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2013年9月27日 (金)

又吉直樹『東京百景』発売記念トークイベント~雪駄で長時間歩くと足の裏が異常に熱い~

9月22日(日)、東京・B&Bにて『又吉直樹「東京百景」発売記念トークイベント~雪駄で長時間歩くと足の裏が異常に熱い~』が開催されました。

こちらは、又吉の新著『東京百景』の発売を記念して行われたもの。発売前日の8月27日(火)には、東京・三省堂書店 神保町本店にて同じくトークライブを行った又吉。そのときのゲストは作家・西加奈子さんだったのですが、今回、聞き手を務めるのは、仲のいい後輩であるパンサー・向井慧。「聞き手が違い過ぎる!」と恐縮しきりです。

P1220838 又吉は「僕にとっては西VS向井」とあおりながらも、「向井は仲のいい後輩で、いまは一緒に住んでいる。やから、いろいろわかってくれてると思うんですけど、僕が貸した本をいつも読んでない感じがするから、読まざるを得ない状況に追い込んでやろうと思った」と、聞き手に選んだ理由を。「又吉さんのお客さんって濃いイメージ。僕ぐらいのポップさでは立ち振る舞えない」と怯える向井に、「お客さん、みなさん心が広いから大丈夫や」と優しく声をかけました。

同著を読んだ向井は「又吉さん、生きづらそうですよね。敏感すぎるというか、自意識が強すぎて、なかなか大変だろうなと思いました」と感想を述べながら、「自分の自意識に気付いたタイミングってどういうところだったんですか?」と質問。それに対して、しばし考えた又吉は「自意識なんてこと、知らんかったけど……保育所の最後に書く作文ってあるやん。その文末が全部“~恥ずかしかったです”で。それでウケたけど、そのときに初めて“恥ずかしいっていう言葉は頻繁に使うものじゃないんやな”と知った」と返答します。
「そんな小さいときから?」と驚く向井。又吉が「ここにおる方々も応援してくれてるんでしょうけど、中には(僕を)嫌いな人も混ざってるんやないかなって。嫌いすぎて、来てるパターンもあると思うし、肯定的に浮かれてると“こいつ、浮かれてんなぁ”と思われてる可能性もあるやろうし」と自虐的に語ると、会場は大きな笑い声で包まれました。

「又吉さんと仲がいいって言うと、意外に思われることが多いんですよ」という向井。「僕、明るくてふわっとしたお兄さんだと思われがちなんです。けど、又吉さんだけは最初から“心の中、ぐちゃぐちゃやな”って言ってくれた。僕、そういうところを隠してたつもりだったんですけど、どういうところでわかったんですか?」と赤裸々に訊ねると、「向井を観たときに『人間失格』の(主人公である)大庭葉蔵が入ってきた、と思った。現代にもこういうヤツがおるんやと思って興味を持って誘った」と返答する又吉。さらには、「1人で下向いて絶望してる後輩に、大丈夫やでっていう(優しく声をかけるような)スタンス。ナマイキで言うこと聞かへん。周りに虐げられているようなヤツばかりと仲がいいねんけど、周りには男前ばっかりを集めてると思われがち」と嘆きます。

P1220861 その後も先回りして、恥ずかしい状況に陥った際の不安ばかりを考えている又吉に、「それでも芸人になっているのが不思議というか。本の中に出てくるNSCの話も、普通ああは考えないですよね?」と向井。「自分の中にないことを、ある振りがするのが嫌だ」という又吉は、ナルシストだと言われる相方・綾部について持論を展開し始めます。
「あいつはたしかに美意識は高いけど、公の場や雑誌の取材で自前の化粧ポーチ出すんですよ。そんなん、ナルシストじゃない。だって、“化粧水使ってるんですよね”とか話してるインタビュー読んで、“綾部さん、素敵!”って思う女子なんかおらんやん。ほんまにカッコ付けたいんやったら、“化粧水なんてつけたことありません”とか自らを演出してしまうはず。やから、綾部は9割ナルシストの天然やと思ってる」(又吉)
的確な考察に、会場が爆笑となったのは言うまでもありません。

『マンスリーよしもとPLUS』連載時、テキストのテーマとなる場所の風景も自ら撮影していた又吉ですが、文章と違い、「写真はいろいろと考えてしまう」と吐露。
「写真って怖いですよね。だいぶ慣れたけど、向井はほんまにすごいと思う。うちの相方はシャッター切るたびに違うポーズするけど、それは旧ナルシストやから。向井は仕事でカワイイ顔ができるやん。観た男性の中にぶりっ子って思う人がいることがわかった上で、カワイイ顔をしてるやん」と鋭く指摘し、「営業妨害です!(笑)」とツッコまれます。自らを表現が乏しいと言い切る又吉は、すべてのポーズをピースサインとガッツポーズで乗り切っているそうです。

P1220847 「みなさんが思っている又吉さんと、僕らが知っている又吉さんはちょっと違う気がする」と切り出した向井。同著にも書かれている“魂を吸う”エピソードについて触れながら、「ああいうところをもっとテレビで見せてほしい」とお願いします。
「確かに最近、変なことをやるたびに、(同じく同居人であるジューシーズ・)児玉と向井から“テレビでやれよ!”とツッコまれてるなぁ」とつぶやきながらも、「40歳まで待ってくれ。いまは無理やって」と逆に懇願する又吉。
また、「又吉さんって怒ってるイメージがないと思うんですけど、『東京百景』の中には(そういう感情が見えるような)言葉が強めの文章もあった」と指摘されると、「100書く上で、そういうのを書かへんのはウソやなと。(ムカついた話は)テレビで面白い人が話せば面白いけど、僕は基本せんとこうと思ってるんですよ。書くことは(購入するなど)いろんな審査をくぐり抜けてたどり着くものやけど、テレビは誰でも観られるもんやから」と見解。「最近怒ったことは?」と訊かれて話し出した又吉によるエピソードは、ムカつく方向が人とはまったく違った自意識に溢れたものでした。

P1220842 イベント終盤には、又吉の中学時代からの親友で、現在「アボカドランドリ」というトリオで活動している難波麻人さんも出演しました。

P1220873 付箋をたくさん挟んだ同著を持参して「3回くらい読みました。読み終わってから、俺以外にも仲がええヤツおんねんなと。まったんの理解者、俺だけやなかったんやなと思った」という感想をまず述べた難波さんに、「え? 嫉妬ですか!?(笑)」と向井。難波さんの「中学のサッカー部で、まったんはいちばん嫌われていた」という話に、「後輩はみんな慕ってますよ。又吉さんのことを嫌いだという後輩なんて聞いたことがない」と驚きます。
嫌われていた理由は、又吉がサッカーに対して真面目すぎたからだそうで、「負けず嫌いで我がままで、優しさが異常。俺が優しくする人間には優しくするっていう理論なんやけど、それも我がままやったからなんですよね。審査に外れた人間に対しての攻め方は、尋常じゃないくらいやった。そんな又吉くんが、いまはいろんな人に囲まれているなんて……。そういうところはいまもあるんやろうけど、いろんな経験をして幅が広がってるんやなと思いました」としみじみする難波さんです。

中学時代、女子に気持ち悪がられる存在だったという2人。別の仕事でこのあと抜けなければならない向井から「僕がいなくなってから、そういうノリで話すのはやめてくださいね!」と釘を刺されたにもかかわらず、いなくなった途端、「やばい。向井がおらんようになった」と不安がる又吉。気を取り直して話を進めようとするのですが、「付箋貼ってあったところ、全部、向井くんに言われてしまった」とうつむく難波さん。しばし流れた沈黙に耐えきれなくなった又吉が「困るのやめて(笑)。向井のやけど、コーラ飲も」と声をかけ、一緒にコーラを飲み、気持ちを落ち着かせました。

P1220885_2 お客さんからの「クラスでの又吉さんはどんな感じだったんですか?」という質問に、「変な人でしたよ」と返す難波さん。
「中学生なんて、好きな子がおったとしても、おらんように見せるのが普通じゃないですか。なのに、又吉くんは授業中、隣りの席やった好きな子を頬杖ついてずっと見てましたからね」と話すと、会場が爆笑。また、「上京してからのことを書いてある割に、前のコンビの相方さんの話はないですよね」という質問には、「彼のことで1冊かけるくらいエピソードはある」と又吉。元相方は、難波さんの小学時代の同級生。いまでも3人で会うこともあるそうです。

P1220891 後輩である向井だからこそ、また旧知の仲である難波さんだからこそ話したであろうエピソードが満載だった2時間のトークイベント。
締め方がわからず、「どうやってまとめるの、これ?……お忙しい中、お集まりくださって……」とたどたどしく話し始める又吉に、難波さんは笑いながら「下手くそやなぁ」とツッコみます。そんな2人のやりとりに、お客さんもほっこり。「『東京百景』は思い出深い本になりました。引き続き、読んでいただけたら嬉しいです」という又吉らしい自意識に溢れた遠慮がちな挨拶で、幕を閉じました。


●著書情報

東京百景

著書:又吉直樹(ピース)

定価:1365円(税込)

仕様:四六変形判/280頁

発行:ヨシモトブックス

発売:ワニブックス

【又吉直樹】【ピース】