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2014年1月20日 (月)

『芸人前夜』(ヨシモトブックス)刊行記念 中田敦彦×ラリー遠田『人間前夜』

1月19日(日)、東京・B&Bにて『「芸人前夜」(ヨシモトブックス)刊行記念 中田敦彦×ラリー遠田「人間前夜」』が開催されました。

こちらは、オリエンタルラジオ・中田敦彦の自伝的青春小説『芸人前夜』の出版を記念して行なわれたイベント。対談のお相手として、お笑い評論家のラリー遠田さんが出演しました。

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今回、このようなかたちでの対談となったことを「本が出版されたことに絡めて、取材できたらなと思っていたら、“せっかくだから、イベントにしたほうがいいのでは?”と言われたんです」と説明するラリーさん。
2人が初対面を果たしたのはお笑いムック『コメ旬』での取材現場だったそうですが、中田は「僕、お会いできたのが嬉しすぎて、自分だけ巻くし立てて、終わってからラリーさんの言葉、一切聞かなかったなと思ったんですよ」と笑いながらそのときのことを振り返ります。

2009年にリリースしたDVD『十』を、ラリーさんがその年に観たDVDベスト2位に選んでくれていたことが猛烈に嬉しかったという話から、『十』の面白さについて語り始める2人。「あれ、面白いですよね? いまでもいちばん好きです」と自画自賛する中田に対して、ラリーさんも「あれだけお金のかかったDVDを出せること自体、異常ですしね。あの作品は本当におかしい。当時のテレビでのオリラジのイメージと違ったところも非常によかった」と同調します。
「あの頃は特にイメージがあって、イメージづくりに躍起になっていたというか。そういう流れがある中で、僕も言うことをいかなきゃいけないと思いながら従っていた部分があった。その反動が出たのが、あのDVD。まぁ、アイドル芸人っぽく思われたくないっていうのも、いま思うと恥ずかしいですけどね」と振り返ると、「そんなオリラジさんを興味深く観ていましたよ」とラリーさん。「僕も好きだと言ってくれるのは嬉しいので、興味深くラリーさんのことを観てましたよ!!」と熱く返す中田です。

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「特に、中田さんは芸人の中でも変わった人というか、独特のポジションですよね。それと同時に、僕は親近感が湧くことも多いんですよ。例えば、勉強しすぎ感があるところとか(注:ラリーさんは東京大学卒業)……『アメトーーク!』の勉強しすぎ芸人のとき、睡眠時間を取りたくないから眼帯をして片目ずつ寝ていたと話してましたけど、あれに共感したのは僕だけだと思いますよ。“あぁ、あれね”って。やってました」とさらりと言ってのけるラリーさんに「すげぇ! 共感者だ!」と嬉しそうに驚く中田。「中田さんって、やりすぎちゃってる感じがありますよね。マニュアルから入るところとか」と鋭く指摘されます。

また、「中田さんはSかMかでいうと、Mだと思うんですけど、Sって出しづらくないですか?」とラリーさん。「お笑いも、自虐的なものというかM的なネタって多いですよね。でも、中田さんは“俺すごい”っていうネタをやってる」と分析されると、「ツッコまれるのが嫌いなんですよ」と堰を切ったように語り出す中田。
「というか、ツッコミで叩かれるのが嫌なんですよ。どちらかというと従えたいから、賞賛する人を置いてるんでしょうね。藤森のすごいところは、こんな相方を持ったがゆえに誉める技術が伸びたところ。武勇伝では“あっちゃんカッコいい!”って言っていて、そのあとに“君かわうぃ~ね!”って誉めてる。武勇伝とやってることは変わらないんだけど、周りにそう言われないことに衝撃を受けながら、味さえ変わればいいんだと気付いたんですよ」と相方から得た考えをまくしたてます。
「要は、NIKEというメーカーはずっとスニーカーを出しているじゃないですか。僕らも本来はスニーカーをつくらなきゃいけないところで、ボールとか関連商品をつくってたっていうことなんですよ。だから、以前はタカトシさんやブラマヨさんに漫才で勝とうとしていたけど、いまはそこで勝負してもなぁって。漫才より、今年はちょっと違うことをやりたいと思っているんですよね」と、気持ち新たにしているようです。

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年末に放送された『検索ちゃんネタ祭り2013』(テレビ朝日系)で披露した新ネタ「カリスマ」については、「つくりたいかたちでつくったら、ああなった」と中田。「漫才をつくるときは、それこそマーケティングっぽくつくってたんですけど、カリスマや武勇伝(の発想)は理由なく出てくる。それがすごい。だから、動きたいんでしょうね」と解説すると、「中田さんの中から出て来てるものなんでしょうね。でも、あの中にはいろんなものがミックスされている。歌舞伎みたいなもんかもしれない」とラリーさん。「歌舞伎ですか!?」と驚きながらも「そこまで行きたいですね。でも、そうか。相方が“○○屋ー!”みたいな感じで誉めてくれてるし……歌舞伎も観てみます」と興味津々。さらに「茶道部だったり、戦国武将好きだったりもするから和テイストを活かすと、周囲もしっくり来るかもしれない」とのアドバイスを受け、「やってみます」と真剣に頷いていました。

中田を戦略家だと分析するラリーさんですが、「計算ばかりしていると、どこかで計算が合わなくなることもある。だから、敢えてそうしないエアポケットのようなものをつくるといいんじゃないですか? わざと空白をつくるというアプローチもあるんじゃないかなと。それがないと、観ている人は息苦しく感じる。オリラジは藤森さんでガス抜きしているところはあると思いますよ」との意見。
今回のイベントタイトル『人間前夜』はラリーさんが決めたらしく、「頭で考えて作戦を立て続けると、人間味はなくなる。芸人さんは人間味で笑いを取ってるところってあると思うんですよ。ご結婚もされて、お子さんも産まれて、人間味が出てくるきっかけになることも、最近は多いんじゃないかなと思いますけど」と提案します。

人付き合いに関しても、「先輩とのコミュニティは拡大するのが難しい。いまはタカさんとの付き合いからメリットをいただきつつも、あとは停止。逆に、後輩付き合いをしていこうかなと思って、シソンヌの単独を観に行ったり、今年はいろんな後輩の単独を観に行こうと思ってます」と、常に計画を立てている中田。でも、それは中田軍団をつくるということではないんだとか。
「後輩っていうのはシビア。軍団をつくりたいっていうのは滑稽で、自然にできる感じがいいと思うし、後輩を引き連れていい先輩の条件として“間接的キャスティング権”を持っている人というのがあるんですよ。例えば、タカさんが直接、僕を番組に使ってくれとは言わないでしょうけど、番組スタッフさんが“タカさんと仲がいい人とやらせたい”と思ったときにキャスティングされることってありますよね。そういう権利を持ってる人こそ、後輩を持つ条件を備えていると。だから、いまはつかず離れずです」と現状を説明する中田に、ラリーさんは苦笑しながら「考えすぎです」と告げます。
「他人が、自分と同じように考えていると思うんでしょうけど、自分基準ってこの世の中で正しい姿ではない気がするんですよ。特に、中田さんは変わってる。こんな人ばかりいるわけがない」と正論を言われ、「そうですか? でも、初恋タローさんとかが“3時間、空見てたんよー。仕事ないんよー”って言ってるの聞くと驚くけど、確かにそういうことも大事なのかなとは思う」と認めます。

また、「中田さんは村上春樹さんのように、お金を持っている人のエッセイは読めるけど、お金のない人の駄文は読めないんでしょう?」と指摘するラリーさん。「読めないです。成功者の話は聞きたいですけど」と素直に返す中田に、「それは他人の値踏みをしているにすぎない。でも、人付き合いというのはそうじゃない。例えば、奥さんは中田さんを成功者として評価している訳ではないと思いませんか? 利害関係抜きで、興味を持つ人を増やすことも大事ですよ」とアドバイスします。

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ラリーさん曰く、中田は一つ意見したことに対しての「どうでしょう感がすごい」そうで、本人も「プレゼンするのが好きなんです!」と納得。「作戦を考えるのが好きなんです。喫茶店に入って、今年1年どうしようって考えるのが楽しい。仮説、検証、結果、すべての過程が楽しい。サイエンスしていくのが好きなんです」と嬉しそうに語る中田。ですが、ラリーさんから「計算しないっていう計算を、中田コンピューターに入れてみればいいのでは? 計算するメリットを活かしつつ、そうじゃない部分もあったほうがいいと思う。売れるっていうのは、偶然とか事故的な、どこかで計算を越えていることのほうが多いので、満を持して受け入れましょうよ」と提案されると、「わかりました!」と素直に返答。「急に、案が通りました。2014年どうするか考えていましたけど、全部白紙にして、今年はノープランの1年にします」と断言します。

その一方で、「計算したがるキャラをアピールしてもいいのでは」とも勧めるラリーさん。「芸人さんという仕事は、最終的に自分をさらけ出すことを引き受ける存在だと思うんです。すべてを笑いに変える覚悟を持っている人というか」と話すと、「確かに、人生商売ですよね」と中田。「又吉さんとの対談したときにも話したんですけど、僕は笑われていくしかないのかなと。頑張ってるけど滑稽っていうタイプなんですよね。もちろん、センスがあるとは思われたいです。大喜利だってできるならやりたい。『ダイナマイト関西』だって出たい。でも、違うんですよ。大喜利は苦手なんです。苦手なものを頑張る猶予は、いまの僕にはないと思うんです」と分析します。
そういう中で、『やりすぎ都市伝説』でヒントを得たという中田。
「あの場って長尺喋れるし、あらゆる猛者の前で話術を見せられる機会だと思って、話をつくりあげて練習して仕上がった状態で、楽屋に行くんですよ。で、本番に話して、お客さんとかYOUさんが“おぉ!”っていう顔をしてくれてるのがたまらないんですけど、そんな僕を観ながら東野さんが笑ってるんですよ。最初は“俺、どこで笑われてんの? 一生懸命やってるじゃん”ってビックリしたんですけど、何度もやっていじられているうちに、こういうことかと思ったというか」

「そういう考え方で言うと、中田さんの喋り方は予備校の先生みたいだから、そっちに寄せちゃったほうが面白いのかもしれない。“こいつ、真面目に喋ってるじゃん”っていうことに人間味が出るのかも」とラリーさん。
また、「長文のブログをやりたい」という中田に「中田さんはいまTwitterとかもあまりやってないですけど、発信しないとどういう人かわかってもらえないですからね。どこかで個を打ち出してほしい。名言とかを自分でつくってほしい」とアドバイスすると、中田も「名言は常に言いたいんですよ! ブログを“もっとも水を飲む者はもっとも喉が渇いているとは限らない――中田敦彦”って名言で締める。こいつ、なんなんだっていうブログ、おもしろいですね」とのってきます。
「中田さんの文章は、官僚がつくった書類みたい。小難しい人が小難しい言葉で小難しく書いているブログっていうのは、個性的で面白いと思います」という助言には、「僕、マネージャーに取材を聞いておいてもらって、違和感のある言葉を記録してもらってるんです。“ヒエラルキー”とか“パワーバランス”とか、僕が使ってる横文字リスト、けっこう溜まってるんですよ」と笑うと、客席から「あぁ~~」と納得の声があがります。その反応を受けて、「じゃあ、名言、横文字、四字熟語を使うブログをやるか!」と意気込んでいました。

著書『芸人前夜』の感想について、ラリーさんは「連載当初から読んでいて、超面白いですねと話していた」と絶賛します。
「面白いですよね?」(中田)「面白いです。でも、世間の評価が追いついてない」(ラリーさん)「それは俺のせいなんだろうなぁ」(中田)「でしょうね。(オードリーの)若林さんの本は、“若林力”で売れてますから」(ラリーさん)と分析する2人。一時期、奥さんから“若林(という言葉)禁止令”が出ていたほど、若林さんにコンプレックスを抱いていたという中田ですが、「打ち倒す必要はないんだ」と最近悟ったそうです。

トークの最初のほうで話題にのぼった「カリスマ」ネタについて、ラリーさんから「テレビで新ネタを下ろすのはすごい」と言われると、「動画サイトとかに、“オリラジの新ネタ”って書かれていると、世間には武勇伝の次はこのネタだと思われているんだなと。漫才は省かれているんだなと思ったんですよね。だから、僕としては怖くなかったというか、置きにいった認識なんですよね」と返答。「カリスマのいいところは、あっちゃんと藤森をデフォルメしたもので、ある意味演じているけど、セットや衣装や設定は本人そのままだということ。それはオリジナリティだし、そういう演芸で遊べるのかなと思っています。“カッコ付ける→誉める→踊る”っていうのが、オリラジのレシピなんですよ」と自己分析していました。

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質疑応答で、「芸歴10周年を記念して同期でライブをやらないんですか?」との質問が。
「(はんにゃの)金田がやりたいって言ってましたね。この前、トレンディエンジェルと営業が一緒だったんですけど、トレンディって僕の中で本にも出て来ていない、目をつけてなかったコンビだったんですよ。斉藤さんに関しては、ダンスの授業で踊れるハゲがいるな、くらいだったんですけど、いまやオンバトでチャンピオンになって……感慨深いんですよね」としみじみ語る中田。
最近は同期が好きになっているそうで、「カリスマをやるきっかけも、はんにゃが新潟でやってるパチンコ番組のゲストで出たときに、罰ゲームでNSC時代のネタをやったんです。カリスマって“名言集”っていうコントが元になってるんですけど、その“名言集”をやったら、2人がゲラゲラ笑ってくれた。……同期が教えてくれることって多いんですよね」と、心境の変化を語っていました。

「2時間早いですね。気持ち的には、セラピーが済んで癒し効果を感じている状態です」と大満足な中田。ラリーさんからの「作戦を立てる男の、予測不可能な状態を観たい。やってみると、そういうのも面白いかもしれませんよ」という最後のアドバイスも、「その案も採用させていただきます!」と素直に受け入れていました。


●書籍情報
芸人前夜
著書:中田敦彦
価格:1300円(税抜)
ヨシモトブックス刊


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