【ライブレポート】『林将軍にお話を献上する』
9月24日(土)、浅草花月(5656会館)にて、カリカ・林克治のラストステージとなる『林将軍にお話を献上する』ライブが行われました。林はこの日をもって芸人を辞めるということもあり、補助席なども多数出されるほどの超満員。
まず、舞台上に現れたのは『お話を献上する』側の若手芸人たち(グランジ、ピクニック、LLR、ライス、畑中しんじろう、御茶ノ水男子)。そこへ「しずまれーーい!」と登場したのはガリバートンネル・三須。本日の進行を芸歴七年目にして初めて任されたとのこと。
その後、ようやく登場したのが、この日の主役・林将軍(カリカ・林)。林将軍曰く、もともとこのライブは「畑中くんとか、えーっと“おちゃだん”(笑)? そういう接点のない人とやってみたかった。だって、ピクニックとなんて一年に二言三言しかしゃべんないもんね」という目的で開催されるはずだったそうです。それが「事情が事情でこんな(超満員)になったけど、普通の状態だったらこんなには入ってない。というか、お客さんが増えた分のギャラ、オレに振り込まれるのかな?」と林将軍らしいトークで笑いを取ります。
ライブの内容はというと、与えられたテーマに沿った話を若手芸人が話し、その内容に林将軍が満足したら飴玉、満足しなかったら銃で撃たれるというシンプルな構成。
雑学やゾッとする話などさまざまな話が繰り出されましたが、この日ばかりは印象に深く残っている話と言えばやはり林将軍に関するものばかり。いくつか紹介すると……
LLR・福田:「タクシーに乗ったとき、タクシー運転手時代の林さんを知っている運転手さんだったんですよ。その人が俺に「あいつ、全然おもしろくないでしょ?」と言ってたから、後日、林将軍にそれ、笑い話として伝えたんですよ。そうしたら、林将軍がマジな顔で「誰だ! そいつは!!」って犯人探し始めちゃって(笑)」。
ピクニック:「林さんを怖がっている人がいるんです。それは佐久間一行さん。佐久間さんと林さんのツイッター上でのやりとりは有名ですけど、僕と佐久間さんでお茶してたときに「佐久間さん、写真撮ってツイッターにUPしていいですか?」と聞いたら、佐久間さんが「やめて! 林さんがリツイートしてくるからやめて!」と本気で嫌がってました。ちなみに、佐久間さんは林さんのツイッター上でのノリに返すのは2回までって決めてるらしいです(笑)」
そのほか、シュール5などでも交流があったライス・関町は「カリカトーク」というライブでいつもやっていた“全力のあっちむいてホイ”を披露、グランジ・遠山は2008年キングオブコントの追加合格の話、グランジ・五明の浅草での仕事帰りに飲みに連れて行ってもらった話などなど、まるで別れを惜しむかのように壇上の芸人たちは林との思い出や林らしさを感じさせるエピソードを次々に語っていました。
そして、この日、会場がもっとも沸いたのは、ピクニックの「なぜ僕が林さんと一年で二言、三言しか話せなくなったか」の話。
ピクニック:「僕のツイッターを先輩である林さんがフォローしてくれてたんです。こんなありがたいことはない!だから、林さんにツイッター上で「フォローありがとうございます。僕もフォローさせてもらいます」と送信。それに対して林さんから返って来た三文字の答えに僕は震えました……それは『殺すぞ』です……」
これには客席も大爆笑。しかし、笑いに包まれているその間に林将軍はそんなピクニックを銃で撃つという仕打ち。
さらに、倒れたピクニックに駆け寄ったグランジ・大も銃で撃たれる。
その後に続けとばかりに「銃で撃たれる」ことを欲しがるライス・関町に対しては、関町がどんなに欲しがっても敢えて(銃で撃つことを)しない林将軍。この見事なまでのSキャラぶりに会場のお客さんも大いに沸いていました。
たくさんの話で盛り上がり、ライブが終わりかけたそのとき、サプライズで登場したのは相方であるカリカ・家城。林将軍にお話しを献上するためにと軍服を身にまとい、なぜか小脇にメロンを抱えての登場でした。
家城:「ある場所にふたりでピエロをやっている男たちがおりました。一人が辞めることをある日のライブで発表すると、ひとりのお客様が辞めないほうのピエロに向かって言いました……「マンボウだけはやめてくれ。ダサすぎる」と。そしてその女性を追いかけたのですが、路地で姿が消え、そこにはたったひとつのメロンが残されていたのです」。
ここで語られているマンボウとは、家城が今後の芸名を「マンボウ家城」にすると言っていることによるもの。この話を受けて、林は「マンボウに関しては誰も賛成してないけどね。単純にマンガ喫茶しか浮かんでこないよね」とコメント。
それでもなお「40歳、50歳になったときにマンボウ師匠と呼ばれたいんです!」と力説する家城に対し、冷静に「いや、たぶんみんな家城さんって呼ぶと思うけどね」とツッコむ林。こんななんでもないやりとりに、彼らがともに歩んできた“カリカ”という長い歴史を感じるとともに、このやりとりがもう見られなくなってしまう寂しさも感じました。
ちなみに、最終的に林将軍がいちばんお気に召した話をしたピクニックには“林景荘”(林の実家)への二泊三日シングル宿泊権がプレゼントされました。家城曰く「ゆっくり殺されるよ(笑)」とのこと。
そしてとうとう終演を迎え、芸人たちが舞台袖にはけ、照明が落とされてもなお、客席からは鳴りやまない拍手。それに応えるように登場したのがカリカのスライドショーでした。M-1の舞台に立つカリカ、SM衣装を身にまとった林、テレビ番組収録中のカリカ、などなど、今までのカリカ林を写真でふり返り、ライブは終了しました。
幕が降りた後の舞台には、家城が林に献上したメロンだけがぽつねんと……。それはまるで、山口百恵がマイクを置いて引退したかのごとく、また、ブレーメン解散でスター関根がサングラスを壇上に残して行ったかのごとく……カリカ林という芸人の生きざまをメロンが物語るということなのでしょうか? さすがシュール(?)です。
全体を通して、センチメンタルな演出や涙を誘うような話などはなく、林が最後の舞台ということを除けば、ごくごくいつも通りのお笑いライブの雰囲気でした。そんなところもある意味で林らしい最後だなと思わずにはいられませんでした。
そして、そういう林の思いを知ってか知らずか、一緒に舞台に立つ後輩芸人たちがいつも通りに笑いを取ることで林を送り出そうとする姿がとても印象的だったと言えます。
カリカ、14年間お疲れさまでした!