6月6日(月)、東京国際フォーラムにて、松本人志監督作品第3弾となる『さや侍』のプレミア上映が開催されました。
『さや侍』は、鞘(さや)しか持たない侍・勘十郎と娘・たえが脱藩の罪を免れるために殿さまから課せられた「三十日の業」に挑むという、笑いと切なさと温かみが織り交ぜられた作品です。
イベント前に行われた合同取材には、松本人志監督を始め、主演の野見隆明さん、熊田聖亜さん、國村隼さん、りょうさん、ROLLYさん、柄本時生さん、板尾創路、腹筋善之介が出席しました。
写真撮影の際に持った映画のタイトル入りボードに、興味津々の熊田さん。そんな様子に気が付いた監督は、「表(がどうなっているか)見てないね。違う映画のタイトルやったりしてね」と優しく声をかけます。
今作のオファーを受けた際の心境を訊ねられたROLLYさんは「銃を持った着流しの謎の男というのを聞いて、小躍りしました」とコメント。「私の美しい姿を映画の……」と声を張り上げると、監督から「もういいよ(笑)」とツッコミが入ります。
脚本の段階から参加している板尾は「こんな機会は少ない。数ある出演作の中でも愛着の深い作品になりました」と語ったのですが、「あれ? 質問の意味はこんなんちゃうかったね。……僕も小躍りしました」とROLLYさんの発言に重ねます。
「(オファーを貰った時は)テレビで観ている人に会えるっていう感覚で、嬉しかったですね。(マネージャーには)絶対にやりたいから他の作品はイヤですと言っていた」と静かに語ったのは柄本さん。「何を断ったん?」という板尾の無邪気な質問に、「それが断るものがちょうどなくて、この作品に集中できたんですよ」と応えます。
さらに板尾が「親父(柄本明さん)はなんか言うてた?」と訊ねると、「親父、僕の衣装合わせに付いて来たんですよ」と驚きのエピソードが。柄本明さんは今作で衣装を担当された宮本まさ江さんと親交が深いようで、“宮本さんに会う”という口実で松本監督に会いに来たそうなのです。これを聞いた松本監督は「マジか! 緊張するわ」とビックリ。しかし、残念ながら会えなかったようで「親父、ちょっと凹んでいました」と話す柄本さんでした。
今作で骨殺師を演じた腹筋は「実は引退しようかなと思っていて、仕事を断り続けていたんです。そんな時にオファーが来た。今回の役は整体師の役で、僕は実際に整体師をやっていますし、ほかにも僕と通じるポイントがあって“全部知ってはるわ!”と驚きました」と、監督の洞察力の鋭さに敬意を表します。ですが、監督は「腹筋のDVDを12秒観ただけです」と、飄々と語っていました。
「松本さんに興味があったので、オファーを受けました」と笑いを堪えながら話すりょうさんには、「何がおかしいねん!」と監督からツッコミが。熊田さんは「すごく素敵な役をやらせていただけて、幸せ者だなと思いました!」と、ハキハキと笑顔で応えます。
旧知の仲だという國村さんが「(オファーは)とにかく嬉しかった。お笑いのクリエイターとしても大好き。ファンといってもいい」と話すと、「それは初めて聞いた」と驚いた様子の監督でした。
映画だということも、監督が誰かも一切知らされず、撮影に挑んでいた野見さん。「何も知らされていなかったので、一生懸命やるしかなかった」と笑顔で語ったのですが、最初はかなり大変だったと監督。
「人に追われている演技をしてほしいと助監督からお願いをしてもらったら、この人、“助けてくれー! 殺さないでくれー!”って叫んで……。どうなるんやろう?と不安でした。でも後半は時折ですが、下手な役者じゃ太刀打ちできない顔を見せてくれた」と賞賛の言葉をかけられると、嬉しそうに顔をほころばせた野見さんでした。
監督作品第1弾『大日本人』がハリウッドでリメイクされることに話が及ぶと、「制作には、僕もなんらかのかたちで携わりながらというやり方になります。そうやって世界を絡めながらできることはすごく嬉しいですね」と喜びを語ります。
報道陣から「記事に必ず書いて欲しいことはありますか?」と訊ねられると、しばらく考えて「日本の評価がちょっと低いこと……かな」とコメント。「僕は、映画を壊してやろうというところから始まったんです。それが外国人には受け入れられているけど、僕のことをよく知っている日本ではヘタウマがヘタヘタに見えているのかもしれません。ただ、今作で観方を変えてもらえるかなと思っています」と、今作への自信を語り、合同取材は終了しました。
プレミア上映ではジョン・カビラさん司会の元、作品上映後に登壇した監督と出演者の皆さん。野見さんには大きな笑い声が、監督には一段と大きな拍手が起こります。
まずは「みんなの友達、松ちゃんです。宜しくお願いします!」と語った監督。コメントの続きが待たれていることに気付くと、「うわぁ、どうしようかなぁ」と困りながらも「ここまで辛かったけど、今は良かったなと思っています。本当にありがとうございます」とコメント。
監督から「撮影中は、野見さんを無視してほしい」とお願いされていたという他の出演者の皆さん。「國村さんや伊武(雅刀)さんは寄せ付けないオーラを放っていたけれど、“おはようございます”と声をかけられてもプイッとしなければいけなかったのが辛かった。きっと、性格が悪いなぁと思っていたと思う」とりょうさん。ROLLYさんも「喫煙所では、毎日こっそり逃げてすみませんでした」と頭を下げますが、野見さんは「いやぁ皆さん、徹底されてたんで!」と全く気にしていない様子。
「三十日の業」の撮影では、当日に何をやるのか聞かされることも多かったそうですが、「野見さんのすごいところは明日何をやるのか知らなくても、これがいつ終わるのか知らなくても平気なところ」と監督。板尾も「大人は普通、予定があるから先のことが気になるはずでしょ?」と、野見さんの強靭なハートに感嘆していました。
また、ロカルノ国際映画祭にて「Matsumoto Cinema」と題したトリビュート企画が行われることについては、「世界一デカイ映画祭の、世界一大きなスクリーンで、3作品が上映されるんです。これはもうちょっと自慢してもいいのかな」と謙遜しながら語った監督。「ロカルノはスイスなんですけど、お仕事の都合が合う方は皆さん、一緒にスイスに行けるんですよ」と続けると、目を輝かせ始めた熊田さん。その様子に気付いた監督から「行きたい?」と訊ねられて、「一緒に行きたかった!」とぴょんぴょんと飛び跳ねる姿がキュートでした。
「今、日本は悩んでいます。信じていいはずの大人を、なかなか信じられない現状です。この映画はお父さん世代……中年への応援歌に見えるのですが?」と、カビラさんから訊ねられた監督。
「そうですね。10年前に会った時からずっと、野見さんはスーツの胸ポケットに携帯電話を入れていて。でもその電話って、とっくの昔に解約されているものなんです。携帯電話って野見さんにとってのステイタスで、それが刀の鞘(さや)のように感じたんです。最後のプライドというか、そこにこの映画へのヒントがあったんですよね」。そう静かに語る監督は「疲れているおっちゃんも鞘(さや)は持っているんじゃないかなと思うし、おっさん頑張っとんなと思ってほしい」とエールをおくりました。
「これまで松本作品に触れてこなかった人に観ていただきたい」と今作への思いを語った監督。最後にもう一度メッセージを求められ、「言い残したことはあったかなぁ?……とにかく何か面白いことをどんどん生涯かけてやっていこうと思いますので、宜しくお願いします」と噛み締めるように語ると、会場は大きな拍手に包まれました。
『さや侍』は、6月11日(土)より全国公開されます。ぜひ映画館でご覧ください!
『さや侍』
監督・脚本:松本人志
出演:野見隆明、熊田聖亜、板尾創路、柄本時生/りょう、ROLLY、腹筋善之介
清水柊馬、竹原和生/伊武雅刀/國村隼
配給:松竹
公式サイト:http://www.sayazamurai.com/
6月11日(土)より、全国ロードショー
【松本人志】【板尾創路】【腹筋善之介】