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2012年11月 1日 (木)

9年ぶりのアルバムを発表したりんけんバンド、照屋林賢が沖縄音楽への想いを語る

11月1日(木)、沖縄音楽を代表する存在と言ってもいい、りんけんバンドが9年ぶり14枚目のオリジナルアルバム『黄金三星(くがにみちぶし)』をリリースしました。そこで、バンドのリーダーにして“沖縄最高のソングライター”とも称される照屋林賢氏に、単独インタビューを敢行! 沖縄国際映画祭などで沖縄と縁の深い吉本興業東京本社を訪れた際に、たっぷりお話を伺うことができました。

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改めて紹介しますと、りんけんバンドは結成から35年にわたって沖縄の音にこだわり続けてきたユニットです。中心メンバーは照屋林賢と、沖縄随一の歌い手とされる上原知子。三線や島太鼓と洋楽器を組み合わせた「沖縄ポップ」の先駆けとして、多くのアーティストにリスペクトされています。現在は、沖縄北谷町のライブハウス「カラハーイ」で毎週末ライブを行っているほか、世界各地で公演。また、RBC(琉球放送)ではレギュラーTV番組『りんけんバンドさー あっちゃ~あっちゃ~』(毎週水曜)を持っており、林賢氏は新人アーティストの育成やプロデュースなども行っています。

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それでは沖縄音楽界の重鎮、照屋林賢氏へのインタビューのはじまりです。アルバムの話はもちろん、沖縄音楽の展望についても語っていただきました。また最後には、林賢氏によるウチナーグチの“格言”まで登場! とはいえ、しゃっちょこばらず“ウチナーンチュ”の賢人のことばを聞く感覚で、最後までゆるりとお楽しみいただければと思います。

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――まずはいきなりですが、なぜ9年も間が空いたのでしょう。
「え、9年?」

――アルバム『黄金三星』は、オリジナルとしては2003年の『EISA(エイサー)』以来ですよね。
「あ、そうねー。まあ、単に空いちゃったということでもあるんだけどね(笑)。いや、もちろんその間はライブはやっていたし、曲を作る作業なんかもしてたんだけど…その頃はなんというか、沖縄音楽を取り巻く状況として、ヒットしている曲がいっぱいあったじゃないですか。正直、その中だとちょっと出る幕ないかなと思ったんですよ。それに、ヒットしていた曲って、僕にとっては“沖縄の音楽とは違うテイストを持った沖縄の音楽”だった。そういう流れがあったときに、僕らが出しても聴いてもらえるかなあってね(笑)」

――でも、沖縄音楽が注目されるきっかけを作ったのが、いわばりんけんバンドですよね。
「そうそうそう」

――だからこそ、沖縄音楽ブームと呼ばれる昨今の状況がきたときに、リリースがなかったことが不思議で。
「うーん…誤解されるかもしれないけど、僕としてはその中で一括りになってしまうのがイヤだったという感じでしたよね。というのも、僕は沖縄の音楽を考えた時に“ずっと進化していくもの”だと思ってたんです。でもあの頃、世間で受け入れられたものから、僕は進化をあまり感じなかった。ただ、ブームがきたことでアーティストがいっぱい沖縄から出てきたのは、すごくいいことです。ま、僕としてはそこに混じるのがちょっと照れ臭かったんだね(笑)」

――では、逆に、なぜ今なのでしょう?
「ほとぼりが冷めてきたからね。『じゃ、単独で出そっか』みたいな(笑)。あとは僕もだんだん歳をとってきたんで、そろそろアルバムを出して、音楽として次のステップに行きたかったんです。前のアルバムを作ったときに見えた“一点の光”へ、もっと近づくためにもね。だからこのアルバムも、前の続きです。沖縄の音楽がもっと発展する、進化する、深めていく作業って、商業ベースには乗りにくいんだけど、今ならできるなと。おかげで、一点の光がもうちょっと大きな“希望”として見えてきました。なので、今の心境としては、もう次ですよね。また次の作品を作りたい、という気持ちになってます」

――ということは、この『黄金三星』は新たなステージの始まりなのだと?
「そうそう。ただまあ、今回のアルバムが聴いてもらえるとわかるけど、いわゆるマーケットのことを本当に考えてないんですよね(笑)。一曲目からわーっと『沖縄音楽を楽しもう』って感じなだけだからさ」

――聴いていてすごく楽しかったし、それ以上に包まれる感覚がありました。
「まあ、どう思うかはそれぞれで、僕としてはとにかく前へ進んでいるだけだけどね。ただやっぱり沖縄って、全体としても進化していかないとダメだと思うんですよ。沖縄はある時から止まってますから。歴史をさかのぼれば、実は400年くらい前からいろんなものが止まってる。その中で生かされて存在している僕が、そこまで戻りつつ、歯車を動かしていかなきゃなのかなって。だからもう、一心に希望の光に向けて、ね」

――現在の沖縄を取り巻く状況だけ見ると、さまざまな問題があって、覆っているのは閉塞感とも言えるのかなと思ったのですが…。
「打つ手がなくなったというかね。たしかに、落胆している人はいっぱいいますよ。でもその中でも、希望を持たなくちゃいけないし、音楽は希望の種火になりうる。だから、商品としてヒットしなくても、このアルバムが沖縄音楽の中の熾き火のような存在になるといいよね。そんな気持ちだから、今の僕には明るい希望しか見えてないですよ」

――そう言いきれるってすごいことだなと、単純に思ってしまいます。
「でも歴史としての沖縄を見ると、アジアの一員としてマレーシアとか中国とも自由に交易してたでしょ。もっともっとすごい人がいた。そう考えると、僕らってまだまだ枠にとらわれてるのかな、とも思うよね。だからりんけんバンドが目指す音楽は、もっと航海に出ていく感じなのかなと思ってます」

――そんな思いと、今回新たに『黄金三星』をレコーディングして、アルバムタイトルに持ってきたことと関係してきますか?
「『黄金三星』って曲は、いつもライブの最後にやる曲でね。僕はこの曲がすごい好きなんですよ。作ったとき、作詞は父親の林助にお願いしたんだけど、黄金三星ってのは沖縄では“最高の褒め言葉”なんですよね。『あなたの頭の上に黄金三星が光ってる』と言ったら、あなたはすごい幸運な人ですよ、という意味。そんな黄金三星をテーマにした詞に、曲をつけられて自分としてもよかったなと思っているんだけど、これはずっともう一回やりたいと思ったし、それは今なんだと感じたんだよね。それと全体の意図としては、沖縄の音楽としての“次の基本”を作りたいなというのもあった。これまでの沖縄の音楽は、メロディーや歌詞が沖縄っぽくても、リズムが洋楽のものだったでしょ。そのリズムとしての洋楽的なものから、徐々に離れていきたかったんだね」

――りんけんバンドって、洋楽のリズムを積極的に取り入れたバンドだと思うんですが、今回のはちょっと違うなと、たしかに感じました。
「そういうことが、やれる時代になったんですよね。洋楽器を使って、沖縄のリズムを出すことを目指せるようになってきた。チャンプルーを超えて、独自性を追求できるようになったというのかな。レゲエなんかもそうだと思うんですよね。ドラムなんか、最初は洋楽っぽく叩いてたんだと思うんですよ。でもそれを消化して、自分のビートに戻っていったでしょ。彼らは彼らなりに、血と汗と涙の塊としてのレゲエを形作っていった。僕は沖縄音楽も、同じようなポテンシャルを秘めてると思うんですよ。沖縄からすごいビートが生まれるに違いないと、僕は確信してるんです。政治に対する不満だけでなく『自分たちってなんだろう?』という問いかけがマグマのように溜まっている、今だからこそね」

――これから真の沖縄音楽がはじまる、と?
「そう思うね。今までは余興ってくらいのものが出てくるよ(笑)」

――アルバム『黄金三星』は、その宣言でもある?
「そうそうそう(笑)。ま、曲としての『黄金三星』はゆったりしてて、ビートという感じじゃないけれどね。訴えるものはあると思います。中に潜んでいる、魂を感じてもらえるんじゃないかなと。でもね、実はそうやって沖縄音楽を考えていくとね、もう“沖縄らしさ”とか関係ないような気になってくる。もちろん自分たちは沖縄に住んでて、歴史を背負っているわけだけど、それに縛られている必要もないなと。だからもっと言えば、地球の一員としての沖縄というのかな。そういう音楽が生まれるんだろうし、僕らは奏でていきたいよね」

――なるほど。では最後に、ムチャぶりで大変恐縮ですが『りんけんバンドさー』で林賢さんが披露されている「格言」を、メッセージとしていただきたいのですが…。
「え? なんだろうなあ。急だねえ(笑)。でもせっかくだから、ひとつ考えてみようね…うーん…」

――すいません(笑)。
「いやいや(笑)。ウチナーグチ(沖縄の言葉)がいいね。うーん…うん、できた」

くまから あがたんかい いちぶさしが
あまから くがたん いちぶさん

(ヤマトンチュ訳)
ここから 向こう側に 行きたいと思ってるけど
あちら側も こちらに 来たいと思ってる

――解説していただけますか。
「向こう側にこそ何かある、と思ってしまう勘違いですよね。でも実は向こう側でもこっちへ来たいと思ってる。本当は、自分の足元の魅力に気づいてないだけかもしれないのにね。向こうに憧れるより、自分が見るべきものって、足元にたくさんあるんじゃないかなってことですね」

――素敵な格言までいただき、本日はありがとうございました。

●新譜情報
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『黄金三星(くがにみちぶし)』
2012年11月1日(木)発売
価格:2800円/製品番号:Rinken-2044
レーベル:Rinken records
発売元:株式会社アジマァ
≪収録曲≫
01.あけず羽ぬ花(あけずばぬはな)
02.黄金三星(くがにみちぶし)
03.ハラサイ サーユイ
04.時間愛さ(とぅちがなさ)
05.魚売アン小(いゆういあんぐゎ)
06.天ぬ綾(てぃんぬあや)
07.ウシクガジマル
08.旅ぬ蜻蛉(たびぬあけじゅ)
09.やがてぃ七月(やがてぃしちぐゎち)
10.遊び出来らさ(あしびぃきらさ)
11.とぅん返りば(とぅんけぇりば)

●りんけんバンド公式サイト
http://www.rinken.gr.jp/

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