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2012年9月10日 (月)

【ライブレポート】『元ヤン受験』

学歴芸人がおバカ芸人に勉強を教えていくライブは多々あるが、『元ヤン受験』は違います。たいていのイベントは、教えられる側の芸人がいかにおバカなのかをクローズアップさせるもの。『元ヤン受験』は、若月の兄貴・徹を大学合格させるために行われている“プロジェクト”です。

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 若月は徹と亮の兄弟コンビで、2人とも元暴走族ヘッドを経験し、ヤンチャな時代のエピソードにはことかきません。意見が対立すればお互いまったく譲らず、時折、あきらかに「あ~、こりゃ~マジだ…」とわかるケンカを始めます。ネタ合わせ中ならまだしも、ライブ中にも・・・。

一見すると弟・亮が天然ボケで、兄貴・徹がしっかり者に見えますが、実は徹がかなりの偏屈者。徹の奇行(?)エピソードは書いたらきりがない程です。
昨年、結婚したことが物語る通り一般的感覚を持ち合わせているのは亮だったりします。

若月も今年で芸歴10年目。そこで、徹が一発奮起します。
「亮ちゃんは結婚したし、歌もある・・・。オレもなにかやらなきゃ」
そして“大学生”という肩書を得るために、受験することになりました。歌と結婚に対して、なぜ大学生なのかは、悟りを開いたお釈迦様でもわからないと思いますが、それが元ヤンの生態なのでしょう。

さて、齢30を越えたおっさんの「はじめての受験」は、「はじめてのおつかい」のようなかわいさも、視聴者に媚びるあざとさもなく、ただたちが悪いだけでした。
「英語だけはどうしても勉強したくない!」だの「古文はわからねえ」だの、ダダをこねまくります。

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そこで、一肌脱ぐことになったのが、LLR・福田。
福田は学習院大学を卒業した、今どきの言葉を借りるならば“インテリ芸人”。酒とギャンブルを愛し、目を離せば趣味のカードゲームに興じる・・・と、酔狂を絵にかいたような男ではあるが、時にとんでもない教養をひけらかしてきます。

本人いわく、「高校時代は伊藤よりバカでしたから」。なんでも、高校時代はサッカーばかりしていて、成績はクラスで下から数えた方が早かったらしい。しかし、高校三年の夏休み明けくらいから勉強を始め、「無理だろう」と鼻で笑う教師の予想を覆し、なんと現役で大学に合格。それが事実なら、この男はかなりのキレものです。
 福田は徹のダダをすべてのみ込みました。
「文系は覚えることたくさんあって、勉強している現役のやつらに勝ち目ないよ。理数系なら、公式覚えて、オレの言うとおりに勉強すれば、徹くんでも合格できるよ!」
 こうして、スタートしたのが『元ヤン受験』です。
 学歴芸人がおバカ芸人に勉強を教える場合、その珍解答、迷解答ぶりをお客は笑います。そして、珍解答がでやすい問題が出題。しかし、『元ヤン受験』は三次関数やら微分やらガチの問題しか出題されません。もちろん、そこに笑いはありません。徹が答えられなければ、福田が叱責します。
「なんで、わからないのかなあ? わからないのは徹君だけだよ。ねえみなさん?」と客席に話しかけながら、福田は徹を追いこんでいきます。

悪戦苦闘の末、問題を解いた徹の顔には、じいさんが50m全力疾走してもこんなにならんだろう・・・というほどの疲労の色が見て取れます。しかし、次の瞬間、福田が「OK~! これで大丈夫」と明るく微笑みかけると、徹の顔には血の気が戻り、無邪気に喜びます。徹にとって、福田の「OK~!」はローラの「OK~!」の何十倍もの価値があるに違いありません。

 時折、「人に教えるって、けっこう楽しいな~!先生になろうかな!?」と口にする福田。たしかに、福田には教師の才能があります。しかし、もっと向いている仕事があります。
 
詐欺師です。

独特のリズムを持つしゃべり方。相手をどん底に落としたと思った次の瞬間、救いの手を差しのべる。この男、芸人にならなければ、詐欺師になっていたとしか思えない。それが証拠に、いかにも人をだましそうなキツネ目をしているではないか。

 徹が合格のために必要な事。
それは徹が福田を骨の髄まで信用し、完全にだまされきることです。
『元ヤン受験』の見どころは、だます男とだまされる男のドラマにあります。
受験まであと数か月――詐欺師のお手並み拝見です。

追記
 「高校時代は伊藤よりバカでしたから」という福田の発言の真偽を確かめるべく、伊藤に確認すると、「あ~、俺よりも成績悪かったですね」と答えてくれました。これって、遠まわしに「伊藤は現在進行形でバカ」と言われているんだが・・・。満面の笑みで答えてくれた伊藤に100点さしあげたい。