八天改メ 七代目月亭文都 襲名披露公演 大千穐楽
2月8日、京都・祇園花月にて『八天改メ 七代目月亭文都 襲名披露公演 大千穐楽』が行われました。
2013年3月に七代目文都を襲名して以来、全国各地で襲名披露公演を行ってきましたが、この祇園花月で遂に大千穐楽。錚々たる顔ぶれで華やかに、メモリアルな高座を盛り上げました。
先陣を切ったのは月亭方正。113年ぶりに復活した文都という大名跡を紹介し、「大千穐楽」についてのうんちくを。舞台人にとって「秋」という字は忌み言葉であるため「穐」の字を使うとか。そこで「へ~」という声が会場から上がると、「僕から学ぶことなんてないと思ってたでしょ?」とどこか得意げです。そして面白かった仕事の話や、インフルエンザに罹患した話題で会場を沸かして、ネタ「看板のピン」を披露。おやっさんからアホの若者まで、登場人物を巧みに演じ分け、ぐっと引き込みました。
お次は月亭八光が登場。高座に上がった途端、「お詫びと訂正を...」と神妙な面持ちです。聞けば、先ほど方正が語った「大千穐楽」のくだりにて、「大(だい)千穐楽」と発音した方正ですが、「だい」ではなく「おお」とのこと。「結果、方正さんから学ぶことはなかったということで...」とひと掴み。八光もマクラはインフルエンザ罹患の話題。実は八光が方正にうつしたそうで、病床から「うー...うつしたな!!」といううめき声から始まる電話があったそうです。そして自身のインフルエンザの顛末を語り、子どもの存在に癒されたというマクラから、ネタ「初天神」へ。口達者な一人息子"寅"と天神祭に出かける父親。親と子のやり取りを生き生きと演じました。
そして師匠の月亭八方。外国人に人気の日本文化といえば...という話題から新作「AKO47」を口演。赤穂浪士の討ち入りを描きつつ、現代の芸能シーンにリンクさせた内容で大爆笑を何度も巻き起こす八方。ですが、クライマックスの討ち入りシーンでは、緊迫感漲る演出で会場を支配。はめものも効果的に、ぐっと会場の意識を集中させて、サゲでまたまた大爆笑。ギャグ盛りだくさんで楽しませました。
続いては今藤政之祐さんが長唄「五条大橋」を披露され、風雅な雰囲気に包みこまれた祇園花月。普段とはまた異なる趣で、大名跡襲名に華を添えてくださいました。
中トリは米朝一門の桂米團治さん。八光とは"落語家御曹司"という共通点があり、その悲喜こもごもを。また、2008年10月に五代目を襲名した米團治さんですが、「いまだに違う読みで呼ばれる」と襲名後のエピソードも。ネタは「掛け取り」、主人公が歌舞伎役者然として語る 場面では、「八天」や「文都」、そして「襲名」などの掛け言葉でおめでたい名調子を朗々と。祝祭感もたっぷり、さらに華やかな雰囲気となりました。
中入りを挟んで、口上を。司会を方正が務め、八光、八方、今いくよ・くるよ、今藤さん、米團治さんがご挨拶、笑いっぱなしの口上となりました。襲名披露の口上では、襲名する者は終始頭を下げたままが常ですが、「知らない方もいらっしゃるので」と文都に頭を上げるように促す八方。ここで改めてご挨拶をさせていただきました。そして八方は、この大名跡の遍歴を語り、「復活することを祈っていました」と、念願かなったりであることに感謝しつつ、「どうぞこれからもご贔屓いただければ」と挨拶しました。
八光は幼いころの思い出を交えながら、おしゃべりが大好きだという文都の人となりを紹介。八光が小学生の頃、文都に車を運転してもらっている時に、おしゃべりに夢中になり過ぎて前方の車に追突しかけたとか。急ブレーキを踏んだ文都、事なきを得たそうですが、後部座席に座っていた八光はそのはずみでフロントガラスに思いっきり頭をぶつけたそうです。その瞬間、文都が「お父さんに言うたらあかんで!!」。この日まで黙っていたとのことで、「男の約束を果たした」と胸を張る八光。慌てる文都の隣で「今、聞いたわ」と八方も目を丸くし、笑いを誘いました。
今藤さんは、文都とのなれ初めを。そして「(文都は)月亭では珍しく形を重んじる方。かつ新作も手掛けられています。中村勘三郎さんが常々、"(古典の)形がある上で新作を作ることが型破りだ"とおっしゃっていました。文都さんにもぜひ、型を破る噺家になってほしいです」とのお言葉をかけられました。
今いくよはラジオ番組でのエピソードを交えながら、「文都さんは真面目で、研究、勉強熱心。市民寄席、区民寄席もコツコツ積み上げながら開かれています。チームワークのよい素敵な月亭一門の中で襲名されて、これからますます上を目指して、頑張ってください」とエールを送り、くるよも「以下同文!」と襲名を祝いました。
米團治さんはご挨拶の前に「"だい"千穐楽なのか、"おお"千穐楽なのか、どっちが正しいのかオヤジに聞きました。そもそも千穐楽に"大"はつけないそうです」とのこと。周囲から「なんや!!」という声が上がりました。そして月亭という亭号が復活した経緯をご紹介し、「文都という大名跡をさらに大きくするのは、お客様のお力添えがあってこそ」と、大阪締めによる手締めをお客様とともに行い、口上を締めました。
襲名披露公演、後半のゲストは今いくよ・くるよで漫才を。言葉遊びの連発に、いくよのギャグなど、大爆笑を何度も巻き起こし、文都の高座へとつなげました。
そしていよいよ大トリ、文都の登場です。一年間、襲名披露公演を行ってきたこと振り返りながら、「疲れました。これがほんとの襲名疲労(披露)」と開口一番。時折、ダジャレを挟みながら、たっぷりのマクラで盛り上げました。そして「わけの分からん男が複数出てくる噺です。これからお話するおことに巻き込まれないように...」といざない、「粗忽長屋」を披露。そそっかしい、アホの男を軽妙に演じて笑いを誘いつつ、摩訶不思議な噺の世界へ惹きこみました。最後は「月亭文都、そして月亭一門を何卒よろしくお願します!」と訴えかけ、にぎにぎしく襲名披露公演を終えました。
今後は「襲名記念落語会として各地を回っていきたい」と文都。「これからも初心を忘れずに...」とも決意する月亭文都をどうぞ応援してください!
月亭八方の動画はこちら ⇒ http://ynn.jp/u/666/
今いくよ・くるよの動画はこちら ⇒ http://ynn.jp/u/239/
月亭方正の動画はこちら ⇒ http://ynn.jp/u/673/
月亭八光の動画はこちら ⇒ http://ynn.jp/u/640/
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