六代 桂文枝が延暦寺で口上を奉納
今年、自身の69歳の誕生日である7月16日に「六代桂文枝」を襲名し、同日に行なわれた、なんばグランド花月での「桂三枝改メ六代桂文枝襲名披露公演」を皮切りに来年の3月まで全国各地で披露公演を行う予定の六代文枝が、10月6日に比叡山延暦寺にある国宝の根本中堂でご本尊の薬師如来像に向かって襲名披露の口上を奉納しました。延暦寺での襲名披露口上の奉納は初めてのこととなります。月亭八方、桂きん枝に加え、東京から春風亭小朝も列席。秋の気配が感じられる中、おごそかに口上の奉納が執り行われました。
弟弟子のきん枝が進行を担当。上方落語協会を代表して八方が襲名の報告と成功祈願を述べたあと、緊張の空気の中、小朝が「これから全国ツアーがずっと続きます。肉体的にはもちろん、精神的にもたいへんになるだとうと思います。文枝師匠は体に気を遣わなければということで、大好きな甘いものを一切口にしておられません。特にお好きなのがモンブランということですが、モンブランはこれからがたいへん美味しくなる季節でございます。先日、楽屋で私の（金髪の）頭が栗に見える。小朝君を食べたいと言われました。本物の栗を食べていただきたいです」と笑いを誘い、「文枝師匠はそれくらいの決意で我慢されています。師匠が最低でも百歳まで現役を続けられますように見守っていただけますよう、お願い申し上げます」と続けました。
本来、口上では主役となる本人は話さないものですが、きん枝に「本人からあいさつを」と促されて、口を開いた文枝は「小朝さんから甘い物は控えていると言われましたが、先ほど出していただいた(銘菓の)走り井餅を口にしてしまいました。申し訳ありません」と告白。そして、ご本尊に向かい、「46年間、三枝でいたものですから、なかなか私自身も自覚できません。でも、皆さんに覚えてもらえないまま終わったら何もなりません。69歳で文枝になり、年齢が年齢でございます。一生懸命健康に気を付けて、元気に襲名披露興行を終えるようにお守りくださいませ」と語って、以前、落語を創った時に学んだ般若心経の一説を唱えました。
ところが、直後にきん枝は文枝が走り井餅を食べた後に実はおたべも２つ食べていたことを暴露。場内が爆笑するなごやかな雰囲気の中、小朝の発声で一同、合掌して無事に襲名口上を終了しました。
口上の奉納を終えた後、延暦寺会館に場所を移して会見が開かれました。会見には文枝、小朝、八方、きん枝に加え、延暦寺執行の武覚超(たけ・かくちょう)代表役員が出席。武代表役員が開創以来1200年となる延暦寺の歴史などを紹介。
文枝は口上の奉納について「非常に緊張しました。厳粛な思いでやらしていただきました。あんな真面目なきん枝を見るのは初めてでございました。それに、バスの中であれだけしゃべりっぱなしの八方さんが１つの笑いもなく、真面目に話しているのがおかしくておかしくて…。私の気持ちがどういう風に伝えられたのかわかりませんが、心引き締まる思いでした。体だけは大事に健康に、ということをお祈りし、これからの落語会を乗り切れるように頑張りたいと思います」とすこし安堵の表情をのぞかせていました。
緊張を指摘された八方は「初舞台の時のように緊張しました」と告白。本名が「寺脇」なので、「延暦寺のわきで生まれました」と嘘をついて笑わせようと思ったそうですが、罰があたったらいけないと思ううちに緊張が増してしまったとか。きん枝は「会長、八方さん、私が1台のタクシーに乗って、楽しく、遠足気分で来たんですが、お山を上っていくにしたがって、言葉が少なくなってきまして…。根本中堂に入る時には八方さんのひざが細かく震えていました」と証言。そして、今まで30か所以上の司会をしてきた時には一切緊張しなかった自分が「声が裏返ってるなと思いました」と感じるほどの緊張感を味わったということです。
その後は質疑応答に。今回、延暦寺で口上の奉納した理由について、披露公演をずっとサポートしてきたきん枝は「世界遺産に入るようなところで襲名興行ができたらという思いがありました」と答え、延暦寺とも来年、公演の開催を相談中とのこと。また、口上の感想を聞かれた小朝は「詳しい内容を知らずに来たもので、本当に驚きました。ご本尊に口上を納めるというのは東京ではないんですよ。非常に身が引き締まる感じでございました」としみじみ。来年の延暦寺での落語会について「はじめは今日、ここで落語会を行う予定だったんですよ」と文枝。当初思っていた場所では落語をするのが難しく、後日の開催になったそうです。落語会は2013年度の開催が相談されているのでお楽しみに！
7月16日を皮切りにスタートした襲名披露公演は10月5日現在、74会場87公演が行われています。今年12月にはパリ公演、来年は比叡山での公演、そして7月16日には襲名1周年の記念興行も予定されています。「聞くたびに公演の数が増えている」と文枝も驚く襲名披露公演の詳細は公式サイトでご確認ください。http://www.yoshimoto.co.jp/bunshi/
|
|
|
|
