「この曲で晴れ晴れな気持ちに!」 芸能生活35周年を迎えた河内家菊水丸インタビュー
今年、河内音頭を始めてから40年、芸能生活35周年という節目を迎え、新曲『本日は晴天なり』を6月24日(水)にリリースしたばかりの河内家菊水丸。
偶然が重なりあいながら生まれた新曲への思いを中心に、話を伺いました。
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――新曲の『本日は晴天なり』は、誰にとっても元気が出る応援歌のように聞こえました。この曲が生まれる経緯についてお聞かせください。
河内家菊水丸 はい。2年半前に甲状腺がんの手術をしたんですが、当初診断された時には気管切開手術を宣告されたんですね。気管切開をすると気管に穴が空くので声が出なくなる。それであれば手術せずに歌えるところまで歌って、命尽きても仕方がない。プロ30周年は迎えられましたが、その時は次の35周年、まして40周年なんてないと思っていたんです。ところが気管切開手術をせずに取り除いてくれる先生が、日本、しかも大阪警察病院にいたんですね。その病院は僕が50年前に生まれた病院でもあり、非常に不思議な御縁がありまして、手術をして、無事に復帰できました。
――『吉本百年物語』の最終公演、2012年3月のことですね。
菊水丸 そうです。それから2年経ちましたが、何周年とかの節目って普通10年単位じゃないですか。ただ僕にとっては、一旦、諦めかけた35周年なんです。がんの完治宣言というのは5年説、7年説というのがありますけど、40周年を迎えられたら完治宣言ができます。諦めかけた35周年の記念に新曲をリリースすることになり、そこで巡りあったのが、プロデューサーのFace 2 fAKEのお二人でした。
――Face 2 fAKEさんと言えば、EXILEさんやジャニーズのアーティストなど、いわゆるJ-POPの一線で活躍されているサウンドトータルプロデュース・ユニットです。菊水丸さんが直接お会いして、依頼されたんですか?
菊水丸 懇親会というか「一回、とにかく飯食いましょうや」っていう場を作りまして、そんな時に案外ヒントって出るもんですね。エピソードを聞くのが好きなんですけど、Face 2 fAKEのOh!Beさんのおじいさんが、大羽仙外さんという方で、NHKの前身の東京放送局でアナウンサーをしていた、いわば日本初のアナウンサーの一人なんです。そして、マイクテストの際に「本日は晴天なり」という言葉を発したというんですね。
――今でもマイクテストで使うフレーズですね。
菊水丸 使いますよね。マイクを持つことが生業でもあるので、僕も少なからずこの言葉を使ってきました。であれば、「本日は晴天なり」というタイトル、内容の歌にしましょうよと。権利がどうこう言われても、孫がすることに文句はいわれんだろうし(笑)、説得力がありますよね。
――実にしっくりきますよね。歌詞はマシコタツロウさんが担当されてますが。
菊水丸 当初は「菊水丸さんが書いて」って言われたんですけど、僕が書くと、河内音頭という世界から脱することが出来ないので、河内音頭と縁もゆかりもない人で、しかも僕らが思いつかないような、老若男女に伝わるような歌詞を書いてくださる人を紹介してくれませんかとお願いして、Face 2 fAKEさんと一緒に仕事してるマシコタツロウさんをセッティングしてくれて、この歌詞が誕生したわけなんです。これがね、僕には全然発想がない目線の歌詞でしたね。
――J-POPとしても通用する歌詞ですよね。
菊水丸 そうなんです。河内音頭の節回し、空気感を残しつつということを前提に、七・五の文体でお願いしますとだけ言うたんです。七・五調でお願いしても、八・六になったり、字余りが多かったりするんですけど、見事に七・五になっていて、たいしたもんですよ。あんこと呼ばれる2番の途中に入る「東の空からおはようさん~」は、超伝統的な節回しですし。
――もともと河内音頭にある歌詞なんですか?
菊水丸 いいえ、このための歌詞なんです。もともとありそうでしょ?
――確かにそうですよね。話は変わりますが、2011年6月に名誉一門入りし、河内家上り(のぼり)丸も襲名された銀シャリ・鰻さんの話もお聞きしてよろしいですか。
菊水丸 鰻くんは僕と同じ大阪府八尾市の出身で、子供の頃から盆踊りが好きで河内音頭に興味あって、最初からそこそこ歌えてたんですよ。鰻くんが河内音頭をやってくれるのは、実は歴史上ニュースなんです。漫才というスタイルを最初に確立したのは、河内音頭とりの玉子屋円辰(たまごやえんたつ)という方。その円辰が育ったのが、東大阪市池島町という地で、鰻くんはそこと隣接している八尾市上之島。円辰が眠る墓場が遊び場やったって言ってました。
――すごい奇遇ですね。
菊水丸 本人は知りませんでしたけど(笑)。その漫才の元祖の話は、34年前、劇場の楽屋で中田ダイマル・ラケット先生が教えてくださったんですよ。「君、河内音頭やろ? 小さくなる必要はないんや。我々漫才の元祖は、君らの河内音頭取りなんや」と。その時は普通の会話で終わったんですが、のちに文献をあさっていた時、漫才作家の秋田實(みのる)先生が残した著書のなかに、「漫才のルーツは河内音頭である」と出てきて、「これか、ダイラケ先生がおっしゃってたのは!」ってなりましたね。
――漫才の祖と現在の漫才師が、時を超えて河内音頭で繋がったわけですね。
菊水丸 110年前からの歴史ですよ。それを鰻くんに全部説明したんですけど、テレビでその話題をふられて、全然説明できてなかった(笑)。「タマゴなんとか言う人が...」とか(笑)。そこはやっぱりタタタっとしゃべれなアカンね。
――河内音頭とりとしての筋はいかがですか?
菊水丸 う~ん......という感じです(笑)。いろんなイベントで歌ってくれてるみたいですけど、そないに歌い込んでもないでしょう。
――貴重なお話、ありがとうございました。最後に、読者へのメッセージをお願いします。
菊水丸 はい。暗澹たる空気感というか暗いニュースが多いじゃないですか。この歌を聞いて、晴れ晴れな気持ちになっていただきたいのと、生きているうちにはいろんなことありますよと歌ってます。お盆の頃に、里帰りするのか、里帰りしてくるのかわからないですけど、おじいちゃんやおばあちゃん、娘や息子や、同級生や先輩後輩らと踊るなり歌うなりして楽しんでいただきたいですね。とはいえ、お盆の以外のシーズンオフにも聞いていただけますので、日常のなかの一曲に加えてください。
――ヒット曲『カーキン音頭』を知らない若者も増えてきたでしょうから、そんな若者には新鮮に聞こえるでしょうね。
菊水丸 もう20数年前ですから(笑)。こぶしの入った新しい曲という風に受け取ってくれるかもしれませんね。
●CD情報
『本日は晴天なり』
【収録曲】
1.本日は晴天なり
2.本日は晴天なり~It's fine day~
3.本日は晴天なり カラオケ
作詞 マシコタツロウ / 作曲 Face 2 fAKE 河内家菊水丸 / 編曲 Face 2 fAKE
2015.06.24 Release
商品番号:YRCU-90515
本体価格:926円+税
「河内家菊水丸 河内音頭生活40周年+プロ活動35周年記念 盆踊りツアー'2015」の詳細、最新情報は、河内家菊水丸オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/kikusuimaru0214/)にてご確認ください。
【河内家菊水丸】