二階堂ふみ&工藤夕貴、海老名香葉子と戦争を語る――。映画『この国の空』トークイベント
8月6日(木)、東京・月島ブロードメディア試写室にて、8月8日(土)より全国公開される映画『この国の空』トークイベントが行われ、二階堂ふみさん、工藤夕貴さんのおふたりに加え、特別ゲストとしてエッセイストであり絵本作家でもある海老名香葉子さんが登壇されました。
『この国の空』は、昭和20年、終戦間近の東京が舞台となっており、戦時下の激しい空襲と飢餓が迫る恐怖のなかで懸命に生きる人々を丹念に描いた人間ドラマ。空襲におびえながら母親と暮らす19歳の里子と、妻子を疎開させて1人で暮らす隣人の市毛が互いに惹かれあうさまが描かれており、戦場シーンを敢えて描かず、その時代に生きた庶民の生活に焦点をあてることで、戦争をより身近な問題として捉えられる作品となっています。
今年は戦後70年。その節目の年に上映される本作品は、ただ映画の素晴らしさを伝えるだけでなく、映画を通じて多くの方に戦争について問う、そんな作品でもあります。
70年前の今日(8月6日)、原爆が広島に投下されたこの日に、東京大空襲でご家族6名を亡くされ、孤児となった経験をお持ちの戦争体験者である海老名香葉子さんをゲストに迎え、戦争について経験者の立場からお話しいただくことで、多くの方が戦争について考えるきっかけとなることと思います。
映画の感想を聞かれた海老名さんは「映画としては、戦争ものというより、文芸作品のように捉えました。戦争があるけれども、その中で人間はどうやって生きていくのか、戦時下でどういう感情を持つのかを知らせてくれる作品だと思います。みなさん力演でしたね。特にこの里子ちゃん(二階堂)が素晴らしかった。こういう女優さんがいるんだな、と思いました。工藤さんは化けられましたね(笑)。小さい頃から知っているのでビックリしました。よくぞあのお母さん役をこなした、と感心しました」と絶賛。
二階堂さんは、「脚本を読んだとき、昔の東京弁がとてもきれいだなと思ったので、それを引き立たせるために口調や仕草を作り込もうと思いました」と告白。現場に入る前に昔の小津安二郎作品や成瀬巳喜男作品の映画を観直して、そこに出てくる女優さんの言葉遣いを研究し、撮影に臨んだことを明かします。その言葉遣いについて、海老名さんは「昔の江戸っ子は言葉が乱暴だったと思われがちですけど、それは間違い。二階堂さんが丸みを帯びたきれいな言葉を話されていたので、母とダブりました。そのことが嬉しかったです」と笑顔で話されていました。
劇中にも登場する女流詩人の茨木のり子さんが終戦当時の心情をうたった「わたしが一番きれいだったとき」という詩に中学生の頃出会ったという二階堂さん。そのとき、「これが戦争というものなんだな」と実感したんだそう。本作の脚本を読んだときにも茨木さんの詩を読んだときに近いものを感じたそうで、「私が戦争を題材にした映画に関わるなら自分にとって身近な感覚に近い作品に関われたらいいなと思っていた」と告白、今回の作品でその思いが叶ったと話します。
工藤さんは、里子の母が空襲で焼け出された姉を追い返そうとするシーンについて「人間、本当に切羽詰まると、情があってもあんな行動をとってしまう。ああいうことが戦争の本当」と評した海老名の言葉を受けて、「私もあのエピソードは印象深かったです。女優として、これからもそれぞれの年代で役目を果たし、メッセージを伝えていきたい」と決意を口にしていました。
イベントで自作の詩を朗読することになっていた海老名さん。いざ朗読する段になると「どうしよう。80すぎてるのに、はずかしい(笑)」とはにかまれていたのがとてもチャーミングでした。
●映画情報
『この国の空』
8月8日(土)より、テアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋他、全国ロードショー
©2015「この国の空」製作委員会