『蟻地獄』1巻発売記念 板倉俊之&武村勇治トーク&サイン会
8月2日(日)、東京・ブックファースト新宿店にて『「蟻地獄」1巻発売記念 板倉俊之&武村勇治トーク&サイン会』が開催されました。
『蟻地獄』は、裏カジノでのイカサマを見破られて、期日までに300万円という大金を用意するように迫られた男の運命を描いた物語です。『トリガー』のコミックスでも作画を担当した武村勇治さんとの2度目のタッグとなった今作は、現在、『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社・刊)でも連載中となっています。
「今日はなんの話をしましょう?」(板倉)「『蟻地獄』の話を(笑)」(武村さん)という掛け合いからトークライブはスタート。今作の漫画化は早めに実現したそうで「武村さんが編集部に持ち込んでくれて。『トリガー』の実績があったからだそうですけど」と言う板倉に、「編集部の人に話したら"いっちゃいますかぁ"って。編集長にも確認しますんでって10分後に連絡来て、"やりましょう"って(すぐに連載が決まった)」と笑う武村さん。司会を務めていた担当編集者に、板倉は「そんなに簡単に決めちゃうと、漫画ゴラクの信頼がなくなりますよ!」と指摘して笑いを誘います。
連載まっただ中の今作ということもあって、「週1回のペースで書かないといけないから、武村さんの体調が心配」と声をかけた板倉ですが、自分自身は「僕はすごく寝てます」とキッパリ。「言い訳じゃないんですけど、寝てないと文字(文章)が出て来ないんですよ」と言いつつ、「最高で22時間寝たことがあって。親が途中で脈があるか確かめたって言ってました。そういう実体験も、今作に入れてあります」と語ります。
武村さんは板倉の書いたストーリーについて、「伏線が何重にも張り巡らされている。この人、おかしいんちゃうかって思うくらい(笑)、すごく考えられているなと思う」と感嘆。その言葉に、板倉は「苦労したので......売れて欲しいですね」と呟きます。
今は週1回、ポストに『週刊漫画ゴラク』が届くのが楽しみだと語る板倉。武村さんが「『トリガー』のときは感想のメールをよくくれてましたけど、最近くれないんで不安です」と吐露すると、「メールには法則があるんです」と返答。「新しいキャラクターが出て来たり、話が展開したりしたときに送ってたんですけど、『蟻地獄』は送るタイミングが難しくて。週1で僕からメールが来たらうっとうしいでしょう?」と弁解すると、武村さんも「確かに毎週はいいかな(笑)。じゃあ、四季折々でお願いします」と話します。
「やっぱり、武村さんの描く不良はカッコいいですよね。漫画がモノクロで表現するものだから、シルバーがカッコいい。あと、武村さんの描く横顔が好きなんです。絵がうまい人に漫画にしていただけて、僕は本当にラッキーですよ」と本当に嬉しそうに話す板倉。その言葉に、武村さんは照れくさそうにお礼を言いながらも、「これからもうまく描いていかないとダメですね」と気を引き締めていました。
板倉の「素人くさい質問と思うかもしれないですけど、1週間分を描くのに何時間くらいかかるんですか?」という質問に、武村さんが「どれくらいですかねぇ? 1週分で22ページなんですけど......ネームで5日間くらいかかっているかな。(もっと早くあげないと)ダメなんですけどね」と返答。「こだわってもらってるんですね」と感謝しながら、「『蟻地獄』は1人で将棋をやっているような感覚で書いていったというか。僕は主人公がいちばん嫌な状況を選んでいたんですよ」と自身の執筆について振り返ります。「1ヵ月くらい書けないときもあって......。でも、これを乗り越えたらいいことがあると思って(苦しみながら)考えて書き続けました」と言いつつ、取材に来ていたテレビカメラに向かって「良かったな、又吉! 又吉にはいっぱいおごったなぁ」と、先に芥川賞を受賞した後輩のピース・又吉へ言葉を投げかけると、客席から笑いが起こりました。
SNSをまったくやっていない板倉。「俺以外の人はみんな、(いろんな自分自身のインフォメーションを)発信しているんだと思うと......。『蟻地獄』も武村さんはTwitterで宣伝してくださってるわけですし」と語ると、「もしTwitterをやってくれるなら、僕は嬉しいです」と武村さん。「Twitterを始めた場合、(相方である)堤下さんはフォローしないんですか?」と訊かれると、「しないです。別の意味でフォローしてるんで!」と言い切る板倉。笑ったときに鼻から息を吸い込んでゴッと音を立てたのを、武村さんに「あ、豚っ鼻!」とツッコまれると「堤下だけにね!」と笑っていました。
終盤には、お客様からの質問コーナーも。「創作しているなかでいちばん好きな作業は?」という質問に、板倉が「自分で蒔いた種(伏線)を解消していくときはすごく楽しい」と語ると、武村さんも「一緒です」と同調。「板倉さんの小説を読んで、後半に向かって伏線が回収されていく様はすごい。普通に読んで(伏線を)通過してしまうと、しまった!と思うというか、ネームにしていく中でパズルをはめ込むように落とし込んでいく作業はなんとも言えない達成感があります」と語ります。
「お2人はどれくらいの頻度で打ち合わせされてるんですか?」と訊ねられた2人。「要所要所ですよね。連載の始めとか、2~3ヵ月に1回とかですかね?」と板倉が語れば、「原作が既にあるので、最初の段階で相当な密度で話し合いができているので、毎回の打ち合わせはしないですね」と補足する武村さん。2巻は10月頃発売予定だそうで、武村さんから板倉は「その頃までにTwitterを始めてもらえたら嬉しいですね」と念を押されていました。
●書籍情報
蟻地獄 1巻
作:板倉俊之
画:武村勇治
価格:637円(税込)
発刊:日本文芸社
【板倉俊之】【インパルス】