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2013年11月22日 (金)

桂文枝 はなしの世界 第二幕(その二十)~六代目笑福亭松喬に捧ぐ~

11月19日(火)、天満天神繁昌亭で『桂文枝 はなしの世界 第二幕(その二十)~六代目笑福亭松喬に捧ぐ~』が上演されました。2013年7月30日にがんでお亡くなりになった笑福亭松喬さんへ捧げる公演です。松喬さんがお元気な頃から公私ともに交流があった文枝と松喬さん。文枝は、松喬さんと食事の席で一緒になったときに聞く、松喬さんのおしゃべりや落語の理論がとてもおもしろかったといいます。今回の落語会のトリに、文枝と松喬さんが共同で再生したといっても過言ではない古典落語「箒屋娘」を改作した「住吉詣り」を、お披露。会場には、たくさんのファンの方々が詰めかけました。

 

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開口一番は、松喬さんの孫弟子である笑福亭喬介さん。「ただいまから開演でございます! トップバッターの笑福亭喬介でございます。楽しく落語を聞いてください!」とのご挨拶に、温かい拍手が贈られました。喬介さんいわく、喬介さんの落語を楽しく聞くための5つのことがあるそうで、覚えやすいように、「あいうえお」にまとめてきたといいます。「まず『あ』は『あくびをしない!』、『い』は『居眠りをしない!』、『う』は『うろうろしない!』、『え』は『笑顔で聞く!』、最後、一番守ってもらいたい『お』は『おもしろなくても笑う!』。これを守っていただけますと落語を楽しく聞けますんで、守ってほしいと思います! では、落語しまーす」と、なんともライトな始まりに思わずお客さんから笑い声が起こりました。演目は上方落語の「牛ほめ」。すべてにおいて世間からずれたとんちんかんな与太郎が、訪れた伯父さんの家を父親からのお達しを書いたメモをちら見しながら褒めるのですが、それがすさまじいほどにとんちんかんで…。開口一番、しっかり盛り上げての幕開けとなりました。

 

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続いては、桂三金が高座へ。「相撲取りではございません」と、ふくよかな体を武器に、さっそくまくらから笑いを取ります。現在、体重は120㎏、体脂肪率51%もあるそうで、日常生活では普通の人には想像つかない苦労があるよう。とくに移動が大変で、とりわけ飛行機に乗るときにその体型の大変さを痛感するようで、師匠である文枝の海外公演へ同行した際の、エコノミー席での苦労話を打ち明けます。お客さんを爆笑の渦に巻き込んだところで、師匠である桂文枝(書き上げた際は桂三枝)作の創作落語、「アメリカ人が家にやってきた」を披露します。会社員トミオが勤める会社と業務提携している会社のロサンゼルス支社から、アメリカ人がトミオの家にホームステイするといいます。あわてるトミオ一家は、さっそく「うちの家では英語で会話するように!」とルールを作るものの、「ただいま」は「ノーマネー(ただ)ナウ(いま)」、「なかなかのもん」を「センター(中)センター(中)ゲート(門)」、と英訳するなど、英訳がハチャメチャで…。必死に英語に対応しようとする一家の奮闘に客席から大きな笑いが起こります。

 

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続いて登場したのは本日の主役・桂文枝! 「鬼のかく乱といいますが、風邪をひいてしまいまして……」とやや鼻声気味の文枝。ここ最近、ベトナム公演に出向いていた文枝。ベトナムは暑かったにもかかわらず、帰国するやいなや日本はすっかり冬模様。急激な寒暖差に風邪を引いたのかと思いきや、理由はそれではないといいます。先日、放送されたNHK「ファミリーヒストリー」で、生後11か月で生き別れた父親のルーツを探った文枝。「大人になって、あんなに号泣したのは初めて」と本人がいうように、最後に父親の遺骨との対面を果たし、その結末に涙した方も多かったかと思います。しかしまくらでは、「父親の姿形を覚えておらず、いきなり会ったのが骨でして…。母から『痩せた人だった』とは聞いていましたが」と語り、思わずお客さんは爆笑。番組放送後の反響は大変大きく、さまざまな方から「見たよ!」というお電話をいただいたとか。ある日、お風呂に入っていると奥様から「お電話ですよ!」と呼び掛けられ、あわててお風呂から上がって、お電話をくれた有名人の方々にお礼を伝えた文枝。その際、「わしも、家族と離ればなれになってな、再会したときは本当にうれしかったで…」と、それぞれご家族への思いを語られたといいます。湯上がりでその対応をしているうちに湯冷めしてしまったようで……。そして、生まれ故郷の北野田、大阪市港区の思い出話を交えつつ、創作落語「憧れのカントリーライフ」の演目へ。毎日、多忙な日々を送っていたテレビマンの谷田は、憧れの田舎暮らしをかなえるべく、いわゆる限界集落と呼ばれる田舎町へ。そこで繰り広げられる年配者とのこっけいなやりとり、そしてテレビマン時代よりも忙しい田舎暮らしの様子にお客さんらは爆笑しました。

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中入りの後の後半戦は、桂三歩から。まくらでは、師匠である桂文枝の襲名披露公演でのエピソードを披露。襲名披露は、むろんあらゆる新聞に取り上げられたわけですが、そうそうたる面々のなか、桂三歩の写真も新聞に掲載されたとか。写真に写っていた顔ぶれは、落語芸術協会会長である桂歌丸さん、上方落語協会相談役の桂春団治さん、米朝事務所代表の桂ざこば、吉本興業特別顧問の笑福亭仁鶴など、そうそうたる顔ぶれ。そのなかで、桂三歩も「弟子」という肩書でしっかり掲載されていたといい、うれしさから新聞の切り抜きを持参してのまくらとなりました。お披露目したのは、師匠である桂文枝(書き上げた際は桂三枝)作の創作落語、「私がパパよ」。21歳で3人目の父親になる男と、53歳にして初めて父親になる男のこっけいなやりとりを披露し、客席は存分に温まりました。

 

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そして、いよいよトリの桂文枝の登場です。お客さんから「待ってましたー!」といううれしい声援が飛びます。古典落語を披露するのは実に7年ぶりという文枝。久しぶりの古典落語、文枝は「古典落語は難しい」というまくらから入りました。落語家ながら、爆発的な人気を集めた若かりし頃の文枝。デビュー間もなくテレビにひっぱりだこという状態だった文枝ですが、一方で「テレビの仕事は続かないから、落語をしっかり」という信条の元、この世界で名を馳せてきましたが、テレビの世界が現在までも続いているのは周知のとおり。テレビの移り変わりをその目で見てきた文枝ですが、とくにABCの長寿番組「新婚さんいらっしゃい!」は思い入れがあるようで、いつも想像つかない夫婦との出会いを楽しみにしているといいます。なかでも最近出会った忘れられない夫婦の、番組内では言えない裏話を打ち明け始め、お客さんもその裏話に大盛り上がり! 十分に温まったところで、いよいよ文枝と松喬さんが共同で再生した古典落語「箒屋娘」の改作、「住吉詣り」が始まりました。船場の若旦那は、本を愛する箱入り息子。物干し場へ行くだけで「世間は広い」と感動してしまうほどの引きこもりようです。行く末を案じた番頭が、せめて若旦那に外の世界を見てもらうべく、卯の日のご縁日に住吉大社へ参詣することを提案します。そこで若旦那は、箒を売る箒屋の娘と出会い……。およそ1時間にも及ぶ大作となりました。演目が終わり幕が下りたあと、再び幕が上がり、そこには文枝の姿が。そして、「住吉詣り」への思いを語りました。

「僕は、古典落語の『箒屋娘』を改作したものの、僕は全然やれなかったんです。でも松喬さんが、『やらしてもらいます』と住吉大社でやられて、そのビデオテープを見せていただきましたが、本当に上手にやられていました。それからお亡くなりになり、私が渡した台本を棺に入れられるということで、奥様に台本をコピーしてもらったんですが、細かくいろいろ手を入れられていました。ストーリーを変えるのではなくて、船場の言葉とか、若旦さんならこういう言い方をするやろうというのが全部書いてあった。そのあとにもう一度ビデオテープを見ると、書き直したのとまた全然違うんです。さらに進化していた」と振り返ります。「僕も覚えるのは大変でしたが、松喬さんは、ご病気で毎日苦しかったり、痛かったり大変やっただろうに、よくあの病床のなかこれを覚えてやられた。よくぞやられたな、と思いました」と、共作のエピソードを打ち明けた文枝に、お客さんから大きな拍手が贈られました。2人の落語家が「箒屋娘」をこの世によみがえらせた「住吉詣り」。病床にありながら、見事に高座で演じて見せた松喬さんの落語への執念を、自身が高座で演じたことで改めて感じたようでした。

笑いの絶えない落語会となりましたが、一方で、上方落語をつないでいこうと最後まで力を尽くした落語家、松喬さんの思いを誰もが感じ、そしてその思いをしっかり受け継いだ文枝の落語への思いがつまった会となりました。

 

【桂文枝】