クリスマスソングが響き渡った、神保町花月のクリスマス公演『月を越えて~オーバー・ザ・タブー~』!! 熱演の模様をリポート!
12月21日(月)~25日(金)の5日間、東京・神保町花月にて 家城啓之(マンボウやしろ)が脚本・演出を務めた『月を越えて~オーバー・ザ・タブー』が上演されました。
出演したのは、ランパンプス、ピクニック、グランジ・五明、シューレスジョー、デッカチャン、シマッシュレコード、ひらきっぱなし、そして、客演に片山萌美というメンバー。38年ぶりの満月のクリスマスにふさわしい内容となった公演の模様をリポートします。
イジメられっ子の高校生・ソウタ(ランパンプス・小林)は、クラスメイトから「お前、あれの写メ、撮って来い」と脅されます。"あれ"とは満月のこと。この世界では"満月を見ると死んでしまう"とされているのです。
そんなソウタを助けるのは、学ランを着た長身のタケル(グランジ・五明)。そして、ソウタを冷たい眼差しで眺めるセイヤ(片山萌美)。家族にも愛されず、孤独を感じながら歌うことだけを生きがいにして、ギターを持ち歩いている少女です。
満月を見ることなど怖くてできないソウタ。対するタケルは「世界を変えるのは勇気だ!」と自らが満月の夜にタブーを冒すことを決め、満月を見た直後に消えてしまいます。演じる五明がTHE BLUE HEARTSの「TRAIN TRAIN」を歌い上げたのですが、心に刺さる迫力でした。
消えてしまったタケルのことで、学校でも大騒ぎに。騒ぎ立てる周りと喪失感を抱くソウタ。そして、セイヤは「私も(満月を)どうしても見たい」と語って自ら満月を見るというタブーを冒し、光の粒になっていなくなってしまいます。その一部始終をみていたソウタもまた後を追うように満月を見上げると......。ここでオープニングVTRが流れるという粋な演出が。
オープニング後はそれまでの暗く重い世界とは一転、明るい世界からスタートします。ソウタが来たのは、月の中のほうにある地球より進んだ世界。ゲーター(ランパンプス・寺内)という男に説明を受け、「満月が見たいと思う好奇心の強い者だけが来ることができる」という場所だと理解するのです。
ゲーターは「この世界は何もかもが自由だ!」と話し、ソウタにこの世界の案内人として鳩型AIであるクルックー(ピクニック)を紹介。このクルックーとともに、この世界で究めたいものを探すことになったソウタ。ちなみに、クルックーの初登場シーンでは、白塗りに全身白の衣装という奇特さに、会場から笑いが漏れました。
一方のセイヤはガイモン(シマッシュレコード・嶋田)というギター弾きのオネエや、サーファンクル(シマッシュレコード・島居)と出会い、歌と向き合っていきます。
そんな2人はこの世界で再会。違う世界でなつかしく話すうちに思いを伝えるソウタですが、速攻で撃沈。その後、ふたりの距離は縮まっているものの、さまざまな理由で振られてしまうのです。
地球で誰からも必要とされていないと感じていたソウタとセイヤ。月の世界でそれぞれに出会い、学び、経験を積んで、少しずつ変わり始めていきます。ただ、何をしても自由であるこの世界にも、たったひとつだけタブーが。それは「この世界から地球に何かを送る」こと。ソウタはそんなタブーを冒してでも地球の貧しい子どもたちへクリスマスの日にクリスマスソングを届けたいと考え、仲間と共に歌いあげるのです。
タブーを冒したことで死刑が宣告されたソウタですが、セイヤは「自らの意思で歌ったのだ」と話し、ともに罰を受けることを決めます。ムーンマスターに「ネクストステージ(冥王星)に行ってもらう」と宣言された2人は手を取り合って、次のステージに向かうのでした。
全編を通して、片山萌美やシマッシュレコードによる生歌&生ギター、シューレスジョーやひらきっぱなし・松永による殺陣ありと、次から次へと楽しみが増していく演出が魅力的。
クリスマス公演らしく、最後はじんわりと心が温かくなるようなストーリーで、ファンタジーでありながら随所に胸に響く言葉があふれた公演。なかでも、最後にソウタが口にする「僕はやっと物語の主人公になれた気がする」という言葉が印象的でした。
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