脚本・演出の家城啓之「愛情を受け取る夏のお話に」とコメント! 神保町花月400回記念公演『ナツテール』稽古場突撃!!
7月14日(火)~19日(日)に神保町花月で上演される舞台『ナツテール』。神保町花月の400回記念公演でもある本公演の脚本・演出を担当するのは家城啓之(マンボウやしろ)。本番5日前となる7月9日(木)の稽古場を直撃し、家城と出演者である犬の心のおふたりに話を伺いました。
(左:家城啓之、中:犬の心・押見泰憲、右:犬の心・いけや賢二)
まずは稽古を見学。ほとんどストップすることなく通し稽古が進んでいくため、まるで本番を見ているような気分に......。
そんな中、アドリブ(であろうと思われる部分)の箇所では思わず笑いが漏れたり、小声で誰かのツッコミが入ったりと、和気あいあいな雰囲気になることも。本番さながらの緊張感と、やわらかい雰囲気が同時に感じられる稽古場でした。
通し稽古が終わると、家城からいくつか修正の指摘が。みんな真剣な表情で聞き入ります。しかし、この日はこれで終了。修正箇所の確認は、後日改めて行われるようです。
稽古終了後、家城と、出演者である犬の心(押見泰憲・いけや賢二)の3人にお話を伺いました。
――『ナツテール』とはどんな作品なのか、まず家城さんに伺いたいのですが。
家城 夏の話ですね。物語は特にないんですけど、観た人が「夏」と「愛情」のふたつを持って帰ってくれたらいいなというのがテーマです。全編夏がテーマのオムニバスコントというか。
――なぜこういった話をやろうと?
家城 最初、普通の話を考えてたんですけど、なんか面白くないなって思ったのと、今回、神保町花月の400回記念公演なので今まであんまりやってなかったんですけど、お客さんのことだけを考えて作ってみようかなと思って。せっかく来てくれたんだから、お客さんになにか持って帰ってもらおうと思ったときに、公演が夏のはじまりの時期なんで「今年の夏は遊ぶぞ!」とか「今年の夏は楽しみだなぁ」と思えるようなものがいいなって。あと、「子供の頃愛されてたなぁ」とか、これから子供を欲しいと思ってる方が「子供ってかわいいなぁ」って思えるような、そういう愛情を受け取ってこの夏が有意義なものになるようなものを作れたらなと。だから年代もそんなに絞りきらないように、場所もどこかわからないようにしていて。観に来た人が世代も出身もバラバラだと思うんで、大ざっぱな「日本人の夏」みたいなものを中心に、話と単語を集めた感じにしました。
――脚本とキャスティング、どちらが先なんですか?
家城 キャスティングです。ホントは全然違う話をやろうと思ってキャスティングをしてたんですけど、話が変わってしまって。でもスケジュールは押さえちゃってたんで、キャストは変えずに作りました。
――稽古を拝見していると、アドリブの箇所があるように思ったんですが。
押見 ありますね。その部分は今、稽古でやっててもお客さんの前ではやってないので、何がウケるのかやってみないとわかんない部分があります。
いけや でも、用意していくと面白くないっていうか、ウケないんです。あと、"用意してた感"が出ちゃうのが恥ずかしいっていうのもあるんで、完全にアドリブですね。
――初日まであと5日(註:取材日は7月9日)ですが、今現在の仕上がり具合は?
家城 7~8割ぐらいじゃないですか? ここから上げるのが大変そうですね。だから初日は7割ぐらいでいくと思いますけど(笑)。
――えっ(笑)?
家城 「時間かかりそうだな」って今日の稽古見て思ったから。
いけや やればやるほどよくなるのはわかるんですけど、時間との兼ね合いもあるんですよね。
家城 だから要所だけやるかもしれないですね。どうしてもここはこのテンポでやろうかみたいなところを5カ所くらい本番までにやれたらいいかなと思ってます。
――稽古中、印象深かったエピソードはありますか?
いけや 僕だけが仕事で稽古に参加できなかった日に、僕の代役を山田くん(いまさらジャンプ・山田裕磨)がやったらしいんですけど、僕の声にすごく似てるっていうのでみんなザワザワしたらしくて。もちろん、僕は見てないんですけど。
家城 2年目の20歳の子なんですけど、声も雰囲気も動きも似てて。もしかしたらすごい技術で似せにいったんじゃないかって(笑)。
押見 僕は深夜稽古があったんですけど、連絡ミスがあって休みだと思ってて。電車もなくなった時間になってから連絡が来てヤバイなと思ってタクシーで行ったんですよ。で、スタッフさんに「タクシー代いくらですか?」って聞かれたんですけど、「いい」って答えたんです。そのとき、"ああ、オレも4~5千円をいいですって言えるようになったか"と誇らしくなりました(笑)。
家城 (スタッフに向かって)絶対花月で払ってくださいね。そうしないと押見の中で"自腹を切った"っていう大義名分ができちゃうんで!
押見 (笑)。
家城 でも、その前日も稽古してて、次の日は全員稽古あるって僕言ったはずなんで、"押見さん稽古あるってわかってたはずだよなぁ"と思いながら、"でも押見さん、休みたかったんじゃないかな~"って(笑)。
押見 いや、そんなことないです。やしろさん、たまに声ちっちゃいんですよね!
家城 でも基本、みんな稽古は休もうとしますよ。
押見 そんなことないよ(笑)!
家城 僕、逆の立場だったら1日でも多く休みになれって思いますもん。
――タイトなスケジュールだと不安だったりしませんか?
家城 いやもうどんなにタイトであろうが、自分が出る側だったらいいんですよ。
――出る側と演出する側では違うと?
家城 演出は責任があるんですよ。劇場サイドと演者との間に入んなきゃいけない。演者は別に、演出家がだらしなかったりとか、たとえば稽古日が3日しかないとすると「いや、やれるわけないじゃないですか」なんて言っても許される。だからなるべく演者のときは「休みになれ」って思ってますね。もう間に合わなくてもいいから休みになれ、って(笑)。
――でも、役者さんの場合は不安に思う方もいるのでは?
いけや たぶん、芸人はなんとかなるって思う人が8割で、2割ぐらいはちゃんとしたい人なんじゃないですかね。役者さんはその数字がもしかしたら逆なのかもしれないですけど。家城さん(の作品)に関しては、昔はなんとなくで舞台に立ってることも結構多かったんです。それでだいぶ度胸がついちゃったんで、変な話、今日ぐらいの段階だったらもう舞台に立てますから。
――明日が初日だったとしても大丈夫ですか。
いけや たぶん飄々としてると思います(笑)。ただ、作品自体がいいものかと言ったら、それはよくないと思うんで、稽古した方がいいと思いますけど。
家城 まぁね。芸人は6~7割の仕上がりでも舞台に立つの、別に怖くないもんね。
いけや 怖くないです。で、やしろさんの作品に関しては、今までいっぱい出てきましたけど、あんまり内容を理解しないでいっちゃった方がいいなってあるときから決めて。だから今回もあんまり理解しないでやってて......。
家城 理解した方がいいよ(笑)。
いけや 理解しないでやった方が面白いんですよ。もちろん、やってほしいと言われたことはちゃんとやりますから、言われた通り。「なんでオレこんなことやんなきゃいけないんだろう」と思いながらやってますけど。
――やしろさんの作品に出演されてきたこれまでの経験から、それがいちばんだと。
いけや 理解しようとすると、よくわかんないところまで理解しなきゃいけなくなるんで、途中でめんどくさくなっちゃうんですよ。
家城 でも、理解した方がいいよ。
全員 (笑)。
――演出家・家城さんは、犬の心のおふたりにとってどんな存在ですか?
押見 僕は長年色々出させてもらってるんで、「コレ大丈夫?」っていう心配があんまりないですね。他の初めての演出家さんとか脚本家さんの作品だと「コレ大丈夫なのかなぁ? ホントはこっちの方がいいんじゃないかなぁ」とか思うことがありますけど、自分が出させてもらって、お客さんの実際の反応を見てきて、実績があるので、そこに変な疑問はないですね。......とはいえ当たり外れもありますけど(笑)。
いけや 僕もホントそうですね。さっきも言いましたけど、「なんでこんなことやるんだろう」っていうのはあるんです。でも実際やってみるとウケるんですよ、絶対に。でもわかんないんですよ、正直(笑)。だからそこは深く知っちゃうとよくないなと思ってて。プレーに徹するというか。
押見 でもホントは理解した方がいいよ(笑)。
――では逆に、演出家・家城さんにとって、犬の心のおふたりはどんな役者さんですか?
家城 僕のやりたいニュアンスをすばやく理解してくれて、今回なんかは特にコントテイストのものが多いんで、ラクですね。これがもしちゃんとしたお芝居だったら話は変わってきますけど。ちゃんと説明して、どういう気持ちで立ってるとか、そういうところからお互い詰めていかなきゃいけないから。たぶん、まだそこまでやったことないよね。
押見 稽古日数が多いとかがあんまりないっすもんね。
家城 そうだね。
押見 間に合わせるのがまず第一、みたいな。よしもとで芸人やっててお芝居やるって、たぶんそういうことの繰り返しなんで、役者さんみたいにガッツリ稽古......っていう機会がそんなにないんです。
家城 ピクニックとかシューレスジョーとかと昨年、ずっと一緒にやってたときはそういう話したんですけどね。稽古が終わった後に稽古場でとか、その後ご飯食べに行ったりしたときにも「なんでここであのセリフなんだ」とか、「この主人公はこういうバックボーンがあって......」とか。
――犬の心のおふたりとはないんですか?
押見 稽古終わりに楽屋で1~2杯飲んだりくらいですかね。
――プライベートではあんまり交流はないんですか?
家城 いけやのほうがあるのかなぁ?
いけや なんだかんだ言って多いですよね。
家城 どっか遠くにみんなで行ったりとか。去年も山梨に行ったときにみんなでロッジに泊まったら、いけやが料理を20品くらい作ってくれて。おいしいんですよ。
いけや 味は自信ありますね。
家城 (押見に向かって)正月掃除してくれたもんね、ウチ。
押見 そうっすね(笑)。
――なんですか、それ?
押見 やしろさんの家で新年会があって。......まぁ、そのくらいですかね、思い出って(笑)。
――家城さんは今後やってみたいなと思うことはありますか? 芝居に限らず、本業でもいいんですけど。
家城 いっぱいありますけど、近々でやってみたいことといえば、もう2年ぐらい考えてるだけで外に出せてない「『あっちむいてホイ』の話」っていうのがあります。それはお芝居なのかマンガ(原作)なのか......。最終的には壮大な映画にしたいんですけど。
――それはまだ、頭の中にだけある物語なんですか?
家城 そうですそうです。でもちょっとだけ短いコントで、それこそいけやと押見にも出てもらったことがあって。
いけや ああ、ありましたね。
やしろ あれめちゃくちゃ長くなったのよ、いろいろ考えてて。
――どんな感じのお話なんですか?
家城 「あっちむいてホイ」が暴力の代わりに世の中を支配してるみたいな話です。前にコントでやってもらったのは「風」っていう流派で。他にも「鳥」とかいろんな流派があって。で、各派閥で代表が1人決まって、何十年に1回、その全派閥の代表が集まって試合があって、勝ったところの流派がいちばんこう、その後の20年間デカい顔ができる、みたいな。
押見 「NARUTO」みたいな話ですね。
家城 「NARUTO」みたいな話です(笑)。ひとつの流派で1作品作りたいですね。で、最後の決勝戦の部分を映画でやりたいです。去年の頭に、チーフマネージャーとか、よしもとの方5人に集まってもらってこの話をして「2016年ぐらいまでには形にしたい」って1時間くらい話したんですけど、全員、下向いてましたね。"コイツなに言ってんだろう?"みたいな感じで(笑)。
押見・いけや (爆笑)。
――じゃあ、実現にはまだ遠そうですか?
家城 いや、自分のがんばり次第で形になっていくと思います!
――では最後に、『ナツテール』をこれから観ようと思っている、よしもとニュースセンターをご覧の方々にメッセージをお願いします。
家城 "夏"と"愛情"を、ちょっとでもお客さんに......"出す"というより、元々、全部お客さんの中にあるものなんですけど。それが2015年の夏の間だけでも心の表面に出てくるような、そういう感じになってほしいので、ちょっと愛情不足、夏不足を感じている方は来てもらえたらいいなと思います。
●公演情報
ナツテール
脚本・演出:家城啓之
出演:犬の心、ピクニック、シューレスジョー、ボーイフレンド、伊藤真奈美、
森公平、山田裕磨(いまさらジャンプ)
会場:神保町花月
日程:7月14日(火)~17日(金)開場19時/開演19時30分
18日(土)開場13時30分/開演14時、開場16時30分/開演17時
19日(日)開場12時30分/開演13時
料金:前売2500円/当日2800円
チケットよしもとにて発売中(なお、7月19日は完売)
※「マンボウトート」(500円)、「神保町銘菓 マンボウまんじゅう」(800円)などの公演記念グッズ販売もあり。
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