「三重県二代目住みます芸人」に任命されたカナダ人落語家・桂三輝(かつらさんしゃいん)が、落語のネタ「東の旅」にちなんで、新拠点となる三重県伊勢市へ歩いて向かうことになりました。そして11月14日(月)正午過ぎ、なんばグランド花月前を出発しました。
出発直前には「住みます芸人」お披露目会見が行われ、見送り人の宮川大助も出席。浅越ゴエの司会進行のもと、「住みます芸人」に対して、また、伊勢市への旅の意気込みなどを語りました。
まず、見送り人の宮川大助からご挨拶を。宮川花子、さゆみともども公私共に家族ぐるみの付き合いのある大助は…
「僕が見送り人ということですが、今日は花子も来たかったと思います。それというのも、さゆみがカナダに留学していたり、『You Are My Sunshine』が僕が嫁はんにプレゼントした曲の1つでもあって、サンシャインは縁起ものの名前なんです。オリジナルのCDを作ったときも、『ひまわり』という曲にさゆみの日記を英語詞で入れるのに、英語の発音指導を三輝にしてもらって。彼の英語は本当はきれいな英語なんです。こんなきれいな英語で落語はできるのかな?と思っていたら、落語は相当、むちゃくちゃしゃべってましたね(笑)。そのむちゃくちゃぶりがすごく面白くて、一人芝居やお芝居を一緒にやったりして、家族ぐるみで仲良くしています」とふたりの馴れ初めを明かしました。
そして今回の“歩いてお伊勢参り”の裏側も…。
「実は『住みます芸人』で三重に行くんだと三輝から聞きまして、『ほたら、三重の名物知ってるか?』『知りません。とりあえずそこに行きます』と。『三重にはお伊勢さんがあって、内宮、外宮という日本人の心のふるさとの神様が祀ってあるので、昔の人たちはお伊勢参りということで、玉造神社からそこまで歩いたもんや。噺家の先輩たちもたくさんしておられる』と話したんですね。それを三枝師匠に話をしたところ、『私も実は歩いたんや』と。それを聞いて、『三輝、歩いていけ。ほんで、日本の心のふるさとに通って、朝日の昇る二見浦もあるので、そこに参拝に行って三輝という名前を、そこの輝きと合わせなさい』ということで推薦しました。今日は元気いっぱいで見送りたいと思います! まさに二見浦の朝日として頑張ってください」とエールを送りました。
また、三輝の旅の無事を祈るため、先に伊勢神宮へのお参りも済ませたとのこと。「僕は車で行ったよ! しっかり拝んできた!」と大助。
「三輝は歩いていきますが、できそうでしょうか?」との浅越の疑問には、「昔の人は1週間くらいで行ったんやろ? 彼は足腰しっかりしているし、大丈夫!」と太鼓判を押していました。
そして桂三輝より御挨拶がありました。
「三重県二代目住みます芸人、桂三輝と申します。1999年、日本の文化に憧れて日本に来まして、途中で落語に出会い、一目ぼれして、桂三枝の弟子にならせていただきました。その3年の修行は2週間前に終わりまして、師匠から年季明けのお許しをいただきました。そして、落語家として『千里の道も一歩から』の、一歩目は何か違うこと、非常に深いことを学べる方向へと思いましたとき、『住みます芸人』で兄弟子が活動していることを知り、やらせていただきたいと希望を出しました。そして三重県に行きませんか?と言われたとき、その気持ちが10倍になりました」
では、なぜ三重県を選んだのかというと…。
「1年前、桂枝三郎兄さんに『東の旅』のネタの中の『煮売り屋』を教えていただきました。(噺の中では)喜六、清八というふたりがお伊勢参りのため、東へ東へ歩いていきます。で、玉造に行きまして、かさを買います。それは旅人が頭にかぶるかさなんですが、私は番傘か何かと思っていたんです。そして、はめものが入ったときに、お兄さんがかさを頭にかぶる仕草をされたんですね。それで、『昔の日本人はおかしいな』と思って、『何で傘を頭にかぶるんですか』とお兄さんに聞きましたら、大笑いしまして『その傘じゃなくて、これ』と写真を見せて教えてくれました。そのとき、このまま言葉だけでネタを覚えても何がお客様に伝わるだろうと思って、覚えるのはあきらめて、いつか将来、あの道を実際に歩きたいと思いました。歩いてから『東の旅』のネタをいくつか覚えようと思いました。その1年後、『住みます芸人』の話が出てきて、『三重に住みませんか』と言われたとき、嬉しくて、嬉しくて、ぜひお願いしますと」。
そんな中で、さきの大助によるアドバイスがあったそうです。
「大助師匠のアドバイスで、ただ伊勢に行くんじゃなくて、歩いていくことにしました。三枝師匠も45年前に全く同じ理由で歩きましょうと決めたみたいで、その時の写真を見せていただきました。そして、師匠と同じ姿、同じルートで私も勉強させていただきたいと思いまして、本日が出発の日となりました。本日はNGKから『千里の道』の一歩となります。皆様、ご指導、ご鞭撻を願わしゅうございます!」
なお、お伊勢参りは、なんば・千日前から出発し、道中で落語会を開きながら9日間後の11月23日(水)にゴールをする予定です。
また、三枝が歩いてお伊勢参りをした模様の写真や新聞記事、ルートを記録した地図なども披露され、三枝から届いたメッセージを浅越が代弁しました。
「カナダ人の弟子、桂三輝がこのたび、吉本から三重県の“住みます芸人”に採用して頂きました。
来年は吉本100周年。節目の年に、日本全国から盛り上げようと言う「あなたの街に“住みます”プロジェクト」に選んで頂まして、大変光栄です。
サービス精神に富んだ三輝なら、きっとこの大役をこなしてくれると思います。
聞けば、伊勢に住むということですが、伊勢神宮は神社本庁の本宗(ほんそう)とされているところです。神宿る伊勢に、カナダ出身の落語家が住むのに多少違和感はありますが、日本の文化を知るにはいい機会だと思い、送り出すことを決めました。
そして、伊勢まで歩いて行くそうですが、私も45年前に、上方落語の代表的な古典「東の旅」を実践しようと、伊勢街道を伊勢までたどって歩いたことがありました。
弟子が再び、チャレンジしてくれることを心から嬉しく思っております。
私は伊勢まで歩いて行った旅で多くのことを学び、その後の落語家人生に大いに役に立ちました。大勢の人から受けた親切、恩恵があればこそなしえた旅だったと思います。
大阪を出発して、奈良に入り、桜井から三重の名張、松坂に抜けて伊勢に入ったのですが、特に三重は厳しい山越えの峠です。
厳しさを経験するのは落語家修行にとって大事なことです。
三輝も厳しさを乗り越えて、きっと伊勢の皆様に喜んで頂ける活躍をしてくれると期待いたしております。
なにとぞ、ご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。桂三枝」
ここで、伊勢への道中の吉凶を占う“お箸で真珠移しゲーム”が行われました。三重県の都道府県コードにちなんで、お箸を使って24個の真珠を1分間ですべて移すことができたら成功というルールでスタート。ところが三輝は1分間で13個という結果に。そこで大助が挑戦。三輝より少なかったら三輝は成功!と変更しました。そして大助は1分間に8つとなり、幸先よい(?)結果となりました。
また、三重県らしいキーワードのなぞかけもあり、「伊勢海老とかけまして、三重県二代目住みます芸人・桂三輝とときます。どちらも身がぎゅっと締まっております!」と披露しました。
続いて記者からの質疑応答が。
まず、落語を好きになったきっかけを改めて教えてください。
「僕はカナダのトロントでミュージカルの劇作家や作曲をやっていたんです。そして、日本に来て5年ぐらい経っていた頃、よく通っていた焼き鳥屋がありました。そこで2ヶ月に1回、小さな落語会を開いてました。そこのマスターから『日本の文化やし、落語、見てみたら?』と軽い感じで誘われました。まさかその後の私の人生が変わると思わなかったんですが、初めてその会に行ったときに、噺家が着物を着て、座布団の上で扇子と手ぬぐいを使って話しているのを見て、恋に落ちました。最初の御挨拶を聞いたときもかっこいいなと思いました。一番最初に聞いた噺は『じゅげむ』で、言葉がわからなくても落語のことがわかって、すべてピンときて一目ぼれしました」(三輝)。
年季明けを経て、どんな落語家になりたいですか?
「私の夢は毎日、どこかで落語をできたら幸せです。古典はもちろん勉強したいです。そして師匠の創作落語。また、海外でも落語を英語で、特に師匠の創作落語をカナダはもとより、アメリカ、ヨーロッパに広めたいと思います」(三輝)
。
また伊勢市に移住して何をやりたいですか?との質問には…
「伊勢市川崎という場所に移るんですが、そこは日本の昔ながらの家がたくさんあります。まず、日本の文化を守っている場所で私も日本の文化を勉強しながら落語をやりたいと思います。そこをベースにして、一歩一歩学びながら、落語をやらせていただきたいと思います」(三輝)。
なんばグランド花月前広場では、宮川大助より“住みます芸人”の証であるTシャツの贈呈式が行われました。そして「三重県伊勢市に、お先に勉強させていただきます!」と大きな声で挨拶し、お伊勢参りへと旅立ちました。なお、道中は伽半にわらじという昔の旅人スタイルで向かうとのことです。
なお、伊勢への道中、YNNでその模様を語る生配信も行われます。こちらもどうぞお楽しみに。
●YNN(YOSHIMOTO NETA NETWORK)三重チャンネル
http://www.ynn47.jp/mie/
47都道府県 あなたの街に“住みます”プロジェクト
http://www.yoshimoto.co.jp/sumimasukoubo/
桂三輝ブログ『只今修行中!』
http://katsurasunshine.laff.jp/
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