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2013年8月28日 (水)

「それぞれの読み方ができる1冊」ピース・又吉が著書出版記念イベントを開催!

8月27日(火)、東京・三省堂書店 神保町本店にて『ピース・又吉直樹「東京百景」発売記念トークイベント』開催前に、又吉が囲み取材に応じました。

P1220298 同著は、『マンスリーよしもとPLUS』での連載分に書き下ろしを加えた又吉初の単行本。芸人を目指して上京してからの日々、芸人として徐々に活躍の場を増やしていくなかでの出来事を、東京の風景とともに綴っている100篇のエッセイが収められた1冊です。

「上京して15年のいろんな思い出と東京の町の風景を一緒に書いた本です」と、まずは著書を紹介した又吉。タイトルについては「東京の町それぞれの出来事を書きたかったのと、僕が好きな太宰治の『東京八景』にかけて。あの話は、紹介したい候補がたくさんあってどうしようで終わるんです。で、100あれば、まとまるのではという思いもあったんですけど……結局まとまらなかったですね」と笑いを誘いました。

P1220301 太宰が『東京八景』を書き上げたのが32歳。ということで、又吉もこの本を32歳までに出したかったそうですが、「33歳になってしまいました」と苦笑。ただ、すべての原稿は今年の誕生日(6月2日)の前日までに書き上げたそうで、「それで成し遂げられたかなと。締め切りがないと、原稿が書けないんですよねぇ」とぼやきます。

相方・綾部にも読んでほしいそうですが、彼は読書が苦手。いつもの「領収書でギリ。台本は僕が読んでから伝えている」というエピソードを語りつつも、「本当に読んでほしい。文字に集中できないから読めないって言ってますけど、その割には女の子によくメールしてるんですよ」とチクリ。
「1人でのエピソードばかりですか?」と訊ねられると、「最初は1人が多かったけど、友だちや先輩芸人とのエピソードもたくさん入ってますよ。友だちも徐々に増えましたし……。いまは成人男性の平均マイナス2くらいの友だちはいます」と答え、「どういうことですか?」と訊き返される又吉。「極端に多くもなく、少なくもなくということです」と言いながら、あまりにも曖昧な発言に「今日、僕、何一つまともに答えられてないですね」と自虐的な笑みを。

「最初より家賃も上がってきたのでは?」と訊かれると、「そうですね。最初は劇場に電車1本で行けるところに住んでいたのが、現場の近いところに住むようになって。いまのところは、相方に住めと言われたところです。家賃は……成人男性の平均プラス2万くらいですかね」と先ほどの喩えを交えて答えるも、よくわからないという顔をされ、「10年以上経って、ようやく年相応のところに住めるようになりました」と補足していました。

P1220304 その後、しつこく恋愛について訊ねるリポーター。しかし、その訊き方は“彼女がいない”前提のものだと気付いた又吉は、「そんな訊き方されてますけど、僕も恋愛くらいはしたことありますよ。片思いも含めれば、成人男性の平均かける2くらいはしてます」と、例の喩えを入れて豪語。「この本の中にも、そういう話は入ってますか?」と詰め寄られ、「横浜に花火大会を観に行った話がそうですね」と答えるも、「『東京百景』なのに、横浜?」とさらに訊ねられる始末。「そうなんですけど……まぁ、横浜がメインの話ではないので……」と口を濁す又吉でした。

この本の発刊を目標に頑張ってきたという彼。「今後の目標と言われても……これを目標にしていたので、いまは目標を失いかけています。なんかオリンピック後間もない選手みたいですけど、必ず目標を見つけて走り続けたい」と語りました。

さらに、「小説などは書かないんですか?」と訊ねられ、「本にはなってないだけど、実はちょくちょくいろんなところで書いてるんですよ。ただフィーチャーされてないだけです」と返答。現在『Magalry』では新作小編を毎月発表しており、「それらをまとめて1冊にできればいいですね」と声をかけられると、静かに微笑み頷いていました。
また、「本が好きな方、本に興味がない方、東京に住んでいる方、住んでない方……つまりは全員に読んでいただきたいですね。それぞれの読み方ができると思いますから」とアピールしました。

P1220309 その後、作家・西加奈子さんをゲストに迎えての、トークイベントを開催。
西さんに今回オファーした理由について、「大好きな作家さん。僕が昔やったライブにゲストで来ていただいたご縁もあり、特別な思いもあります。西さんが書く小説は不思議な迫り方をしてくるものが多くて、一生読み続けようと思っていて。それくらい好きな作家さんなので、真っ先に思い浮かびました」と語る又吉。「ありがとうございます。嬉しいです」と笑顔でお辞儀した西さんは、お客さんに本を見せて「一足お先に読ませてもらったんですけど、付箋いっぱい貼ってしまって。何が大切なのかわからへんくなったから、読み直して付箋を減らしました」と説明し、「感想言っていいですか?」と前置きし、語り始めました。

「いまって、新書とかナントカのススメとか、要領よく生きる“幸せの最短距離”を教えてくれる本が多いでしょう? 別にそれを否定するわけじゃないし、要領よく生きていく方法は(本を出している人が)全力で導き出したことやから素晴らしいとも思います。でも、そういう方から楽に得た情報で行きついたところから見える景色って美しいのかしら?と、私は思ってしまうんですよ。そういうなかで、この本は真逆にある本だなと。日常って、実はドラマチックなんですよ。この本を読んでると、東京がとんでもない怪物みたいな街のような気がしてくるし、読み終わったあとに、自分の東京の思い出もつくり直せて元気が出てくる。新書や目次だけ辿った人には、見えない景色があるんですよね」(西さん)

身振り手振りで一気に語った西さんは「今日はこれが言えたんで、満足です」とニッコリ。「踊り出したい気分です」と静かに嬉しさを表す又吉に、「表情に現れてへんけど?」とツッコむ西さん。「僕、ダンスの経験ないんで……」と弁解しつつ、「怪物になってました?」と訊き返します。
「うん。あったことを書いてるけど、想像のことも突然入ってくるでしょう? でも、ウソでっせというのがなく、地続きの物語になってるんですよね。だから、私はこの本を小説と言ってしまう。化けもんです!」と力説され、苦笑しながら「もうちょっと柔らかい言い方はないんでしょうか?」と返した又吉に、会場からは笑いが起こりました。

本の装丁についても、西さんは「めっちゃカッコいい!」とベタ誉め。「ビニールがあるので、汚れても大丈夫ですから」と説明すると、「そうやな。たこ焼きのソースがついても大丈夫やもんな」と返す西さんに「たこ焼きって……関西人ですねぇ」と又吉。「え? そうかなぁ。好きやろ?」と返されるも、「僕はそんなに……」と気のない返事。こんな会話にも、仲のよさが伺えました。

東京が好きだという2人。大人になってから暮らしている街だからか、「泣ける景色が多い」と同調します。又吉にとって印象的な景色は、井の頭公園内にある大木。「木の間にえぐれているところがあるんですけど、そこにゴミを捨てていく人がおるんですよ。それがめっちゃ嫌で、通りかかるたびに片付けてたら信仰心が芽生えて。後輩と通りかかったときも、立ち止まって木に一礼してたら、悪い噂が立ちました」と笑います。また、深夜の仕事終わり、眠れないときには井の頭公園へ寄って散歩することも多いとか。「早よ帰れや!」とツッコむ西さんに、「そこにいると、浄化されるんですよ。さっきまであった苦痛やしんどいなっていう気持ちがなくなるんですよね」と説明していました。

そのほかにも上京した当時のそれぞれのエピソード、西さんの“泣ける”エピソードなど大いに語られました。

最後は、来場者からの質疑応答も。西さんの作品が好きで、又吉にも興味を持ったという女性からは、「自分でも小説を書いてみたいと思っていますが、どうやったら話は広げられるんですか?」という興味深い質問が。
「又吉さん、文字と風景どっちが先に浮かびます?」と西さんから問われ、「僕、物語が出てきます」と答えた又吉。「え? どういうこと?」と再び問われ、「セリフ付きのストーリーが浮かぶんです」と説明すると、「すごい!」と西さん。「作家は文字が浮かぶらしいんですけど、私は絵で。そんな意見初めて聞いた」と感嘆され、「芸人やからですよ。コントつくってるからでしょう。「大喜利とかも、面白いことを言おうとは考えない。そうやって考えると思いつかないから、クイズやと思って答えてます。あとは、場所に行くと浮かびやすいですね」と静かに説いていました。


●著書情報
東京百景
著書:又吉直樹(ピース)
定価:1365円(税込)
仕様:四六変形判/280頁
発行:ヨシモトブックス
発売:ワニブックス

Magalry連載『僕だけ犬に吠えられた』
毎月第2・第4週金曜日更新
http://magalry.com/

ピースの動画はこちら⇒http://ynn.jp/m/1005964

【又吉直樹】【ピース】