【ライブレポート】吉本百年物語5月公演「キミとボクから始まった」
吉本興業百年の歴史を、12本の芝居で上演する「吉本百年物語」。その第2弾となる5月公演「キミとボクから始まった」が初日を前にした5月13日(日)に大阪・なんばグランド花月でプレビュー公演を行いました。
今回の舞台は、吉本興業ができて17年経った昭和4年。夫を亡くした吉本せい(海原ともこ)とその弟、林正之助(六角精児)は力を合わせて寄席商いに奮闘し、今や大阪一になろうとしていました。
漫才専門の小屋は、連日大賑わいを見せ、中でもアチャコ(中川家・礼二)と今男(内場勝則)のコンビは、新聞の人気投票で1位になり、飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍ぶり。しかし、正之助はまだまだ満足できていなかった。そんな中、ジャズマンの旗野(西村和彦)から聞いた「ジャズと漫才は似ている」という言葉が引っかかっていた正之助は、新聞で「エンタツ、米国から凱旋帰国」という記事を見つけます。エンタツの帰国にひらめきを感じた正之助は、さっそく、エンタツのもとを訪れ……。
オープニングは、当時、大流行していたダンスホールで、ジャズとダンスによる賑やかなシーンから始まります。ジャズはバンドメンバーによる生演奏で、その音色と色とりどりのライトで劇場内は一気に昭和初期の雰囲気に。ダンスホールの従業員・土井登にふんするなだぎ武は、ストーリーテラーの役も担い、当時の時代背景やエピソードなどを紹介しながら物語を進めていきます。
正之助を演じる六角さんは、バイタリティあふれる正之助をさすがの貫録で熱演。「ガハハハ」と大きな口を開けて笑う姿が正之助に重なります。また、本作が初舞台という西村さんは、スマートなジャズマン役で、正之助に〝ひらめき〟を与える重要なシーンを印象的に演じていました。
そして、今舞台の目玉となる、エンタツ・アチャコを演じるのは板尾創路と中川家・礼二。アメリカ巡業公演の失敗で借金を抱え、芸人を辞めるつもりでいたエンタツを、板尾は内に熱さを秘めたように体現。一方、礼二はお調子者のアチャコをほがらかに全身で表現します。この二人が顔を合わせ、話をすると、すでに会話が漫才のような掛け合いに! 互いに水を得た魚のごとくツッコミとボケを展開し、ここに「しゃべくり漫才」が誕生。
ラストはエンタツ・アチャコの名作漫才「早慶戦」を披露し、客席を〝漫才〟誕生の瞬間に引き込んでいました。
芸達者な出演陣が、笑いを交えながらも丁寧に紡ぐ舞台。エンタツ・アチャコが誕生する物語を、ぜひ期待して見てください!