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2015年7月24日 (金)

又吉直樹×堀本裕樹『芸人と俳人』刊行記念『安全第一句会』

7月12日(土)、東京・B&Bにて『又吉直樹×堀本裕樹「芸人と俳人」刊行記念「安全第一句会」』が開催されました。

集英社より刊行された『芸人と俳人』は、ピース・又吉直樹と気鋭の俳人・堀本裕樹さんによる共著。興味を持ちながらも「俳句をつくるなんて恐ろしくてできない」と語っていた又吉が、堀本さんに弟子入りして2年もの間、俳句を学び、その面白さにどんどん気付いていく過程が描かれています。また、書き下ろしエッセイも収録。お笑いと俳句の思いもよらない共通点も明らかになったりと、俳句について詳しく知らなかった人も入門書として楽しめる1冊となっています。
この日、開催された本イベントは、参加者の皆様より事前に2つのお題「虹」「冷奴」を入れた句を募集して、選句を行なうというもの。イベントスタート前には、皆様から寄せられた俳句の一覧が全員に手渡されました。
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堀本さんから「俳句をやってみたいと思ったきっかけはあったんですか?」と訊ねられた又吉は「元々興味はあったんですけど、難しいと思っていたんです。歌集を買って読んでみてもわかるヤツとわからへんヤツがあって、わかるように、楽しめるようになりたいなと思ったんですよね」と返します。最初は怖いという気持ちがまさっていたそうで、「サッカーでいうオフサイド、バスケットでいうトラベリングみたいな、場集が勝手に決めた御法度みたいなんがあるんじゃないかと思っていたんです。堀本さんでも句会で選ばれへん......みたいなことはあるんですか?」と訊ねると、「ある! ある!」と即答。「あぁ、そうなんですね」と少しホッとした表情を浮かべます。
本イベントタイトルには俳句を学ぶ以前の又吉の心境が反映されているようで、「批評を受けるのは......聞くのは面白いけど、傷つくのは怖いですよね。だから、誰も傷つかない句会をやりたいなと。来たときよりもトーンが落ちずに帰れるのがベストだなと思って、付けました」と説明。聞いていた堀本さんも「怒られるんじゃないかっていうイメージありますよねぇ。"なっとらん!"みたいな」と同調しました。

『芸人と俳人』については、「俳句が怖いと思っている人にオススメの本です」と又吉。「エッセイを読み返して......本になる直前に書いたんですけど、(内容が)怖くなってる」と苦笑。「あとで読み返して、書くもんが多くて追い込まれてたんかなと思った」と語ると、「そんなことないですよ。好評じゃないですか。うまく季語を入れて書かれているし」と優しく誉めてくださる堀本さん。そう言われて、少し気を取り直せたのか、「自分の好きな季語ができたのは、この企画の成果です」としみじみ話します。
「いい本になりましたよね? 装丁はどう思われました?」と訊く又吉に、堀本さんは「サインする時に、手に取ったんですけど、これ......面白いですよね」と返答。「カッコイイから撮ったのか、面白から撮ったのか。覚えてないんですけど、特に堀本さんがおもろいですよね」と告げると、客席からも大きな笑いが。又吉のそんな言葉に、堀本さんも「日銀総裁みたいやなぁって(笑)。ステッキついたの初めてやから、寛平師匠みたいに振り回したろかなと思いましたよ」と軽快に返して、笑いを誘いました。
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堀本さんに俳句を学ぶようになってから、植物に目が留まるようになったと言う又吉。「海外の花って俳句にはしにくいんですかね。下北沢の交番前でネタを考えていたんですけど、木のベンチが湿ってて段々ズボンが濡れてきて。懐かしい感じやなと思ったら、近くに花が咲いてたんです。"俳句が自然と生まれるぞ"と思ったんですけど、その花がポーチュラカっていう名前で。歳時記にも載ってなかったんです」と相談すると、「僕もポーチュラカではつくったことないなぁ」とつぶやいた堀本さんは「ポーチュラカ、尻にジュワッと染み入りて、かな」という即興俳句を。「すごい」と驚く又吉に、「めちゃくちゃ適当ですよ」と笑いました。
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ここからは選句を。又吉、堀本さんそれぞれ8句選んで、1句ずつ選評を行ないました。
選句した理由を語る際、「元々持っている冷奴感」という言葉を使って語る又吉。のちに、選ばれた方々も「私の持っている冷奴感は~」と、その言葉を用いて詠んだ理由を語ります。

又吉の選んだ「言ひさしてまた冷奴崩しをり」に、「あ、これは僕ですね」と言い出す堀本さん。冷静に「へぇ、そうなんや」と返した又吉ですが、「ビックリした~~。選んで良かったと思いましたよ」とホッとした表情を浮かべます。堀本さんは「"言ひさして"を三島由紀夫の小説で読んで、使いたいなと思った。小説を読んで"この言葉で一句つくりたい"っていうつくり方もありますよね」と補足しました。
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休憩後、いよいよ特選の発表が。
「よし! 今のところはねぇ」(堀本さん)「はい、今のところは誰も傷ついてないです」(又吉)と確認し合いながらの発表となったのですが、同じ句を選ぶ2人。まさかのかぶりに、「これはすごい。これまで句会のイベントをいろいろとやってきたけど、ゲストと特選がかぶるのは初めて」と堀本さんも驚きを隠せません。
虹について書かれたその句に、「僕の虹感ですけど」と切り出した又吉。「虹にまつわる思い出があって、中央線に乗っているときに向井に座っていたいかつい男の人にずっと睨まれてて。目ぇ合わさんようにしてたんですけど、その人の隣りに座っていた若い2人組の女の人達が"虹だ!"って言うた瞬間、その人がほわっとそっちのほうを観たんですよ。そうやって、見ようとするほど、虹はラッキーで不思議なものなんですよね」と自身の思い出を、特選の理由に盛り込みました。
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その後は、お客様投票によって人気の高かった句も紹介。それぞれについて、堀本さんと大いに語った又吉は「いろんなタイプの句があって面白かったです。初心者やった僕が堀本さんと同じ句を特選にした......(俳句を詠む力が)伸びてるぜと思った。嬉しかったです」と喜びを露に。「僕も嬉しいです」という堀本さんの言葉に、「つくるほうもがんばらな」と俳句への情熱をいっそう高めつつ、「安全に句会を終えることができました」との言葉で、イベントを締めくくりました。


●書籍情報
芸人と俳人
著者:又吉直樹、堀本裕樹
価格:1300円(税抜)
発刊:集英社


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