吉本興業100年の歴史を月替わりの芝居にしてお届けする『吉本百年物語』。その第5弾となる8月公演が8月11日(土)、なんばグランド花月で初日を迎えました。
1912年(明治45年)から始まった物語も日中戦争の時代へ突入。8月公演では、「わらわし隊、大陸をゆく」と題し、日中戦争勃発後、ますます戦況が悪化する中国大陸を舞台に、戦地に笑いを届けた芸人たち「わらわし隊」の物語を上演します。
「わらわし隊」の中心となったのが、昭和初期に人気絶頂を誇った女性芸人・ミスワカナと相方、玉松一郎です。ミスワカナ役は藤林美沙さんから水野真紀さんへ、玉松一郎役は山崎邦正から木村祐一へとそれぞれ7月公演から引き継がれ、当時の芸人たちがいかなる思いで戦地へ赴き笑いを届けたのか、その苦悩や葛藤、覚悟や心意気などを迫真の演技で表してゆきました。
初日舞台を終えた記者会見では、水野真紀さん、木村祐一に加え、林正之助役の山内圭哉、芸人・石田一松役の松尾貴史さん、同じく芸人・神田崋山役の里見まさとが出席、それぞれ胸中を語りました。
「今日は明け方の4時まで稽古をして、本番はどうなるのかハラハラ、ドキドキしていたのですが、スタッフ、キャストの皆さんの“いいものを作ろう、頑張ろう”という気持ちが開幕前に伝わってきて、無事に終えることができてよかったです。舞台は9月2日までですが、私たちが学校の教科書で習ったものではない戦争のお話を一人でも多くの方に観ていただいて、知っていただいて、何かを感じていただけたらいいなと思っています」と水野さん。また、「役作りとして非常に大切なプロセス」と、劇中では披露されることのないミスワカナの漫才も練習していたそうです。
続いて木村は「この舞台で笑いというものの必要性を感じてもらいたいと思います。演じていて改めて、先輩方の御苦労や残して来られた功績をありがたく感じました」と感慨深く答えていました。また、山崎から一郎役に対するアドバイスがあっそうですが、「いろいろ言うてましたけど、最後には“お任せします”言うてましたわ」とのことでした。
松尾さんは、「普段、ただ、楽しんでもらう作品が多くて、僕の仕事は大体、“不謹慎”だと思っています。この〈8月公演〉はある意味ですごく重たいテーマで、その中に入ってみて、僕の“不謹慎”がどこまで世の中の人が認めてくれる“不謹慎”なのかなと思ったりしました。あと、笑いとして“くすぐり”的な部分を入れていますが、そこでは過度にお客さんのリアクションを期待するより、薄紙をはがしていくように、徐々にリラックスして楽しんでいただきたいですね。観終わった後、“平和が素晴らしいな”と思ってもらえたら僕は成功かなと思っておりますので、いつになく神妙に冗談を言わせてもらうようにしています」と率直なご感想を。
一方では、「あと、突然、歌い出すジーンが僕は生理的に…(笑)。自分自身が突然、歌うことに対して、“僕は何なんやろう”と思いながらやっていて。なんとか折り合いをつけながらやっているので、このさじ加減が楽日までにどうなるか、自分でも人体実験している気分です」と笑いを誘っていました。
そして山内は、「今日は初日ですが、しっかり観て楽しんでいただけて、自分が思っていた以上にすごくよかったです。笑わせに行くこと自体が一つのドラマで、そのドラマに負けないよう“ちゃんと舞台で生きていないと”と感じました。あと、どのお芝居でもそうなんですが、僕らの商売は観ている方がいて初めて成立するんだなと改めて、思いましたね」と語っていました。
最後は里見まさと。「8月公演は、12回ある『吉本百年物語』の中でも一番厳しい時代ですが、芝居の方は面白いところもどんどん出てくると思います。8月という、この国にとって非常に大切な月にこの作品を演じるわけですが、このお芝居で、「わらわし隊」という観点で戦争のことを感じていただけたらなと思います」と神妙な面持ちで話しました。
また、吉本興業の戦時中の歴史について改めて尋ねたところ、「先人たちがどんな思いで行かれたかというところまでは、このお芝居が正しいのかどうかわかりませんが、この役をやっていて思うのは、戦場では兵隊さんだけが危険で、慰問団の方は危険じゃないという保証は何もありません。その中で、ワカナさんの前向きな言葉にはすごく胸を打たれます。その後、「わらわし隊」の歌を歌うときはうるうるとしながら歌っています」とのこと。ただ、歌詞はまだ完全には覚えていないそうです。
吉本の100年の歩みはもちろん、時代の変遷とともに変わりゆく演芸の歴史に世の中の流行なども楽しめる『吉本百年物語』。8月公演は9月2日(日)まで上演しています。この機会にぜひ、お楽しみください。
『吉本百年物語 8月公演「わらわし隊、大陸を行く」』
8月11日(土)~9月2日(日)
平日・土曜・祝日:19時開演 日曜:16時開演
※8/13・14・25・26・27休演。
会場:なんばグランド花月
全席指定 1階席6000円 2階席5000円
出演:水野真紀/木村祐一/山内圭哉/松尾貴史/里見まさと/他
【木村祐一】【里見まさと】【山内圭哉】