桂かい枝が香港理工大学の特別講師に!「日本人の笑い」テーマに講義
英語落語を引っさげて、これまでに世界17カ国97都市で公演を行ってきた桂かい枝。2008年には約半年間、文化庁の文化交流使として渡米し、アメリカを横断しながら「RAKUGO」を広める「全米RAKUGO武者修行ツアー」を敢行。さらに、ゴールの地となったニューヨークでは「ニューヨーク繁盛亭」を大成功させるなど、落語を全世界に広めるため活動してきました。
そしてこのたび、世界大学ランキング60位であり、最先端で国際基準の教育を提供している名門・香港理工大学の特別講師に就任することが決定! 9月10日〜14日に、「日本人の笑い」と題した特別講義を行うことに。8月23日(金)には、就任の経緯や意気込みを語るべく記者会見を開きました。
「香港理工大学には多文化共生といった学部があるらしく、世界に通用する国際人を育成しているとのこと。その中で、1年生の皆さんの一般教養課程として、毎年秋に世界中のいろんなジャンルの文化人をゲストに招いて特別授業をやるそうなんです」と、自らが担当する講義についてまずは紹介。続けて「9月は例年、反日デモなどがある時期なので、これまで日本の方は呼んでいなかったようですが、今年はやってみようということで。それならお笑いがいいんじゃないかと、いろいろ選考された中で、『かい枝さん、どうですか』と。キム教授という方が、YouTube等で私の落語を観てくださり、声をかけていただきました」と説明しました。
講義は期間中に3回、各100分という長時間。「『日本人の笑い』について英語で講義するわけです。どうしようかなというのが正直なところでして(笑)、いま一生懸命、準備を進めているところ」と笑いを交えつつ、「せっかくなので、実際に落語をやってもらおうと思っています」と具体的な構想も。同大学は映画監督のウォン・カーウァイさんの母校であり、映画関係・マスコミ関係の専門学科もあるため、「将来的に影響力を持つ方も出てくるんじゃないか。もしかすると落語をテーマにしたものを作ってもらえるかも。そのためにも『落語はすごい』ということをわかってもらえるように頑張っていきたい」と力を込めました。
より詳しい講義内容について聞かれると、「まずは落語の歴史を中心にお話をさせていただこうかと。落語って、けっこう中国の笑い話などから来ているものがあるんです。16世紀ごろの『笑府』という本があるんですが、古典落語の『まんじゅうこわい』『長短』『三軒長屋』などはそこから来ている。実は深いつながりがあるということを伝えたいですね」。最終的には落語のコンテストをやりたいそうで、「覚えるんじゃなく作ってもらう。落語の基本的なルール『ト書きがない』『扇子と手ぬぐいを使う』『オチをつける』だけを守って、自由にストーリーを組み立ててください、という。以前アメリカでやったときは、いろいろ面白い作品が出てきたので、今回も期待しています」と語りました。
自身が講義で口演するのは、「松山鏡」「お玉牛」「動物園」など英語落語の持ちネタからいくつか。加えて「大阪の中での笑いの役割というものも伝えたい。商売人の街なので、ことを荒立てずに交渉するためにも、日常の中に笑いがあふれてる。『どうや、最近』『夏のはまぐりや。身腐って貝腐らん(見くさって買いくさらん)』なんていう洒落言葉とかね。どうやって英語で説明するのかわかりませんが(笑)」とも。そこから、「日本人って、皆さんが思っているような人とはちょっと違う、堅い人ではないんですよ、というようなところまで伝えられればいいですね」との願いも明かしました。
欧米の人には、伝統芸としての笑いや師弟関係というものが理解されにくかったそうですが、「中国には『相声』という漫談みたいな芸があるんです。それって必ず師匠に弟子入りするんですって。つまり、落語の世界に近い伝わり方がある。だから、よりイメージしてもらいやすいのでは」との期待も。「面白い人がいたら、(桂)三輝に次ぐ外国人落語家が出てくるかも!」と茶目っ気たっぷりに話していました。
これまでさまざまな国で落語を広める活動をやってきたかい枝ですが、香港での口演は初めて。「とにかく楽しく盛り上がれたら、みんな喜んでくれるはず」そんな思いを胸に、落語の魅力を体当たりで伝えるべく決意を新たにしていました。
【桂かい枝】