【ライブレポート】吉本百年物語6月公演「舶来上等、どうでっか?」
吉本興業100年の歴史を12本のお芝居で描く「吉本百年物語」。その第3弾となる6月公演「舶来上等、どうでっか?」が、6月12日(火)、なんばグランド花月で初日を迎えました。物語の舞台はなんと東京! 昭和2年、東京の大歓楽街・浅草に「東京花月」をオープンさせた吉本興業。吉本せい・林正之助の実弟である林弘高が、若干21歳という若さで責任者を務める同劇場では、こけら落としの安来節が大盛況です。好奇心旺盛な若い踊り子たちは浅草の華やかさに気もそぞろで、夜遊びや朝帰り、駆け落ち騒動など気苦労が絶えぬなか、「何か新しいことをやりたい!」という情熱にあふれる弘高は、本場・アメリカから大人気のマーカス・ショウを招聘すべく動き出し……。
和服姿の踊り子たちが舞い踊るオープニングは、当時の「東京花月」さながらの華やかさ。そこに中川晃教さん演じる弘高が登場し、人々を魅了する「エンターテインメントの世界」をのびやかな歌声に乗せて語りかけ、観客を一気に昭和初期の「劇場」へと引き込みます。続いて、こけら落としを控えた事務所には、兄である正之助(間寛平)や、助っ人として大阪から呼び寄せられたお茶子のお黒(隅田美保)、調子のいい事務員の吉田(川畑泰史)らが現れ大騒ぎ。ドタバタ劇に大笑いさせられるうち、いよいよ公演の幕が開きました。
一番の見どころは、やはり「歌」と「踊り」。歌手として、ミュージカル俳優として日本有数の実力を誇る中川さんが歌う場面では、会場の皆さんも息を飲んで聴き入ります。踊り子・お糸を演じる林明日香さんも見事な歌声を披露し、会場を大いに沸かせました。さらに、意外なキャストにもミュージカルシーンが用意されており、全編が音楽にあふれたお芝居に仕上がっています。もちろん、NMB48が猛練習の成果を見せる安来節ショーも見逃せません。
中川さんと寛平の演技対決にも注目が集まります。ふたりは兄弟であると同時に、興行師としてはライバルでもある複雑な関係。大阪で新しい漫才の地平を切り拓こうとする兄と競い合うように、大きな夢を見つけ、実現させていく弘高――中川さん演じる心優しくさわやかな青年像は、見る者のハートをがっちりつかんでいました。一方の寛平はお馴染みのギャグを封印し、御大・正之助を重厚に演じます。低い声で迫力満点のセリフ回しを見せつつ、時にはアドリブかと思わせるコミカルな場面も。兄弟が語り合うシーンでは、中川さんが思わず笑ってしまう瞬間もあり、過去2作品とはまた違う、新たな「正之助」像を創り上げていました。
初挑戦と思えないコメディエンヌぶりで舞台を盛り上げたのは隅田。お茶子役なのに、なんと早着替えが5回! 踊り子たちを厳しく、そして時にやさしくサポートするお黒に、会場は笑ったり泣いたり。度肝を抜くゴージャスかつ華麗なシーンも用意されており、お客さんの視線をクギヅケにしていました。新喜劇で鳴らしたキレのあるツッコミでストーリーを盛り上げた川畑は、中川さん、寛平とともに「人生で初」というダンスシーンにも挑戦。こちらも新たな魅力を開花させていました。
大きな夢にかけるふたりの興行師のぶつかりあいを軸に、「劇場」に賭ける人々の生きざまを浮かび上がらせる「音楽劇」。笑いあり、涙ありで見せる青年・弘高の成長記としても見ごたえ十分! これからますます磨かれ、熟成されていく6月公演を見に、ぜひ劇場へ足をお運びください。
吉本百年物語6月公演「舶来上等、どうでっか?」
7月1日(日)まで上演中! ※6月16日(土)・17日(日)・25日(月)は休演
会場:なんばグランド花月
料金:全席指定 1階席7500円 2階席6000円
詳しくはこちらで!
http://www.yoshimoto.co.jp/100th/monogatari/june/