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2012年11月29日 (木)

六代 桂文枝、日本海外特派員協会にてパリ公演へ向けた爆笑スピーチを披露!

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11月29日(木)、東京・日本外国特派員協会にて『六代 桂文枝 日本外国人特派員協会 記者会見』が行なわれました。

今年7月16日に襲名し、なんばグランド花月での公演を皮切りに、全国各地で襲名公演を行なっている六代 桂文枝。12月7日(金)、8日(土)にパリ日本文化会館にて公演するため、本日の会見となりました(なお、チケットはすでに完売)。なお、同所にて会見を行った落語家は、今回の文枝が初めてとのこと。それもあってか、会場には多くの方が集まりました。

みなさんが食事をするなか、登場した六代 桂文枝。司会進行の女性はもちろん英語で文枝の紹介をするわけですが、英語の中に『新婚さんいらっしゃい』という言葉が聞こえた途端、日本人記者からは笑いが起こります。

起立した文枝の前にスピーチ台が設置されると、「こんな状況でしゃべるん、初めてやわ!」と、早速ひとツッコミ。

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「こういうところでしゃべるとき、私は原稿を見たりしないんですね。でも、今日は通訳の都合があるからちょっと書いてほしいと言われまして。今朝、ニューオオタニのレストランで一生懸命考えました。どの辺で(言葉を)切ったらいいかわからないんですけど……どうぞ!」と、通訳の女性へ促し、さらに笑いを誘います。

女性が訳し終わると、またもや「そんな長いことしゃべりました?」とひとツッコミ。会場には大きな笑い声が響き渡りました。

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「みなさま、初めまして。私、六代 桂文枝でございます。その前は高座名といいますか、芸名を桂三枝と言ってまして、46年間、この名前でみなさまにご贔屓賜りました。今年7月16日、私の誕生日に新しく文枝を襲名したわけですが、“新しい文枝”といっても“新聞紙(しんぶんし)”じゃないですよ?」とユーモアを入れつつ、「これ、訳せるかなぁ?」と心配そうです。

「長く三枝を続けておりましたので、(文枝という名が)なかなか認知いただけない。今日もホテルのロビーで会いました大阪から来たご夫婦の奥さんに『三枝さん、ファンです。ずっと前から見てました』って言われたんです。そうしたら、ご主人が『アホ! 三枝さん違うがな』って言うてくれたのがうれしかった。ですが、“いまは六代 桂……なんでしたぁ?”って言われて」と語ると、日本人記者からはドッと笑いが。さらに、通訳を聞いた外国人記者からも大きな笑いが起こり、ホッとした表情を浮かべながらも、「難しいなぁ」と通訳の女性に語りかけます。

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「落語は300年の歴史がありまして、世界でも珍しい伝統芸です。桂文枝の名前は大阪では大きな名前で、五代まで弟子が継いできました。私も随分悩みましたが、伝統芸に生きる者として全うしたいと思い、襲名いたしました。いま、襲名披露公演で全国をまわっています。所属する吉本興業が創業100周年ということもあり、会社も力をいれてくれていまして、今年7月から計120ヵ所をまわる予定となっていますが、このたびパリにも行くことになりました」(文枝)

パリ公演をとても楽しみにしているという文枝。なぜならば、大学の第2言語でフランス語を選択していたからなのだそうです。「メルシーボークー(ありがとう)」と挨拶をすると、またもやクスクスと笑い声が響きます。

フランス語については、「私の考えですよ?」と前置きしながら、「英語は東京弁に似ていて、フランス語は大阪弁に似てると思うんです。“ノー”というのは東京弁の“ダメ!”と響きが似てます。が、フランス語で“ノー”は“ノン”。大阪弁では“違うのん?”“ほんまやのん?”“なんでやのん?”」と言葉遊びを披露する文枝でしたが、「これ、通訳できるんやろうか?」と心配そうです(通訳の方は、理解を得られるように伝えてくれていたようです)。

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パリ公演ではフランス語の落語に挑戦しようと思っていたそうですが、「向こうからの要望で、字幕付きになりました」とのこと。心配なのはやはり言葉だそうで、「しゃべくりが命の落語において、言葉の壁は堅牢(けんろう)です」と表情を引き締めます。

落語の中でも、特に上方落語は言葉遊びが多く、「ここからがまた、非常に通訳が難しくなると思いますが」と気遣いつつも、上方落語の特徴をわかりやすく説明していきます。人情話が多い江戸落語に比べ、滑稽が多い上方落語。この違いには、その土地の異なりが表れているんだそうです。

「東京ではいろんなところから来た人が入り交じっているので、(言葉に頼るというよりは)みんなが共感できるような親子や夫婦の情愛、心と心が触れるような話が多くなった。一方、大阪は大阪の人だけがいる土地だったので、通じやすい言葉でおもしろくする落語が多くなったんだと思います」(文枝)

続いて、商人の町・大阪の成り立ちに添ってユーモアが発達し、“しゃれ言葉”が流行ったこともあげます。

「難しく言うと、“大阪しゃれ言葉”とは同音異義語なんです。日本語は母音が5つしかないからこそ、しゃれが発達したと思うんですけど、しゃれ言葉とは本来、粋でキレイなものなんですよね。

商売人同士、お客さんにわからないように使った隠語として“赤子の行水”っていうのがあります。“どうでっか?”と訊かれたときに使う言葉なんですが、これはつまり、昔の行水はたらいでさせていたことから来ていて。たらいで赤ちゃんが泣いている……“ (儲けが)足らなくて泣いている”という意味だったんです。

また、冷やかしの客という言葉がありますけど、そういうと聞こえが悪いので“夏の蛤”という言い方をするわけです。私の好きな言葉でもあるんですけど、どういう意味かというと“身ぃ腐っても、買いくさらん(身が腐っても、貝殻は腐らない)”ということなんです。日本の言葉遊びというのは昔から行われているもの。たくさんの言葉の中に、海外のジョークとは違うものが入っているんです」(文枝)

文枝の丁寧な説明に、記者からは「ほう!」と感嘆の声があがりますが、通訳の女性はとても大変そうです。身振り手振り交えて、外国人記者のみなさんに説明していきます。

落語家らしく、落語も交えながら熱く語りつづける文枝。

過去の海外公演の経験も踏まえて、パリ公演では228作ある創作落語から『ワニ』と『仲直り』を披露予定とのこと。ネタのセレクトについては、「言葉遊びの少ない、人間の深層心理というか、どなたにもわかってもらえるような落語を選びました。本当は楽しく笑っていただけるようなものをやりたかったんですけど、世界共通の情愛を感じていただけるほうがいいのかなと」と説明。「『ワニ』と『仲直り』でフランスの皆さんを泣かせてこようと思ったのですが、9割は日本のお客さんだと……(笑)。どうしたらええんかなと思いますが、頑張って参ります」と意気込みました。

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質疑応答では、創作落語について訊ねられた文枝。

「300年間受け継がれた古典落語というものがあるけど、始めは誰かがつくった創作落語だったものが、いま古典として残っているわけです。新作落語というのは不利なのでチャレンジする人が少なかったんですが、私はテレビの仕事もしていたり、新しい時代の落語をつくれたもんですから(創作落語づくりを)始めました。これからも続けていこうと思っていますが、基本には古典があり、古典を勉強した上でできた創作落語だと思っています」と語ります。

また、テレビとの笑いの違いについて訊ねられると、「テレビの笑いも違わないと思っていますが、最近の若い人がやってる笑いは少し違うのかなと。我々のやってる落語は笑っていただくだけじゃなくて、何かを感じていただけるようなもの。そういうのは今後もつくっていけたらと思います」と持論を述べます。

「日本の素晴らしい文化を、国はどうやって海外へ伝えていくべきか」という質問には、「日本の生活とか歴史も関係してきますので、難しいかなと思います」と静かに返答しつつも、「大阪の若き元気な市長さまが落語協会に対して減免ということでカットされましたし、素晴らしい芸能である文楽もカットされました。文楽は世界遺産と言われていることもあり、国で守ろうとされているのがうらやましい。大衆の笑い、みなさんに喜んでいただけるような笑いをもっと理解していただきたいですね」と訴えます。

また、「文楽には6人の人間国宝がいらっしゃいますが、落語家は桂米朝師匠ひとりのみ。たくさんの人を毎日喜ばせている芸ですし、歴史もあるので大事にしていただきたいなと思います」と丁寧に言葉を紡ぎつつも、「ただ、我々はあまり偉くならないほうがみなさんに笑っていただけるので、私はこれでいいのかなとも思います」と笑顔を見せました。

「素晴らしい後輩が出てこないのは心配ではないですか?」という質問には、「伝統芸ですので、次の世代を育てるのは我々の仕事。座布団の上で、扇子と手ぬぐいだけを持つシンプルな芸ですが、簡単なようで難しいんです。もちろん次世代の人が出てくるのを祈ってますし、頑張って育てないといけません」と厳しくも力強い言葉を残しました。

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「皆さん、今日は本当に長い間ありがとうございました。質問にちゃんと答えられたのかはわかりませんけど、今日お集りのみなさんは創作落語についても大変よくご存知で、興味を持っていただいたので答えやすかったです。楽しい時間をありがとうございました」と感謝を述べた文枝。

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もちろん、笑いを忘れることはありません。「昔、ハワイのラジオ番組にゲストで出たときに来た質問がいままででいちばん難しかった。今日も難しい質問はありましたけど、答えやすかったですよ。ハワイの質問はなんだったのか。それは“落語と論語はどう違いますか?”……今日はありがとうございました」と話をしっかりオトし、拍手喝采の中、会場をあとにしました。

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【桂文枝】

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