【ライブレポート】アメリカ大使館宿舎@ほーむ寄席
9月29日(木)、都内にあるアメリカ大使館宿舎にて『@ほーむ寄席』が開催されました。
「@ほーむ寄席」とはお客様の地元や生活圏にこちらから出向いて、お客様の日常の生活感のなかで落語や漫才などの演芸を楽しんでいただこうというプロジェクト。なんと今回ははじめて、外国の方の日常へとおじゃますることとなりました。なお今回は、吉本興業と縁のある民主党所属の最年少国会議員、松岡広隆議員が大使館職員の方とお知り合いだったことにより実現したもの。会場となった集会所には、宿舎で暮らす方たち、およそ50人ほどが集まってくださいました。
大使館職員の方の説明があった後、登場したのは本日の案内人でもある桂かい枝です。彼は「繁昌亭大賞爆笑賞」など数々の賞を受賞するほどの実力者として知られますが、なんと国内にとどまることなく、世界に「RAKUGO」を広めようと、1997年より海外公演を開始。イギリス・カナダ・インド・ブルネイ・フィリピンなど、世界12カ国34都市で高座を披露している「英語落語」の第一人者でもあるのです。そのため、のっけからアメリカ人のハートをガッチリとキャッチ。ほとんどの人が「落語ははじめて聴く」という状況の中で、まずは空気を作ってみせます。ちなみに、公演は職員の方の説明からはじまり、もちろん全編英語にて行われます。
そしてまず高座へ登場した演者が、カナダ人の落語家・桂三輝(サンシャイン)。カナダオンタリオ州トロントに生まれながら、2008年に桂三枝に弟子入り。現在は上方落語会初の外国人噺家としても注目を集めている彼は、いつもは日本語で生活し、修行を行っているわけですが、ネイティブの前とあってまさに水を得た魚のよう。マクラとして、師匠のもとでの修行の様子や、言葉の発音で苦労したことなどをフリつつ『動物園』へ。無精な男が、動物園のトラが死んだために募集された“トラの皮をかぶってトラになる”という仕事にありつく様子を、さまざまなエピソードとともに演じます。もちろん落語なので、コスプレをするわけでもなし、座ったままでの口演ですが、アメリカ人のお客さんはイマジネーションを広げて大ウケ。すんなりと噺の世界に入っていっていました。
幕間の映像として、落語の歴史をレクチャーするビデオを流された後、いよいよ真打、桂かい枝の高座です。まずは落語の所作として、みんなでうどんをすする仕草を実演すると、全員ノリノリ。子供たちはやんやと歓声をあげ、大喜びです。と、そんなかい枝が続いて入っていった噺が『いらち車』。急いで教会に行こうとする男が(本来は駅ですが教会というところが英語落語ならでは)、人力車に乗ろうとするのですが、最初に見つけたのはめちゃくちゃ遅い車。怒って車から降り、今度は「一番早いのはオレだ」という威勢のいい車に乗るのものの…という内容の噺ですが、映画『スピード』さながらの大きなアクションに満ちた噺に、お客さんも爆笑につぐ爆笑。最後、わけのわからないお花畑についたことをとがめる乗客が「ここ教会ちゃうやろ!」と言うと「無事に天国に着きましてん」というサゲでは、なんとお客さんもいっしょに「ヘブン」と唱和! 直後、万雷の拍手に包まれたのでした。
なお、公演終了後は同じく集会所にて、いなり寿司や巻き寿司をまみながらの親睦会。かい枝、三輝らは積極的に記念撮影に応じ、大いに歓談。アメリカ人のお客さんに混じって、高座を見ていた松岡議員も、公演の大成功に大満足といった表情を浮かべて歓談の輪に加わっていたのでした。
桂かい枝
「いやあ、今日はほんまにあったかいお客さんでしたね。子どもたちも大喜びしてくれたんで、よかったですわ。でも、ぼくは全米を回ったからわかるんですけど、落語ってね、ちゃんと外国の方にも伝わるんですよ! きちんと想像を働かせてくれますしね。だからもっともっと落語の良さを広めていきたいなと思います。それに震災があって、アメリカの人にはたくさん助けてもらったから、いつか恩返しができればなと、ひとりの日本人として思っていたので、今日はこんな機会をいただけてほんまによかった! 三輝と一緒に、いつか全世界を回りたいですねえ」
桂三輝
「ぼくはカナダ人ではありますけど、あまりネイティブの前でやる機会ってそんなにないんですよね。だから緊張しましたけど、かい枝兄さんがうまくリードしてくれはって。ほんまに楽しくできました! 今度、ぼくの故郷であるトロントでもやるんですけど、すごく楽しみですね。落語の腕はまだまだだとは思いますが、落語を世界へ広めていくのに、お役に立てればと思います!」
松岡広隆(衆議院議員)
「今回の落語会は、ぼくが吉本の方に『英語落語』があるというのを伺い、大使館の方にお伝えしたのがきっかけです。でも、こんなにアメリカ人の方に笑っていただけるとは驚きましたね。大成功です! ぼく自身こういう文化を通じての人と人の交流も、立派な外交だと思っているんです。今後もこうやって、人を繋ぐお手伝いを積極的にできればとあらためて思いました。あとそれとは別に思ったことなのですが…英語落語って、日本人の英語の教材にもうってつけですね! 噺が面白いので、すんなりと英語が入ってきやすいと思いました。そんなことも含めまして、易々と国境を越えてしまう笑いって本当に面白いな、奥が深いなと思い知った落語会でした」