文枝の創作落語を世界に 『カナダ人落語家 桂三輝 北米巡回公演及びカナダ文化大使就任発表会見』
8月7日(水)、『カナダ人落語家 桂三輝 北米巡回公演及びカナダ文化大使就任発表会見』がカナダ大使館にて行われ、六代桂文枝の15番目の弟子で、「三重県住みます芸人」のカナダ人落語家・桂三輝(カツラ・サンシャイン)が、8月後半から10月上旬の約1か月半にわたり、カナダとアメリカのおよそ20都市において、30回近い公演を行う北米巡回公演を実施することが発表されました。
会見ではまず、ローリー・ピーターズさん(在日カナダ大使館広報部長)が「カナダ大使館へ、いらっしゃ~い!」といったジョークも織り交ぜつつ、大使メッセージを代読した他、島田丈裕さん(外務省文化交流・海外広報課課長)、本田修さん((独)国際交流基金文化事業部部長)からの挨拶がありました。
そして今回、北米巡回公演を行う桂三輝(サンシャイン)が登壇。
6年前、桂文枝の落語に衝撃を受けて弟子入り、文枝の創作落語を英語に翻訳して、2年前に故郷のカナダ・トロントで披露したところ爆笑を呼んだといった経緯を語り、「師匠から三輝(サンシャイン)という名前をいただいて、これより宝物のプレゼントはないです。自分の名前だけで、誰でも明るくできます。海外でもこの名前が通じて、この名前ができます」と改めて桂文枝と、今回の公演実現に携わった人たちに感謝を述べました。
隣で聞き入っていた文枝師匠は、「三輝が今日ほど頼もしく思えた日はありません」と口を開き、「日本人でもそんなことしないですね」と三輝が着物で土下座しながら弟子入りを志願してきた日のことを振り返りました。
また、言葉の壁や習慣の違いもあり、カバンを持つ三輝が、文枝の横や前を歩くことから「三歩下がって師の影を踏まず」と教えたところ、三輝は影を踏まなくなるも、夕方になり、影が長くなるにつれどんどん離れていったそうです。
そんな三輝の逸話は尽きませんが、文枝は230席もある自身の創作落語を世界に広げるのが夢であり、「彼が私の落語を広めて欲しい。彼自身も有名になって欲しい」と夢を三輝に託します。
質疑応答の時間に入り、「公演ではどんな演目をやる予定ですか?」との質問に、三輝が最初に見て衝撃を受けたという『宿題』、それと『生まれ変わり』の2席と答え、どちらもどの国、どの文化でも通じる話だと自信を持つ三輝。
文枝も、世界中どこでも通じて、時代を超えた創作落語を目指しているそうで、「世界中で本になったり、アニメや映画になって欲しい」とさらなる夢を語ります。
また、翻訳の難しい点について訊かれた三輝ですが、経験上、直訳に近い翻訳の方がウケるそうで、「400年前からある落語と、師匠の創作落語を信じたら間違いないです」と確信。
師匠から受けたアドバイスでは、「カナダ人だからという言い訳はこの世界で通じないから、しっかり勉強しなさい」と言われ、特別扱いせず、一人の弟子として認められ、うれしかったそうです。
長い公演となる三輝へのアドバイスを求められた文枝は、「自分の国でやることですからね」と前置きしながらも、「各都市で次につながるようにして欲しいですね。来年は会場が増えて、2年後は1年間くらい、3年後にはもう日本に帰ってこない、そういう心意気で挑んで欲しい」とエールを送りました。
続いて、沼田貞昭さん(元駐カナダ特命全権大使・在日カナダ商工会議所名誉顧問会長)からの挨拶に続き、ウィルフ・ウェイクリーさん(在日カナダ商工会議所会頭)より「文化大使任命証書」が三輝に手渡されました。
さらに、在カナダ日本国大使の奥田紀宏さんからは、一度オワタで面会を果たした際、「人の心を掴むことに非常に長けておられ、コミュニケーション能力に優れた方であるとの印象を受けました」「桂大使から職を奪われないよう気を引き締め、日加友好関係の強化に一層努力をしなければならないと思っております」といったメッセージが寄せられました。
和やかなムードのなか、フォトセッションが行われた後、囲み取材も行われました。
改めて心境を訊かれた三輝は、「師匠の創作落語を海外でさせて頂くことになって、文化大使として、ちょっとだけ日本とカナダのためになれたらと思いまして、一生懸命させていただけたらと思ってます」と、やや緊張気味に語ります。
また文枝からはここでも三輝の逸話が飛び出し、寒冷地出身だけに暑さに弱いので、今回のカナダ凱旋は「カラダ的にもいいんじゃないかな」と言い、記者からの笑いを誘いました。
もともと古典ギリシャを勉強し、能や歌舞伎との共通点を見出そうと6ヶ月の予定で来日するも、それから日本文化に魅せられ、14年間が過ぎたという三輝。
最後に、「日本のいいところは?」との質問に、「人と人との間の気遣い。人間関係が素晴らしい」と熱弁しました。
桂三輝「英語落語」北米巡回公演は、8月29日のシアトルを皮切りに、3回目の公演となるオワタ、バンクーバー、モントリオール、アトランタ、ナッシュビル、ボストン、ニューヨークなどをまわり、10月5日に出身地のトロントで千秋楽を迎える予定です。