国際派女優の工藤夕貴さん、NYで終戦70周年作品『この国の空』を披露
7月18日(土)、アメリカ・ニューヨークのJAPAN SOCIETY(ジャパン・ソサエティ会場:333 East 47th Street New York, NY 10017)にて開催された北米最大規模の日本映画祭『JAPAN CUTS (ジャパン・カッツ) 2015』にて、8月8日(土)公開の映画『この国の空』が上映され、主人公・里子(二階堂ふみ)の母親・蔦枝役を演じた女優の工藤夕貴さん、脚本も務めた荒井晴彦監督、森重晃プロデューサーが登壇しました。
ジャパンカッツ (c) Japan Society
上映前、工藤さんは「日本人の方がたくさん来られているのかと思っていましたが、アメリカ人の方にもたくさん来ていただいて感謝します」とアメリカ滞在時に習得した流暢な英語で舞台挨拶。さらに「一方で日本語を聞きながら皆さんに英語で話すのは、かなり難しいですね(笑)」と付け加えて笑いを誘いました。
ジャパンカッツ (c) Japan Society
工藤さんの挨拶通り、220程の客席は、9割方現地の人でほぼ満席に埋まり、幅広い年齢層で、アメリカでの関心の高さが伺えます。
上映後、大きな拍手に迎えられながら、再び工藤さん、荒井監督、森重プロデューサーが登壇し、一般客を混じえた質疑応答の時間に。
「この役のオファーを引き受けた理由は?」という質問に工藤さんは、「とても簡単なプロセスでした。脚本が素晴らしかったからです」と切り出します。
そして、戦時下、娘が隣に住む既婚の男性へ恋をすることについて、「母•蔦枝の目線として、アメリカ軍が本土上陸すれば、娘は、人としての根源的な喜びも何も知らぬまま戦死してしまうかも知れない、と言う様な非常に不憫な思いがあり、せめて死ぬ前に娘に恋をさせたい、という切なる願いがあったかもしれない。そんな母親としての娘に対する色々な想いを表現することに魅かれました」と自身の役どころについてコメント。
また、「安倍首相が今年の終戦記念日にどうコメントするか?」というシリアスな質問には、自身がメインキャストを務めた米映画『ヒマラヤ杉に降る雪』(1999年)の日系アメリカ人の物語を挙げつつ、「戦争は、すべてを破壊して人々の幸せを奪ってしまう。どうやって国家間の衝突を防ぐのか難しい問題です。私自身は楽観的な人間ですが、もし神がいるとすれば、私の願いは戦争がなくなることです」と平和への願いを口にしました。
荒井監督と森重プロデューサーは、戦後70周年という節目に『この国の空』が公開される経緯や意義について語られた他、ひまわりのシーンの意味や、戦場のシーンがない理由といった質問も。
さらに荒井監督は、本作に登場する茨木のり子さんの詩『わたしが一番きれいだったとき』は、アメリカのフォークシンガーのピート・シーガーさんがメロディをつけて歌っていたとのエピソードで、観客の興味を惹きました。
そして、エンディングシーンについて、「日本の戦後はこれでよかったのかと、お客さんに問いかけたつもりです」と荒井監督が想いを吐露すれば、森重プロデューサーも「戦時下を生きてる人たちが現在もいるっていうことを想像しながら、私達はこの映画を作ってきたつもりです。みなさんに見てもらって、ちょっとでも心に残ってもらえたらうれしいです」との気持ちのこもったメッセージを発し、大きな拍手を浴びながら、終演となりました。
ジャパンカッツ (c) Ayumi Sakamoto
『この国の空』の原作は、芥川賞作家・高井有一による同名小説で、1983年に出版された谷崎潤一郎賞作。
戦争という時代を戦場ではなく、庶民の暮らしを繊細にそしてリアルかつ大胆に描かれた物語です。また、本作は日本を代表する脚本家・荒井晴彦の18年ぶりとなる監督作です。
●『この国の空』
8月8日(土)より、テアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
ⓒ2015「この国の空」製作委員会
オフィシャルHP:kuni-sora.com
配給:ファントム・フィルム、KATSU-do