「住みます専務」が全国7エリアに!吉本興業が「地域活性推進室」を創設
昨年、創業100周年を迎えた吉本興業グループでは、次の100年への大きなテーマとして「地域重視」を掲げ、2011年4月より「あなたの街に住みますプロジェクト」をスタート。全国47都道府県に「住みます芸人」が居住し、同じく各県に住むエリア担当社員とともに、地域活性化のお手伝いをしてきました。
そしてこのたび、新たな地域における展開として、本年9月に吉本興業株式会社内に「地域活性推進室」を新設。従来のエリアセンターとともに、全国の自治体、地方企業・団体などと密接なネットワークを築き、地域活性化をより積極的に進めていくこととなりました。これにともない、全国7つのエリアに「勤続平均34年」「平均年齢58歳」という専務取締役4名をはじめ、グループ役員クラスの7人を配置! 「住みます芸人」ならぬ「住みます専務」として担当地域に居住し、日本全国津々浦々をくまなくカバーしていきます。10月7日に開かれた同部署創設発表会では、7人の「住みます専務」が勢ぞろい。それぞれに意気込みを語りました。
まず初めに、吉本興業代表取締役会長・吉野伊佐男が挨拶を。「ここに並んでおります7人の精鋭は、いろんなキャリアを積んでまいりまして、地域活性推進室の使命の重さみたいなものも十分感じております。期間については何年というふうにも決まっておりません。私どもは彼らが各地域を活性化をしてくれるものと信じておりますし、それだけの能力も持っています」と期待を込めてコメントしました。また、よしもとクリエイティブ・エージェンシー代表取締役副社長・泉正隆は、エリアセンターにおけるこれまでの活動と地域活性推進室を比較しながら概要を紹介。「日本全国47都道府県に居住する住みます芸人とエリア担当社員が、笑いの力で地域から日本を元気にしていくという考え方のもと、地域のお役に立つための活動を行ってきた」とここまでの活動内容に触れたうえで、「この部署(地域活性推進室)は、エリアプロジェクトよりさらに次元の高いもの。専務をはじめ輝かしい実績を持つそうそうたるメンバーが、それぞれここぞと選んだ地域に住んで、長年、吉本で培ってきた知恵を使って地域活性のために尽力していくというものです」と説明しました。既に数々の実績を挙げてはいるいるものの、「いずれも県内レベルの話で、地方全体や全国的にはまだまだ努力中のプロジェクトばかり」とのこと。「今回、吉本全体を盛り上げる知恵と実力を持ったメンバーにより、吉本の総合力を使って、都道府県だけでなくその地方全体や全国、アジアでも有名になり、地域の方々をさらなる喜びと成果を満たせれば」と、同部署創設の狙いを明かしました。
ここでいよいよ地域活性推進室のメンバーである7人の「住みます専務」が登場。それぞれが自己紹介がてら決意表明を行いました。
東北ブロック代表 竹中功
「(東北には)花月という看板が上がっていない土地でもあるので、できる限りお笑いに触れていただき、皆さんに元気になっていただきたい。そのためには花月の看板を上げられる劇場をひとつでも作れるようにしたい。各県に住みます芸人もいるので、彼らと一緒に僕もメディア進出を図り、いろいろと露出しながら元気な街づくりを目指したいと思います」
北関東ブロック代表 木山幹雄
「新潟市に本拠を置きまして、この5県を走り回ろうと思っています。38年間、吉本に勤めてきたすべての知識と経験を、地域の活性化に生かしていけるように頑張っていきたい。そして、少しでも地元の皆さんに『吉本と仕事できてよかったな』と思っていただけるように、吉本を使っていただこうと思います」
南関東ブロック代表 吉田武司
「吉本に入って32年ぐらいになるんですが、これまではお笑いしかやってこなかった。しかし今、吉本興業では映画をやったり音楽をやったり、いろんな楽しいことをいっぱいやってるので、(これらを含めて)地域の方と楽しくやっていけたら。劇場などもいっぱい作れれば楽しいかなと思っています」
北陸・東海ブロック代表 中井秀範
「生まれが富山の高岡というところなので、ちょっとは土地勘もあり、親しみを持って取り組めるかなと思っています。地方から、東京をすっ飛ばして世界へ出ていくようなエンターテインメントを見つけるのが昔からの夢でした。長年、デジタル部門を担当してきたので、地方の才能ある人をデジタルを武器に売り出すことも目指してきた。今回は、これをかなえるチャンスかなと思っています」
近畿ブロック代表 上野公嗣
「大阪を除く1府4県を担当します。吉本に来てからもラジオの仕事を中心にやっておりましたので、全エリアのラジオ、放送の皆さんのお手伝いができたらいいかなと思っております」
中国・四国ブロック代表 谷良一
「9県という広い範囲で、歴史もあっていろいろ豊かな実りの多い土地だと思い選ばせていただきました。行ってみたいところ、食べてみたいものもたくさんあります。地元の人にできるだけ早く受け入れてもらえるように、またそこから根付いて末長くおつきあいができるようにやっていきたいなと考えています」
九州ブロック代表 黍原義和
「私は平成5年に現場を離れて管理部門に行きましたので、20数年ぶりの現場となり戸惑いもありますが、まずは地域の皆様方に私自身を活性化してもらいたい。30数年働いていると垢がたまったりもしていますので、そのへんを活性化していただいて、その後、地域の皆様の活性化のお手伝いができたらなと思っております」
ひと通り挨拶が終わると、吉本芸人を代表して桂文枝、今いくよ・くるよが激励にやって来ました。「この7人の皆さんとは、何らかの形でずっと関わってきた」という文枝は、「各地へ飛ばれるということで、印象としては『飛ばされる』という感じもありますが」と笑わせた後、「私は皆さんにアンバサダー(大使)になってもらいたい」とリクエストを。「特命全権大使になって、やっていただきたい。その地その地で吉本興業を大いに宣伝していただいて、地域の皆さんと仲良くなってください。そして、笑いでもって地域を活性化し、吉本興業にも大いなる利益を」と檄を飛ばし、7人を「笑得大使」と命名。さらに『道行旅路の花聟』から「憂きが中にも旅の空」との言葉も贈り、「辛い毎日でも旅の空にはいいこともあるということ。地域のため、吉本のため、身を粉にして頑張ってください」と呼びかけました。
いくよ・くるよにとっても、7人は漫才ブームの頃をともに戦った“戦友”のようなもので、思い入れがいっぱい。「花の七人衆ですからね」(くるよ)「嵐と呼んでますけど、嵐にも勝ってますねん、人数では(笑)」(いくよ)と賑やかに盛り上げ、当時のエピソードをあれこれ暴露して笑いを誘います。あまりのヒートアップぶりに、文枝から「あんまりそんなこと言うと、ますます飛ばされた感が…」とストップがかかるほどでした。もちろん仕事においても全幅の信頼を置いているそうで、「この七人衆は経験を生かしてくれると思います。各地でちょっと腰を落ち着けて、地元の方と親しくなっていただいて、そこからまた吉本をもうひとつ盛り上げていただく。ほんとに重要なポストやと思いますよ」(いくよ)「最近、余興もちょっと少なくなったしね。頼むえ〜」(くるよ)とエールを。話を聞く7人の表情も思わず引き締まります。
この後、新しい名刺を文枝、いくよ・くるよが各人に授与。手渡しながら、「頑張ってください」と声をかけられ、それぞれが決意を新たにした様子でした。
最後は集まった記者の皆さんとの質疑応答です。
Q 「笑得大使」の名前を贈られたが、それを受けての思いは?
竹中 「笑ってもらうこと、人を笑わせること、そんなエネルギーを東北から作っていきたい。僕たちが大阪や東京の笑いを持っていくだけではなく、向こうの笑いのエネルギーみたいなものも表へ出すようなことを、どんどんしていきたいなと思いました」
木山 「子供の頃から吉本に親しんでいる人たちではないと思うので、吉本に触れることの楽しさ、笑うことの幸せをひとりでも多くの人に感じていただきたい」
吉田 「自分自身がまず楽しむことが一番いいのかなと思う。いっぱい話をしながら、地域の方と楽しくできたらいいな、と。その先に得があるということを、吉本はずっとやってきたと思います」
中井 「北陸東海は、東西のお笑いの分水嶺みたいなところ。やや西寄りのところもあれば、愛知など若干東京の方を向いているところもある。笑得大使として、ぜひとも大阪の笑いを全国へ、全世界へ持っていけるように頑張りたいと思います」
上野 「近畿といっても日本海側から淡路島の南端、和歌山の南端までかなり広いので、各地くまなくお邪魔して、地域の皆さんに笑っていただき、得をしてもらえるような活動をしていきたい」
谷 「吉本興業が得をするだけではなく、地域の方にも得をしてもらえるように、お互いが得をするような感じに持っていけたらと思っています」
黍原 「聖徳太子のように7県の皆さんの声を同時に聞くのは無理だと思いますので、1県につきひとりずつ親しい方を作っていこうかなと思っております」
Q 東北ブロックでは、震災からの復興ということも兼ねて考えておられることがあるのか?
竹中 「(よしもと)あおぞら花月の活動は今もずっとやっていて、これは終わりなく続けていこうと思っている。それに加え劇場を作ることで、タレントはもちろんですが地元発の才能ある人に出会うことも乗せていきたい。そんなことを目標にできたら」
Q 現職が専務の人は兼任となるが、その肩書きをどう生かしていこうと考えているのか?
竹中 「肩書きがメリットとは思っていない。名刺の肩書きがとれた自分の存在を、しっかりコミュニケーションしていくのが今回の住みます専務。住んでしまうことで聞こえること、見えることが肝心だと思っているので、専務だから扉が開くというよりは、吉本の者がここにいるんだ、ということを生かしたい。個人がしっかりと主張していけるようにしたい」
吉田 「僕もあんまりメリットがあるとは思っていません。言ったことをちゃんと実行しないとダメなんだなという気はしています。いい加減なことはあんまり言いにくいなという(笑)。楽しくやっていきたいというのは半分冗談な部分もあるんですが、そういったことも肩書きがあると言いにくいというか。まあ、楽しくはやっていきますよ、それでも」
中井 「専務という肩書きは、僕らが使うというよりは、先方さんに使っていただきたい。社内報告の際も、専務と会ったと書いたほうがいいのではないか、とか(笑)。先方さんに上手に肩書きを利用していただいて、それで円滑に進めばいいと思います。基本的には竹中くんの言ったように、それぞれの個性豊かな人間力の勝負だと思っていますので」
谷 「エリアマネージャーやエリア社員と一緒に仕事をやっていくわけですが、何か失敗があって謝りに行く時、専務がいると非常に受けがよく許してくれはります(笑)。そういう時にどんどん使ってもらいたい」
この後の写真撮影では、文枝の「頑張るぞ!」という掛け声に合わせ、「オー!」と拳を突き上げた7人。これからの新たな取り組みに、注目が集まります。