との関係を密に築くことが何よりも勉強になるとのこと。「(この意見を)悔しいなと思うなら、篠田麻里子さんではないですが“潰す気で来てください”。面白い子が入れば、新喜劇も盛り上がります」と鼓舞しました。
会場となった大阪校からは、ネタ作りに関することや講義の感想を交えての質問のほか、「トークライブの時に話すことは事前に考えているのか、その場で思いついたことを言っているんですか」という質問が。土肥ポン太とのトークライブ『悪口百恵』では何も決めずに話しているという小籔。
「きっちり考えて話すこともすごい技術だし、何も考えずにしゃべって笑いを取るのもすごい技術。ただ、きっちり考えてやっているとアドリブに対応できないこともあるから、どっちも必要だと思う。トークには通らないといけないチェックポイントがありますが、緊張すると自分が今、どこをしゃべっているか分からなくなる時があるから、僕はキチキチに決めずにフラットにしゃべっていく感じですかね」と独自の方法を伝授しました。
その後、講義を終えた小籔に感想などを尋ねました。
「新喜劇に入ったころは先輩方に質問したり、話を聞いて勉強になって今がありますので、本当は(講義をするのは)恥ずかしいんですけど、僕でも役に立つのならさせていただこうと思って話しました」と講義を引き受けた率直な理由を語り、「在校生には何やこいつって思っていただいてもいいですし、なるほどなと思ったことは役に立ててくれたらいいなと思います。(この講義で)お笑いという文化に携わっている気概を少しは感じて、これから活動をするときに思い出してもらえたら」と振り返りました。
なお、講義での内容はきっちり決めずに挑んだとのこと。メモを取っている在校生も多く、「真面目に聞いてくれていて。もっと適当に聴いてくれたら、こっちも適当にできたんですけど(笑)」と思ったそうですが、「真剣な顔をして聞いてくれているので、ええことだけ言うのもなと思って。今日は今別府とかすっちーとか、新喜劇の後輩と飲み行った時に言ってる感じで話しました」と、今回特別に“虎の巻”を伝授したとのことです。
今後、エンタメ業界での活躍が期待される在校生とは「ぜひ一緒に仕事がしたいですね」と小籔。偽りない言葉でお笑いの現場を赤裸々に語り、小籔らしいエールを送った1時間でした。
小籔千豊の動画はこちら ⇒ http://ynn.jp/u/628/
【小籔千豊】