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2015年11月13日 (金)

朗読CD『火花』リリースを記念して又吉直樹と堤真一さんの対談が実現! 2人の意外な共通点も!?

今年1月に発刊された文芸誌『文學界』に初めて掲載されて話題となった、ピース・又吉直樹初の純文学作『火花』。3月に単行本として発売されると、注目のスピードはさらに加速。第28回三島由紀夫賞は惜しくも逃したものの、7月に発表された第153回芥川賞を、羽田圭介さんの『スクラップ・アンド・ビルド』とともに受賞しました。
受賞後も注目作として発行部数を伸ばしている同著が、朗読CDとして11月11日(水)にリリース。又吉たっての切なる希望を俳優の堤真一さんが快諾してくださり、声を担当。奇跡のコラボレーションが実現しました。

9月某日、都内の収録スタジオを訪問した又吉。収録2日目を迎える堤さんと対談しました。
初対面のふたり。始まる前は「緊張しますね......」を顔をこわばらせていた又吉ですが、堤さんの若かりし頃の体験や行動、役者としての心情に、親近感を覚えた様子。途中、スタジオのブレーカーが落ちて真っ暗になった際には、堤さんが「誰かの誕生日?」と場を和ませてくれたりと、終始和やかな対談となりました。
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――まず堤さん、今回のオファーを受けての率直な気持ちを聞かせてください。

堤 本はあまり読まないんですけど、芥川賞とか直木賞とか受賞した作品はちょこちょこ読むようにしていて。実は『火花』を買いたくてそこら中の本屋を回ったんですけど、売り切れで買えなかったんです。"うわ、今回はすごいな。こんなん初めてやな"と思っていたところに(朗読CDの)話があって。で、「まず本をください」ってお願いして読ませてもらって「是非やりたいな」と思いました。小説、すごく面白かったです。
又吉 ありがとうございます(笑)。『火花』を朗読CDにするってなった時に、「どなたにやってもらいたいですか?」って聞かれたので希望を......。堤真一さんがいけるんやったら、みたいなことを無理やろうなと思いながら第1希望でお願いしたんです。まさかやっていただけるとは。
堤 いやいや、すごく面白いなと思ったのでね。
又吉 堤さんを映画とかで拝見していると、こ、怖さを感じるんですよね。初めて観た時から怖いんです(笑)。
堤 えぇっ!?(笑)
又吉 ふふふ......鬼気迫る雰囲気があるというか。声もお顔も整っていらっしゃるんですけど、同性やからか迫力を感じるというか。『火花』の中の登場人物ふたりも切羽詰まっていて切実なので、僕が怖いと思う人にお願いしたいなと思ったんです。なんていうか、表層的じゃなく、性根の部分で"下手なことを言うたら怒られるな"ということを感じるんですよね、堤さんは。
堤 はははは! 僕、全然怖くないですよ。後輩にもめちゃくちゃ馬鹿にされますし。
又吉 もちろん私生活は別なんでしょうけど、役をやっていらっしゃる時の佇まいに怖さを感じてしまって。

――わかります。つい注目してしまうような、重厚な存在感がありますもんね。

又吉 そうです、そうです。
堤 確かにそういう役が多かったということはあるかもしれないですね。でも、全然ですよ。
又吉 朗読用の台本じゃないものを声に出して読んでいただくというのは......僕も演者であるので難しいのはわかりますし、自分の実力では到底できない。で、できる方を想像して堤さんにお願いしたので、好きなように読んでいただけるのが一番だと思ってます。あの......堤さんの経歴を観させていただくと、最初は舞台から始められていますよね。当時はいわゆる下積みみたいな感じだったんですか? それとも、最初から第一線で活躍していらっしゃったんですか?
堤 僕は元々ジャパンアクションクラブにいて、当時、役者になりたいという気持ちはなかった。ましてや体育会系の人間なんで、舞台すらほとんど観たことがなかったんです。ある時、真田広之さんが(坂東)玉三郎さんと舞台をすることになって。僕は真田さんの下っ端だったので、先輩たちも含めて10人くらいでお手伝いをするために稽古へ行ったんです。最初は"こんなの嫌だ"と思いながら、黒子になって稽古場で遊んでいて。でも実際の明かりとかセットとかが入った舞台に立ったときに、"こんな美しい世界があったんだ!"と驚愕してしまった。で、"俺は一生、舞台に関わって生きていく。絶対この仕事をやっていこう"と思ったんです。当時は裏方的な考えだったんですけど、玉三郎さんが歌舞伎以外の舞台をやる時に呼ばれたり、オーディションを受けさせてもらって外国人演出家の舞台に出たりするようになったんですね。
又吉 やっぱりそういう時期があったんですね。
堤 そうですね。東京に出て来たのは20歳だったんですけど、27歳までは家賃2万円のアパートに住んでいて。四畳半の部屋で、引っ越ししようと思ったらもう少し広いところにはできたかもしれないけど、当時の事務所のマネージャーさんに「それより海外へ行ってお芝居を観たい」と言って、ニューヨークやロンドンに1ヵ月行ってお芝居を観たりしていました。
又吉 僕も少し前まで、風呂なしのアパートに住んでたんです。同じくらいのギャラの人はもう少しいい部屋に住んでたんですけど、僕は家賃をおさえた分、本代やCD代に費やしてました。
堤 そういえば、本、すっごく読んでるんですよね? 1日、何冊くらい読むんですか?
又吉 その頃は月に10~20冊くらい読んでました。とにかく時間があったので、ネタを作って、音楽を聴いて、本を読んで過ごしてました。
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――堤さんもそういう時代を経験されているならば、『火花』の登場人物へ共感した部分もあるんじゃないですか。

堤 そうですね。みなさん、僕は神谷さんタイプだと思うかもしれないけど、実は徳永タイプなんです。徳永くんって自分と先輩のレベルや考え方の違いを、マイナスに考えてしまうでしょう? ああいう気持ち、すごくわかります。若い頃はこれから役者をやっていく才能が自分に元々備わっているのか、今後伸びていくものなのか、そういうことすらわからない。自分には何の要素もないからと、落ち込むことばかりでした。
又吉 経験を積み重ねていって、どこかで心境は変わるんですか?
堤 無理かもしれないと思えば思うほど、くそっていう負けず嫌いの気持ちが出て来て。誰かと比べるということではなく、自分の中でね。僕の場合、人にすごく恵まれていたことも大きかったと思います。20代後半から35歳くらいまで、デヴィッド・ルヴォーっていうイギリス人演出家と舞台をやることができて。初めて長い台詞とか持たせてもらったんですけど、何本やっても毎回毎回けちょんけちょんにやられるんです。"絶対、途中で(役を)下ろされる"と思いながら稽古に通っていて......。
又吉 (笑)そんなに追い込まれてたんですか。
堤 めちゃくちゃ追い込まれてました(笑)。最近はあんまり思わないようにしてますけど、役者を辞めることを考えたこともありました。未だに役者に向いているとは思ってないですね。
又吉 意外です。まさか、そんなことを考えられていたとは。

――だから、堤さんは徳永タイプだと。『火花』を読んでご自身の若かりし頃をいろいろと思い出されたりもしたんじゃないかと思うのですが。

堤 そうですね。雰囲気とかに、近いものを感じました。
又吉 周りには神谷みたいな人もむちゃくちゃ多かったんじゃないですか? 噂で、俳優さんはお酒を飲まれる方も多いと聞きますけれど。
堤 演劇は神谷さんみたいな人、多いですね。昔は舞台を観に来てくれたり、共演者の知り合いだったり、舞台で活躍してた人たちとよく居酒屋で飲んでいて。そうすると、最後は大体ケンカになるんですよ(笑)。「誰だ、お前! お前の芝居は......」とか色々と言われて、最初は僕も「はいはい」って聞いてるんですけど、酔っぱらうと段々腹立って「お前、誰やねん!」って先輩の胸ぐらを掴んでしまって、周りに「やめやめ!」って止められる(笑)。
又吉 はははは!
堤 でも、当時の先輩方はおおらかというか。僕みたいな後輩が突っかかると、逆に嬉しそうにする人が多かったんですよ。

――芸人さんも、神谷タイプは多いですか?

又吉 多いですね。また、神谷は繊細な部分も多少持ってるからこそややこしい人なんですけどね。大胆こそ芸人っていう言い訳は結構まかり通るんですけど、実際は逃げ場がないくらいしっかり準備して来たのにスベると怖いっていうのがある。芸人は元々テキストというものがない場合が多いので、俳優さんとは違うかもしれないですけど、急に来たことに対してどんな対応をするのか。
堤 パッと来て、パッとできる人ってすごいですよね。
又吉 たまにいますよね。
堤 天才的な人っていますからね。僕は準備していくというか、常に怯えてますよ。今はこうやって人とも喋れますけど、20代の頃はあんまり喋れなかった。
又吉 あぁ、そうなんですか。それも意外です。
堤 電車に乗ってると、いつの間にか息を止めていたり......。"なんか苦しいぞ? あ、息止めてた!"って(笑)。
又吉 ははははは!
堤 人と交わることも苦手やったのかもしれないです。

――お話を伺っていると、堤さんと又吉さんはすごく似てるんじゃないかなと感じたんですけれど。

又吉 そう思います。堤さんには大胆さとか強さを感じつつ、繊細さも感じるというか。お話を聞くと、そんな時期があったんやとちょっと嬉しくなります。安心しました。
堤 ただね、もう51歳なんですけど、20代の頃から成長がないなと思ってるんですよ。"俺の思うてた50歳と違うぞ?"ってものすごく不安になります。
又吉 それは職業的に、ということもあるんですかね。
堤 そうなんですかねぇ。毎日この時間に同じところへ行ったら給料をもらえるということでもないし、地位もない。安定することがないから、ずっと不安定なんだと思います。心を落ち着けるためにはどうしたらいいんやろう、ってことばかり考えます。
又吉 へぇ~! やっぱり真剣にお仕事されてる方って、そういうもんなんですね。僕らからすればもうどうなっても大丈夫やろうと思うお笑いの先輩でも、「明日はどうなるかわからん」って危機感を持ってるんです。堤さんもそうなんやなと驚きました。

――芸人さんや俳優さんなどを含め、『火花』は特に創作へ関わっている人はより心に響くだろう小説だと思います。又吉さんの後輩芸人は、「芸人を辞めろ」と言われているように感じたと言っていたそうですが。

又吉 ギリギリで頑張ってる後輩からすれば、"辞めたら楽になるで"って言われているような気がしたんですって。で、劇場で会うたらキレたろうと決めてたらしいんですけど実際会うて、僕が「あぁ、おはよう」って笑顔で声をかけたことでタイミングを逃したらしくて(笑)。あと、芸人を辞めた人からは「ありがとうございます」っていう連絡をすごくもらいました。
堤 あぁ、そうなんですね。僕、『火花』は人生の応援だと思いましたよ。いろんな道を歩いていくっていうのは、僕も体験したことでしたから。ジャパンアクションクラブで一緒だった「役者になりたい」って一生懸命だった仲間はどこに行ったのかわからないですし、その中でも結婚して子供ができたりとか色んな人がいる。僕は役者を続けているけれど、そいつらより勝っているかと言えばそうではないというか。そもそも、そんなふうに物事を考えないですしね。とにかく、この小説に描かれているものは、僕らの世界と似てるなと感じました。......辞めるのは絶対勇気がいるし、一生懸命お笑いをやってきたら、他に潰しはいかんでしょう? 辞めて生活を変えるのは、本当に大変やと思います。
又吉 そうなんです。......ほんまに読み込んでくださったんですね。ちゃんと思いが伝わっていて嬉しいです。
堤 それにしても、まさか最後、神谷がああなってるとはね。
又吉 ははは! アホなんです(笑)。



●CD情報
火花
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商品番号:YRCS-95050~3
価格:2800円(税抜)
収録時間
Disc.1=74分58秒/Disc.2=67分23秒/Disc.3=71分33秒/Disc.4=41分42秒
Ⓒ 2015 吉本興業

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