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2015年11月 7日 (土)

「悩みの多い中高校生にぜひ読んでほしい」 鉄拳『もしも悩みがなかったら』刊行記念インタビュー!

現在、パラパラマンガの制作を中心に活動を行っている鉄拳と、作家・水野敬也の累計35万部を超える大人気コラボレーションシリーズの第3弾、『もしも悩みがなかったら』がこのほど刊行されました。

今作のテーマはズバリ"悩み"。自殺を考えていた「僕」のもとに、不思議な女の子「悩美」が突然現れ、悩みの化身である「悩美」と一緒に過ごすことによって、悩みの解決方法や、悩みとは人生においてどのような存在なのかを教えてくれる物語です。

絵を担当した鉄拳に直撃し、制作過程やお気に入りのシーンについて、また水野さんとのほほえましいエピソードなど、作品にまつわるあれやこれやをたっぷり語ってもらいました!

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――水野さんとの共著は3作目ですが、前作の『あなたの物語』では合宿をして作られたとか。今回はどのような形で一緒に作られたのでしょうか?

「今回も合宿しました。伊豆で。いい小説家が書くような場所で、山本周五郎さんが愛した宿だったそうで」

――"作家がカンヅメになる"っていうシチュエーションそのままの場所ですね。

「ホント、そのままでした。自然に囲まれていて、ウグイスとかも鳴いてて......、ホントになんか、カン違いしてしまいましたね(笑)」

――でも、累計35万部超えの人気シリーズですし、"人気作家"という意味ではカン違いではないのでは?

「確かに、横にちゃんとスタッフさんもいて、ずっと見られていたのでカンヅメ感はありました(笑)。水野さんは違う作品をやりつつ、僕は絵が描けたらすぐ水野さんに見せて『こんな感じでどうですか?』って。その繰り返しですね」

――期間としてはどのくらい?

「1週間です。他の仕事もあるので、なるべく集中して"1週間でできるだろう"と思ってやったんですけど......、結構大変でした。今回、今までのシリーズに比べて急に1.5倍くらいの量になって。絵がめちゃくちゃ多いんですよ。でもわりと計画的に計算しながら進めていって、打ち合わせもちゃんとして、自分の中で確信を得てから描いていったって感じですね」

――水野さんはその間、他のこともされながら......。

「そうですね。隣の部屋で別の作品も書きつつ、時々絵をチェックするという感じで。時々わかんないことがあったら隣の部屋に訪ねていって、『ここの表情ってこんな感じでいいんですかね?』とか聞いて、アドバイスをもらったり」


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ーーなるほど。今回のテーマは"悩み"ですが、鉄拳さん自身もこれまでにさまざまな悩みがあったと思うのですが、どんなことで悩み、どう克服してきたのですか?

「僕はホントに、学生の頃から将来何になろうかってことですごく悩んでいて......。挫折挫折の連続だったんですけど。まず、漫画家さんになるためにはどうしたらいいんだろうと悩んで、美術の先生にもアドバイスをもらったりして漫画を描いて、賞に応募して。その時は賞をもらえたんですよ。でもその後ダメで。これじゃ絶対漫画家になれないなぁと思って。で、僕プロレスも好きだったんで、「じゃあ、僕の夢はプロレスラーだ!」って。そこからどうやってトレーニングをすればプロレスラーになれるだろうって考えて。ただ悩むだけじゃなくて、どうやったらなれるかを考えて、答えを見つけ出して解決させてきましたね。だから、高校生で悩んでる人って多いと思うんですけど、悩んでない人っていうのは何も大事だと思ってなくて、考えないまま成長してしまって、いざ社会に出た時に壁にぶつかっちゃうと思うんです。学生のときって、先生も友達も家族もいて、相談する人がいっぱいいるじゃないですか。相談相手がいっぱいいるうちにたくさん悩んでたくさん解決方法を見つけて自分のプラスにしていった方が絶対いいと思います」

――本書にも「悩みがあるっていうことは、夢があるっていうこと」という一文もありますもんね。

「そこに気づくかどうかなんですよね。ホントに僕、悩んでなかったものに関しては今後悔してることがいっぱいあって。英語とか僕、全然悩んでなかったんですよ。日本に住んでるし、外国人と話すことなんてないし、外国なんて行かねぇよ!と思っていて。今、悩んでます(笑)。だって、海外からの仕事とかって英語で(依頼が)来ますし、せっかく仕事で海外に行ったとしても何もしゃべれないし。聞きたいことも聞けないし、『ああ、あの頃英語で悩んでいれば、今頃解決してたかもしれないな』って思いますね」

――「勉強しとけばよかった」って、大人になってから思いますよね(笑)。

「そうなんですよ~」

――でも結局、今の鉄拳さんって、昔なりたかったものの要素が全部入っているようなお仕事をされてますよね。全部ムダじゃない、というような......。

「あ、そうです。トータルで考えたらよかったなって思ってます。ホントに、プロレスが好きだったからこの格好だし、劇団東俳に入って滑舌が悪いって言われて3カ月で辞めたんですけど(笑)、滑舌が悪いのにこの格好だったら面白いだろうなと思って。なので、ダメだったことが全部わかったんで、欠点を長所として活かす感じでやってきましたね」

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――ちなみに、芸人としての活動は今どんな感じなんですか?

「お笑いよりもパラパラマンガの方が評価が高いと思ってきたんで......。ホントはお笑い芸人だったらお笑いもやらないとダメなんでしょうけど、たぶん脳みそが変わってくるんですよ。こういうストーリーものっていうのは毎回描いてるんで、ストーリーものに関しては頭の回転が早くなってるんですけど、もし今『これをテーマに、"こんな◯◯は××だ"を考えてください』って言われたらどうしよっかなってなっちゃうと思うんです。脳みそが切り替わっちゃってるんで、自信はないですね。お笑いに対しての自信がまったくなくなりました。今舞台に立てって言われたらホントに震えると思います」

――でも、芸人さんとしてネタをやりたいという気持ちはあるんですか?

「ないです(キッパリ)。やんなきゃいけないのかな?ってハテナマークになったままで」

――いや、自分がやりたいことをやって、それを求めている人がいればそれがお笑いじゃなくてもいいんじゃないですか?

「そうですよね!」

――そういえば以前のインタビューで、20時間描いて6時間寝るみたいな生活をしているようなことをおっしゃってましたが、今は?

「今はちゃんと優遇してもらってますね。僕が『このお仕事にはこのくらいの期間が必要です』っていう期間をちょっとゆるめに申告してるので、寝る時間もあるし、休みもあります。あの頃はホントにきつくて、精神的にもまいってたんで......。来る仕事はなんでも引き受けてあげたいっていう気持ちもあったんで、無理してる部分があったんですよね」

――なるほど、それはよかったです! 作品の話に戻るんですが、今回の作品で特に気に入っているシーンはありますか?

「いちばん最初に悩美が登場するシーンですかね。迫力がある感じで、気に入ってます。あと、だんだん悩美がかわいくなっていって、2人で横に並んで歩いているシーンも気に入ってます」

――この作品をいちばん読んでもらいたい人はどんな人ですか?

「やっぱり、いつもおんなじなんですけど、悩みの多い中学生、高校生の人たちですね。あの頃っていうのは人に言えない悩みが多くて、誰にも相談できなかったりするんですけど、この本には"なるべく人に相談しよう"とか書いてあるんで」

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――今回文章を担当している水野さんについてお伺いしたいんですけど、ブログを拝見してみて相当面白い方だなぁと思いまして。最近のブログでは、結構大きな交通事故にあわれたみたいで、でも奇跡的にたいしたケガもなかったっていう。

「そうなんですよ。その時のことを僕聞いたんですけど、事故にあった日、その直前に神懸かりな悟りを開いたんですって。『あ、こうすればいいんだ!』みたいな。そしたら事故にあって。だから『これもなにかの思し召しなんじゃないか』って思ったらしいです」

――へぇ~! なんだかすごい話ですね。

「すごく興味のあることが多くて、興味があったらすぐに行動しちゃう人なんです。なので、一緒に行動していても面白いことにすぐ気づくんですよ。『あの店員さん、ちょっと面白くないですか?』とか。合宿中も、水野さんは毎回外出していろんなお店でゴハンを食べるんです。好奇心のかたまりみたいな人で、観察眼も鋭いんでしょうね。同じものを見ていても、見てるところが違う気がします」

――でも、行動力のある人ってあまり悩みがなさそうな気がするんですが......。

「僕、水野さんの悩み、1個だけ知ってるんですよ。水野さん、ホントはテレビに出たいらしいんです。出て、自分の作品を宣伝したいらしいんですけど、テレビに出るとみんなが『あ~、水野ってこんなヤツかぁ』って思って本が売れなくなるってマネージャーから言われたそうなんです。以前テレビに出たとき、『なんか水野って思ってたのと違った』とか言われたらしくて、そこからテレビ出てないんですって。評価が下がるのはイヤだから出ないようにしてるけど、ホントは出たいんだって言ってて。そんなことを一緒にお風呂に入りながら話しました(笑)。すごく面白いんです、水野さん。元芸人だったらしくて」

――あ、そうなんですか!? どうりで面白いと思いました(笑)。

「"謝り屋"みたいなのを路上でやっていて。人の前で土下座したりするんですけど、僕それを偶然昔ニュースで見たことあって、『お金をもらって街中で土下座をする芸人がいます』みたいな紹介のされ方をしていて、あれ、水野さんだったのかぁって(笑)」

――ちなみに、鉄拳さんの今いちばんの悩みは?

「運動不足ですね。健康診断に行ったらコレステロールの数値がグラフの中に入りきらないぐらいの数値になっちゃってて(笑)。ラジオ体操だけはしてるんですけど、やっぱ汗をかかなきゃいけないんですよね、たぶん。運動が嫌いなわけじゃないんですけど、締切を優先して原稿を先にやってるので、なかなかできなくって......。『原稿が終わったらやろう』って思うんですけど、終わったら超眠くなってるんですよ(笑)」

――わかります~(笑)!

「で、『眠いからメシ食って寝よ』ってなって寝るんですけど、起きたらもう次の原稿を書かなきゃいけない時間になってるんですよね」

――そんなにず~っと描いてたら、時々飽きたりしませんか?

「ストーリーの方は、1カ月ぐらい経つと『新しいものを描きたい!』ってなってきますけど、絵を描くのは飽きないですね。ストーリーは、たとえば週刊誌の漫画家さんだったら週に1度ストーリーを考えると思うんですけど、僕の場合は1日書いても3~4秒分しか描けなかったりするので、1つの作品を1カ月とか2カ月かけて作品を発表するんです。その間にどんどん新しいアイデアが出てくるので、ストーリーに飽きてくるっていうのは少しあります。描いても描いても話が進まないんですよ(笑)」

――原作があるものに絵を描くということの難しさはありますか?

「ニュアンスがつかみきれずにハテナマークのまま描いちゃうことがあって、そういうときはこれでいいのかなぁって思いますね。いいときはいいんですけど、違うって言われてもどこが違うのかわからないときがあって。納得して描けるときはいいんですけど、頭に入って来ないというか、自分の中で納得できない部分があるときは難しいですね。今回登場する"悩美"も、これは3回めか4回めに描いたものなんですよね。最初はもっとお化けみたいな感じで(笑)。化け物っぽくしてたんですけど、水野さんの中ではおかっぱ頭のちょっとかわいらしい女の子のイメージがあったみたいで。最終的には『愛着が持てる方がいいんじゃないですか?』って言われて、なるほどそうだなって思って、納得して描くことができました」

――なるほど。難しいところでもあるけど、誰かと一緒に物を作る醍醐味もそういうところにありそうですね。

「そうですね。新しい発見ができるなといつも思ってます」

――では最後に、これから読む読者の方にメッセージを。

「悩みがある人はこの本を読んで、少し気持ちを楽にしてもらいたいなって思います。悩むことはムダじゃないし、悩みを解決する方法がこの本に書いてあるんで、この本を読んで解決方法を見つけてください!」

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●書籍情報
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『もしも悩みがなかったら』作・水野敬也 画・鉄拳

1180円(税別)

株式会社文響社



【鉄拳】