【ライブレポート】ライス結成10周年記念傑作選ライブ「スイップ」
7月27日(土)、東京グローブ座にて、『ライス結成10周年記念傑作選ライブ「スイップ」』が開催されました。
今年10周年を迎えたNSC東京9期生のライス。2008年3月開催の第1回『マフェ&バサバサ』から年に1〜2回、単独ライブを行なってきた彼らですが、チケットは毎回完売。今回は彼ら史上最も客席数の多い700キャパの劇場でしたが、そちらもすぐさま完売しました。
さらに、会場へ着くとロビーには長蛇の列が。どうやら10周年記念グッズを購入するために並んでいたようで、中でも限定パンフレットはあっという間に売り切れてしまったそうです。
優雅な音楽が流れるなか、ポスターと同じきらびやかな衣装で現れた仁様(田所)と知姫(関町)。食事らしきものを並べている彼女の元へ、仁様が後ろから近づき、目隠し。フォークを落としてしまったりと、日常的な失敗を笑い飛ばしながらダンスを踊ってしまう仲のいい2人の暮らしぶりが、無声で表現されます。
「10周年だな」(田所)「ええ、そうね」(関町)という2人の短い会話で暗転となり、いよいよ歴代のコントが披露されました。
今回は「傑作選」という名の通り、彼らがいままで行なってきた単独ライブから、その場でしか披露していない厳選されたお宝的なコントが次々と展開されました。
まずは、第6回単独ライブ『カヴィ』(2012年1月開催)から。舞台に現れたのは、真っ白な洋服を着用した2人。店主扮する田所の元へ、あるものを買いに訪れた関町――。当たり前のように行なっている日々の動作を逆手にとった、彼ららしいひねりの利いた発想が際立ちます。
2本目は、第5回単独ライブ『コモク』(2011年6月開催)より、バトルゲームのパロディコント。ボクサー演じる田所の元へ、関町演じるさまざまな挑戦者が現れ、次々と戦いを挑むのですが、ひとくせもふたくせもある挑戦者ばかり。なお、1本目にも、この2本目にも下ネタが盛り込まれていたのですが(彼らのコントにはよくある設定や表現だったりもします)、ライスとともに時を重ねてきた観客だからこその理解なのか、適応能力がついたということなのか――いずれも客席から大きな笑い声が湧きました。
再び『コモク』から出された3本目。銀行を訪れた強盗とある男。それぞれ似通った常套句を使うも、まったく違う世界観を放つそれぞれの言葉に、遊び心が感じられるコント。4本目のコントは、『カヴィ』から。RPGをモチーフに、倒してしまった相手は正義で正当化されるはずも、置き手紙によって苦悩する勇者の姿が。正義が絶対的に正しい訳ではないという、ライスらしい“意地悪な視点”が光ります。
5本目は、第2回単独ライブ『サボコ』より、「気絶まで10秒と11秒」というショートコントが。秀逸なタイトルからの想像を裏切り、あっさりと終わるその短さと潔さに、会場は大きな笑いに包まれました。
再び『カヴィ』より見せられた6本目のサイレントコント。のちの解説では、「動画で観た東京ガスのCMの影響でひらめいた」と語られていましたが、温かみのある人物たちの物語にほろりとさせられる……かと思いきや、オチでは大きなどんでん返しが! 演技に定評のある2人だけに、言葉を使わない状況でも、登場人物の心情や行動を的確に表現。悲しみという名の“緊張”が最大限まで盛り上がったところでの、まさかのオチがやってくるのです。お笑いには“緊張”と“緩和”のバランスが大切だとよく言われますが、まさにそのセオリーが見事にマッチングしたコント。もちろん、爆笑となったことは言うまでもありません。
第3回単独ライブ『キリ・バト』(2009年2月開催)から披露された7本目。ある先天性の病気で悩んでいる編集者が、新しく担当となった作家のところへ向かったときに病気が発症してしまうというコント。下ネタは入ってないはずなのに、下ネタっぽい表現がここにも……。8本目は、第4回単独ライブ『ビリンバウ』(2010年3月開催)より。関町にアジトを吐かせようと、さまざまな拷問を仕掛けていく田所。ただ、彼が行なう拷問のイメージは残虐さからかけ離れていているのです。
続く、9本目は“ライスの単独ライブは面白い!”とお笑いフリークに確信させた第1回単独ライブ『マフェ&バサバサ』(2008年3月開催)より、ホラー調コント「エロイ」が。高校卒業後、8年ぶりに帰郷した関町は、親友の田所と再会。いったん、別れて同窓会で集合しようと約束した関町は街をぶらりと歩いてみるのですが、風景や住んでいる人々の変わりように恐れおののき、追い詰められ……。こちらも演技力を遺憾なく発揮したコントです。
10本目は、『鈴虫のお腹』(2009年10月開催)から、「それいけ! しろっぺ」。某国民的アニメのストーリーがモチーフとなっているのですが、明らかにおかしい「しろっぺ」。キャラクターらしい愛らしさのないそれに、客席からはどよめきがあがります。
再び『コモク』から披露された11本目は、転校生ネタ。転校生・関町を「これまでクラスにいたように受け入れる」という先生(田所)。一見、優しさに満ちた言葉のようにも聞こえますが、その実、関町を困らせるような展開に……。こちらも彼ららしい“意地悪な視点”に、思わずニヤリとしてしまいました。
最後のコントは『マフェ&バサバサ』より、あの伝説のサスコントが。サッカーと戦争をテーマに、時空を超えて交錯する人物模様を描きました。
そして、再び現れる仁様と知姫。手を取り合って静かに佇む2人に、これまでのライスの軌跡を重ねた人もきっと多かったことと思います。
鳴り止まない拍手に、何度もお辞儀する2人。大きく力強く響くそれに、言葉にならない様子の田所が「あぁ……」と呟けば、関町は「ありがとう! 胸に沁みます!」と言いながら、さらに大きくなった拍手を左手で止めるという行動に出ます。
感動のあまり、いつもより饒舌な関町。「素晴らしい劇場で、たくさんの拍手……吉本関係者の皆さん、観てたでしょうか!」と、声高らかに語りかけました。
満席の客席を見渡しながら「ここから観ると、(客席が)すごい。皆さんが缶投げたら死んじゃいます」と笑いを交えながらも、足を運んでくれた観客の皆さんへ感謝を示します。その言葉に応える観客。大きく響く笑い声を聞きながら、「皆さん、普段はどこにいらっしゃるんでしょうか!」と呼びかける関町。笑いながら田所も「来てくれるお客さんは、シチサンLIVEでも100人くらい。ほかのライブでは40人くらい」と言うと、関町も「もうちょっとでいいんで、ほかのライブにも足を運んでください!」と懇願します。
また、ジャニーズ事務所の皆さんが公演を行う機会の多い劇場ということにかけて、「タッキー&翼も10周年らしいですよ」と付け加えつつ、「僕らも“セッキー&仁(ひとし)”ということで」と最後までとぼけ続けた関町。「まだまだ頑張るので、足を運んでくれたら嬉しいです」と深々と頭を下げる2人に、いっそうの大きな拍手がいつまでも鳴り響いていました。
【ライス】