恒例の「桂文珍独演会」が今年で30回目に!
すっかり夏の風物詩となった「桂文珍独演会」が今年も8月8日にホームグランドのなんばグランド花月で開かれることになり、その発表会見が行われました。年に一度のこの独演会は全国各地を忙しく飛び回る文珍にとってもスペシャルな会。また、今回は1982年のスタート以来、30回目の節目を迎える記念の会となります。
「8月8日にずっと日にちを固定していまして、やり始めて30年になるんだなぁと。あっと言う間の30年でございました。それを記念いたしまして、今やれる噺を」と今年、文珍が選んだのは「ぞろぞろ」「帯久」「三十石」の三席。「若い時は背伸びせなできない噺があます。この年にならないとできない噺もあります。たとえば、『帯久』なんかがそうです。この噺をしたいなと思っていたんですけど、この年になって、やっと何となくできるような気分でございます。『三十石』は文枝系の弟子が継いできた噺。『ぞろぞろ』はちょっと珍しい噺ですが、落語らしい落語で、ようできた噺です。それを再構成しまして、新しく、ちょっと聞きやすく、今風に変えました」と満を持した噺で記念会を彩ります。
記念すべき30回目の会にゲストとして登場するのは2010年に師匠の名を継いで六代目を襲名した三遊亭円楽。若い頃は三遊亭円楽(当時は楽太郎)、桂文珍、春風亭小朝の三人会で全国を回っていたという間柄ということで、「襲名して楽太郎から円楽になりましたので、ゲストにお迎えして刺激を受けようかなという次第でございます」と文珍。
その後の質疑応答で、上方落語の旅ネタ「三十石」についての質問を受けた文珍は「お聞きになる方が船に同乗しているような、だんだんそんな気分になれるとおっしゃって。不思議な噺ですね。舟唄のところで一気に世界が広がるんでしょうね。大事な上方落語の財産なんだということを改めて思うようになりました。“空気”の噺なんですよ。空気っていうのもとても大切で、そういうのもひとつの噺の世界。その『三十石』を初代の文枝が得意にしてやっていたのも何となくわかる気がするんですね」。「ふれあい街歩き」という旅番組でナレーションを担当している文珍は「原稿を読んでるだけなんですけど、なんか行ったような気になるんです。「三十石」もおそらくそういう気になるんでしょうね」としみじみ。
上方落語の大ネタ『帯久』は半年ほど前からやり始めたということで、「やればやるほどおもしろい噺やなぁと思てね。最初は京都会館で1600人くらい入ってはってね、満員で。あんな大きなとこで落語家が点くらいにしか見えないんですけど、物語に入っていただいているからえぇんやなとわかってきて。大きい入れ物やからと言って、大きく動く必要がないんやと気づいたんですよ。こらええわと思って、文珍落語としても一度、引き出しの中に入れさせていただこうかなと思ったんですよ。「帯久」はほんまによう出来た噺で、そんなんもやりたくなったんでしょう。生きてる間にね(笑)」
また、先日、作家の山本一力さんと話していた時のエピソードも披露。「永代橋やら両国橋やら江戸情緒を小説に描いている方にとってスカイツリーはどんなもんなんですって聞いたんですよ。ほんならね、『消してます』と言わはったんですよ。へ? 作家は消せるんや、と思て。それで、その後、一力さんが『落語って省略ですよね』って言いだして。小説家は情景を細かく描いて表現してその世界を描こうとするんですけど、落語の場合はいかに省略ながら世界観を描けるかだと作家さんがおっしゃって。まぁ、元々、私も落語は“引き算の芸や”と思っておったんです。引いていけば引いていくほど、お客さまのイメージがそれを足してくださる。広いやり取りができる芸なんですね。それが分かっていただければいいなと思うような。この年になってそれができるようになりました(笑)」
毎年、回を重ねてきたこの独演会では「前へ、前へ。次、何やろう、今年は何やろうと言うてるうちに気づいたら30年がたっていました」と語る文珍。「落語っていうのはよくできていて、若い時にできても、この年になってできなくなる噺がある。この年だからできる噺もできてきたりするわけですね。そこがおもしろい。今はその時、その時にあうものをやらしていただいて、お客様に楽しんでいただけたら一番いいかなと思います」 日々、進化し続ける“文珍ワールド”。今年30年目の節目の会ではどんな世界が繰り広げられるのか。お見逃しなく!
********************************
「吉例 第三十回桂文珍独演会」
日時:8月8日(水) 19:30開演
会場:なんばグランド花月
料金:前・当4500円(全席指定)
出演:桂文珍/桂珍念 特別ゲスト=三遊亭円楽
お問い合わせ:チケットよしもと 0570-036-912