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2015年6月15日 (月)

桂文太ぷれみあむ落語会 in NGK

6月11日、桂文太にとってなんばグランド花月で初の独演会が行われました。来年入門45年を迎える文太は、五代目桂文枝師匠の薫陶を受け、落語に真摯に打ち込んできた実力派で知られています。この日の満を持してのNGKでの落語会では、師匠が初舞台でかけたネタという「竜宮界龍乃都」、「厩火事」、そして"やっていて一番楽しい噺"と「八五郎出世」を披露しました。


まずは弟弟子の桂かい枝が高座に登場し、自身の創作落語「ハル子とカズ子」を口演、物忘れの激しいおばあさん二人のほのぼとしたやり取りで、会場を和ませました。

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続いて桂文太が登場。高座に上がるなり「待ってました!」の掛け声と万雷の拍手を受けた文太。会場の温かな雰囲気に感極まった様子、「いきなり泣いてしまいました。元気よく、楽しくやっていきます!」と涙をぬぐう姿が印象的でした。舞台袖にはたくさんの噺家も駆けつけているそうで、そのことを楽しそうに話します。そして、ネタに入る前に文太の落語を楽しく聴くための「あいうえお」を伝授。「"あ"くびをしないでください。"居"眠りをしないでください。居眠りはマシ、いびきもあるからね」と笑いを誘います。続けて「"う"ろうろしない。"笑"顔で聴いてください。"お"ならをしない」。または「"オ"チを先に言わない」。文太の落語を楽しむ5つのポイントが隅々まで伝わったところでネタへ。海の底に落とした金を拾うため、人間が入れる大きさの"フラスコ"で海底へ。そこで竜宮城へと迷い込み本当の浦島太郎と遭遇した男の姿を描いたファンタジーです。「天神祭」を彷彿させるタコの親子の会話、芝居がかった台詞回しに、魚との格闘シーン、噺の世界をにぎやかに沸かせるはめもの(鳴り物)と、一席目からたっぷりと文太落語を聞かせてくれました。


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ゲストの笑福亭鶴瓶さんの落語に続いて、文太が「厩火事」を披露。「たっぷり!」の掛け声に「こんなにありがたいことはありません」としみじみ。マクラでは、ネタにちなんで夫婦の妙を面白おかしく話しました。まったく働かない男とその女房のやり取りを描いた「厩火事」では、おかみさんを愛嬌たっぷりに演じ、いじらしさもほほえましく。夫の気を確かめるためにとったおかみさんの一連の言動では、まるで二人の男女が目の前に立ち現れたかのような臨場感で沸かせました。


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中入り後は、二人目のゲストである中村美津子さんが登場。新曲「潮騒」を聴かせてくださいました。歌の終わりには文太も盲導犬のデイリーとともに舞台に登場。文太は、目の難病で視力を失った際に、中村さんが長年支援されている日本盲導犬協会を通じて、盲導犬の"デイリー"という素晴らしいパートナーにめぐり逢うことができました。文太が、中村さんが日本盲導犬協会を支援するきっかけになったことを尋ねると、初めてNHK『紅白歌合戦』に出場された翌年、「壺坂情話」を歌うことになり、この歌と出合ったことをきっかけに「素敵な歌を歌っている間は(支援を)続けたい」と協会とのご縁がつながったそうです。デイリーは中村さんが支援された盲導犬では30頭目となるそうで、現在は36頭になるとのこと。中村さんは、デイリーが文太のお囃子に反応する姿などに、とても感心されていました。「歌手としての目標は120歳まで歌うこと」と中村さん。そんな中村さんのパワーを受けて、「この『ぷれみあむ落語会』も、来年もやります!」と堂々宣言した文太。その言葉に、会場から大きな拍手が沸き起こりました。最後に中村さんは「壺坂情話」を披露され、「ぷれみあむ落語会」に大きな華を添えてくださいました。

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そして大トリは文太の「八五郎出世」。松羽目の舞台でさらに賑々しく、堂々たる高座で魅せました。マクラでは異文化コミュニケーションの話題から江戸の世界へと誘う文太。大工の八五郎の妹が殿様のお世継ぎを産んだことから、お城へと繰り出し、殿様と面会する様子を描いた一席。殿様と対面しても全く動じない八五郎、庶民の暮らしぶりを飄々と語る姿はおかしくもあり、切なくもあり。身分の違いの悲しみもさりげなく聴かせる文太。笑わせつつも涙を誘う、そんな人情噺をたっぷり味わわせてくれました。

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三席すべてを終え『ぷれみあむ落語会』もお開きに。「また来年もやらせていただいてよろしいか」と尋ねると、お客様は割れんばかりの拍手で応えてくださいました。その応援に「今日以上にがんばります!」と早くも気合を入れ、翌年も楽しみな一言をお土産に。また、終演後にはロビーに現れ、お客様との会話も弾みました。口々に「よかったよ」と声をかけてくださり、文太も満面の笑みで応えていました。


【桂文太】【桂かい枝】