「芸人ほど幸せな仕事はない」ピースが『よしもと1DAYアカデミー』で特別講義を開講!
9月8日(日)、吉本興業株式会社東京本部にて、『よしもと1DAYアカデミー2013「ピース特別講義」』が開催されました。
「よしもと1DAYアカデミー2013」とは、弊社が運営する芸人&タレント養成所「吉本総合芸能学院(NSC)」と、スタッフ&クリエイター養成所「よしもとクリエイティブカレッジ(YCC)」による合同のワークショップ型セミナーのこと。
7月14日(日)に行なわれた第1回目では平成ノブシコブシが、第2回目ではオリエンタルラジオが特別講師を務めました。
MCを務めるのは、今回もロシアンモンキー・川口。1年先輩のピースとは、旧知の間柄です。
聴講生全員から「おはようございます! 今日はよろしくお願いします!」と挨拶され、「よろしくお願いします。すっごく声が出ていて……思ってたより百倍、重々しい空気だね。もうちょっと笑いが欲しいなと思うんですけど……」と戸惑う綾部に、「綾部さん、いっつもこういう感じです」と川口から助言が入りました。
まずは、NSCに入ることになったいきさつを。
高校卒業後、椅子工場で働いていた綾部は、ある日、幼なじみと出かけた原宿で『ダウンタウンのごっつええ感じ』のロケに遭遇。「素人ですから、松本さんに“まっちゃっん!”と声をかけたら、手を振ってくれて。そういえば、小学生の頃にお笑いやりたいって言ってなぁと思い出して。一緒に(原宿へ)行ってたヤツとそう言ってたから、これも何かの縁かなと思って入りました」と語ります。
一方、「いろいろありまして」と笑いながら、口を濁す又吉。「何笑うてるんですか。そのいろいろが訊きたいんでしょ」と川口に促され、「本当はオーディションで入ろうと思っていたけれど、当時、劇場がなくて。銀座7丁目劇場に行ったときにスタッフさんからNSCのことを訊いて入りました」と振り返しました。
元々は別々のコンビを組んでいた2人。綾部の元コンビ名「スキルトリック」について、「ちょっと恥ずかしい名前」と茶化す又吉。「言わないでいいよ、そういうことは」と止める綾部に、「スキルトリック、意味は?」と乗っかる川口。「スキルがあって、トリックがあるとか……言わせるんじゃないよ! 当時、だいぶイキってたことを発表してどうするんだ!」とツッコみます。
NSC在学中、割と引っ込み思案なタイプだったそうで、「ネタ見せのときも、ばんばん出ていく同期を“よく出られるよなぁ”と言いながら観ている側だった。で、先生に“来週にネタ見せしないんだったら、もう授業出なくていい”って言われて見せる、みたいな」(綾部)「できることなら、最後までやりたくなかった」(又吉)。又吉に関してはネタ見せでは見せずとも、在学中、ずっとネタをつくっていたそうです。
そんな2人は、在学中から仲よかったそう。「元々、NSCに入る前の面接で一緒になった。20人いた中で、俺らはショートコントを、こいつらは漫才をやって。帰り際、“俺らだけだったね”って話をした」という綾部。「ノブシコブシに関しては、徳井の存在は知らなかった。吉村もいるなぁくらい。弁当食うのも、こいつと行ったり、こいつの相方と行ったりしていた」というほどの付き合いだったようです。
NSC卒業後、相方が芸人を辞めることになり、ピンになってしまった綾部。それからは、裏方をやっていたそうです。又吉は「線香花火」というコンビで、テレビにも出演していましたが、どちらかと言えばネガティブ思考の又吉は「レギュラーはあったけど、このままではキツいなという感じやった。いけるとかいう感覚はなかったし、先輩と仕事してても“なんかちゃうな。難しそうやな”という気持ちのほうが強かった。当時の相方もきっと感じていたと思う」とポツリ。それからほどなくして、コンビを解散。その後、ピースを結成しました。
裏方時代に、先輩とのコミュニケーションを深めたという綾部。川口から「それが、いまの綾部さんをつくっている」と言われ、「過言じゃない」と否定はしませんでしたが、「ごますりだけだと、同期に“先輩に尻尾ばかり振って……”と言われるから、うまくやらないと。そういうのはすぐバレちゃうから」ともアドバイス。
一方、又吉は当時、先輩付き合いが苦手だっただけではなく、以前は先輩から誘われても断っていたそう。「“誘われたら行く”っていうのが常識とは知らなかった。でも、それが普通やと知ってから行くようになった」と話すと、「そうかぁ~。それでも、又吉さんは嫌われへんもんなぁ」と川口。「苦手な人が無理していっても、失敗しかせぇへんから」という又吉の言葉に、綾部も同調していました。
仲がいい者同士でコンビを結成したピースですが、「ネタができあがるには、2年くらいかかった」(綾部)とのこと。「(前のコンビでは)ボケでネタ書いていて、こっちもそうだった。でも、最初からこいつがツッコミになることはないだろうと思ったから、俺がツッコミに。ツッコミが関西弁ならまだいいけど、俺らは逆だったから苦労したよな?」と言うと、又吉も無言でうなづきます。
その言葉に、意外だという表情を浮かべた川口。「後輩からすれば、売れるべくして世に出ていった先輩。言い過ぎかもしれませんけど、天才と天才が組んだと思った」と言われ、照れくさそうな表情を浮かべる綾部でしたが、「綾部さんは天才かどうか?と思うけど」と付け加えられた途端、聴講生からは大きな笑いが。「ちょっと……」と軽くツッコみながらも、川口へ「ありがとうございます。この辺で笑いがないと、耐えられなかった」と笑いながら話しかける綾部です。
『キングオブコント』と『M-1グランプリ』両方のファイナルに進出した数少ない芸人であるピースですが(『M-1』終了までにそのほかで達成しているのは、サンドウィッチマンさん、ジャルジャル、モンスターエンジン)、「がむしゃらなタイプじゃなかった」と振り返る綾部。「もっとがむしゃらにやっていたら、もっと早く(世の中に)出られていたかもしれない。これは少し後悔というか……」と首を傾げるも、「俺はとにかくテレビに出て、人気者になりたいタイプだったから、テレビに出たときの想定はいろいろとしていた」と話します。一方、漫才師になりたかったという又吉は、「とにかく劇場でウケるネタをつくろうと思っていたそう」。ただ、綾部が相方となったため、合わせていったあるとき、「気が付いたら、化けもんみたいな格好をして舞台袖にいた。何してるんやろう?と自問自答することもあったけど、結局ウケたら嬉しかった」と本音を。そんな彼がテレビを意識するようになったのは、2010年頃からだそう。「相方がひとりでテレビに出始めたから、どういうところかなとか多少考えるようになった。で、テレビを観ながら、ここにいたらどうなのかとか考えていた」そうです。
聴講生へ向けては、「ただただ意味なく、時間を過ごすのは辞めたほうがいい」と綾部。「例えば、先輩のライブの手伝いに行ったら、先輩に話しかけてみようと考えるかそうじゃないかで、差は出ると、経験で思う。何がプラスになるのか。メリットとデメリットを常に考えていたら、どこかで差は出てくると思う」と真面目に語りつつも、「いま、“倍返しだ!”を使うところだったけど、やめました」と告白。それに、「とめてくれてありがとうございます。嫌でした」と言い、笑いを誘った又吉でしたが、「5年目くらいまでは、ゲームコーナーのモノボケが嫌で後ろに隠れていた。けど、途中でこれじゃいかんなと思って、1個はやらな死ぬって自分で決めてやるようになった。やっといてよかった」と経験を語りました。
2人とも、在学中から「売れるには相当時間がかかるぞ」と思っていた様子。「素人の頃、売れてる人はなんかコネがあるのかなと思っていたけど、そうじゃなかった。売れてる人もそうじゃない人も、スタート地点は一緒。みなさんとも一緒。面白いやつが売れるとも限らないし、何があるかわからないというのだけは感じてほしい」とアドバイスする綾部。「こういう話を聞いて、なるほどなって思う人もいれば、知らねぇよって思ってる人もいると思う。そっちも大事。自分に合ったことをやったほうがいいということも付け加えておきます」と語りかけました。
ある意味、野心的な欲深さを見せない2人。現状についても、「リアルに思うことは、消えないようにしなきゃっていうこと。ノブコブとか直美とかパンサーとか、それくらいの芸人に共通した気持ちだと思う。来年もテレビに出ていることがいまの目標」(綾部)と実にシビア。「下積み時代よりも、いまのほうが百倍キツい」とも語ります。
「僕らライブシーンでやってる芸人からすれば、下積みの厳しさも知ってるから身に染みます」と同調する川口に、「卒業したら、なんとか吉本に残って舞台に立ちたい。舞台に立ったら、今度は∞ホールに出たいとか、目標は延々続くからね」と綾部。「みんな、お笑いでご飯食べられたらいいなと思っているはず。みなさんくらいのときは、大きな目標を持っておいたほうがいい」と希望を含ませる又吉に、「確かにね。俺らがいま直面してるのはそういうことだけど、みなさんが想像しているような“たまらない時期”も必ず来る。かわいい女の子にメモを渡されたり、いい部屋に住めて、ちょっと高めに寿司屋に行けるとかは、絶対待ってますよ!」と励ます綾部。
「やっぱりおばさんたちも寄ってくるんですか?」という川口にも、「絶大な支持を得てます。そこは、テレビの力を大いに感じたところでもあります」と断言。「でも、そのせいで僕、熟女の相方って呼ばれてますよ」と嘆く又吉でした。
聴講生から「結成当時、コンビというのは熱い話をしがちですが、そういうのはなかったんですか?」と訊ねられた2人。又吉が「熱さ……なかったですねぇ」と返せば、綾部も「そうだなぁ。将来、2人で京都にカフェと古本屋を開きたいよねっていう話はしてた。京都が好きっていうのが共通点だったから、1階で買った本が、2階のカフェで読めるっていいよねぇとか。それくらい」とのんびり答えます。
「下積み時代、周囲のうらやましい話を聞いて、悔しい気持ちは湧いてこなかったのか?」という質問にたいしても、首を振る2人。「オリラジ、ハリセンボン、しずる……初舞台のMCをやった後輩たちがどんどん売れていったけど、そこが売れたから自分らが売れないとは思っていなかった。よく、若手には座席数が決まっていると言われるけど、俺はそうじゃないと思う」(綾部)「妬みや嫉みがあんまりないんですよね。そういう人たちが出ていても、自分の能力の低さのほうが問題として大きかった。いまも足は遅いけど出してもらっているっていう感覚が強いんです」(又吉)と、とにかくマイペースな2人です。
また、「相方を決めるのは大事なこと。一生のパートナーになるかもしれないから、どんな人か知らないとね。ネタしてるのを観て面白いなぁと思って組んでも、喋るとクソみたいなヤツだなと思うこともあるから」と、アドバイスをおくる綾部でした。
「いろいろと言いましたけど、在学中の方、辞めたら終わりです。みなさんが思い描いてることを実現するためにやるべきことをする、これに限ります。NSC入学を考えている人は、厳しい世界ではありますけど、こんなに幸せな仕事はない。もしよかったら、入ってきてください」(綾部)「モノボケとかギャグをやらず、隠れていた僕の5~6年は無駄でした。やり始めようかなと思ったときにやったほうがいいですよ」(又吉)とエールを。又吉は照れくさかったのか、「一時期おかっぱにしたんですけど、外見に頼る気のてらい方は大体ミスります」と最後まで自虐的に語り、笑いを誘っていました。
フォトセッション時には、拳を突き上げる聴講生たちに「俺らもこういうのやってたよ。なんでやんなきゃいけないの?とか思ってる人もいるかもしれないけど、そういうものだから」と話しかけ、表情の固い彼らを和ませる綾部でした。
講義終了後の囲み取材では、「新人を思い出しました」(綾部)「懐かしいというか、みなさんの気持ちがわかりました」(又吉)としみじみ語った2人。
今年でコンビ結成10年ですが、「あっという間でした。でも、この世界で生きていくためには、まだまだがんばらないと。ただでさえ、僕は天狗だなんだって言われますから、今日も恐れながら話しましたよ」と語る綾部。「最近、賞レースにも出ていないんで、ネタをまたやれたら。単独も数年やってないので、考えたいですね」と言えば、又吉も「最近、なかなかできなかったので、ネタをつくりたいですね」と同意していました。
また、2020年に東京五輪の開催が決定したことを訊かれると、「7年後、そこまでに現状をキープして、五輪関連のお仕事をいただきたい」と意欲を見せた綾部。又吉も「メキシコ五輪以来、メダルを獲っていない男子サッカーにぜひメダル獲ってほしいですね。いまサッカー番組もやらせてもらってますけど、(2020年も)お邪魔にならない程度に盛り上げられるようなお手伝いができたら。スタジアムで観戦できたら嬉しいですね」と静かにアピールしていました。
●よしもと1DAYアカデミー2013
10月20日(日) 特別講師:ハリセンボン
<開催場所>吉本興業株式会社東京本部
<募集定員>40名
<受講料>1500円(税込)
※注意事項を読まれた上で、NSC・YCC各校HPからお申し込みください
※応募者多数の場合、早急に募集を終了することがあります
http://ycc.yoshimoto.co.jp/
●吉本総合芸能学院(NSC)
http://www.yoshimoto.co.jp/nsc/
●よしもとクリエイティブカレッジ(YCC)
http://ycc-yoshimoto.laff.jp/
【ピース】