『SLAVA’S SNOWSHOW スラバのスノーショー』創作・演出のスラバ・ポルニン インタビュー
世界30ヶ国以上で500万人以上を動員し、世界7ヶ国15もの国際演劇賞を総なめにしてきた『SLAVA’S SNOWSHOW スラバのスノーショー』が、8月6日(水)より日本上演! セリフは一切なく、動きと表情だけで喜怒哀楽を表現するピエロたちが、観客を巻き込み、客席を蜘蛛の巣で覆い、さらには劇場に吹雪が吹き荒れ…観るだけでなく、誰もが童心に帰って一緒に楽しめる“体感するファンタジーショー”です。その待望の日本公演の見どころを、本作の創作・演出を務める道化師界の巨匠スラバ・ポルニンにうかがいました。
※写真右:スラバ・ポルニンさん
写真左:スラバさんの息子ヴァーニャ・ポルニンさん
――写真撮影の時、咄嗟に近くにあった掃除機を手にしてパフォーマンスをされていましたね。
芝生が緑のカーペットみたいだったから「掃除だ!」と思って。子どもって、何でも自分の遊び道具にするよね? それと同じだよ。子どもは喜びを持って生きている。私は自分の中に子どもの自分がいて、それをとても大切にしているんだ。一番大事なのは、子どもの時に持っていた自分の夢を思い起こして、それを実現していくこと。この『SLAVA’S SNOWSHOW スラバのスノーショー』は、大人が子どもになるために作られたショーなんだ。普段考えていることを全て忘れて、何も考えずまっさらになって欲しいね。そうすれば、心から“楽しい”ということがどういうことなのか知ってもらえると思うよ。
――客席に大きなバルーンが現れたり、幕間にはピエロに水をかけられたり…ショーには子どもに戻れるような演出が随所にあるそうですね。
お客さんが「これは大きなおもちゃだ!」と喜んでもらえるようなものを、たくさん用意しているよ。面白いおもちゃでたくさん誘惑して、「ここまで誘惑されたら断れない」というくらい仕掛けていくから。
以前に、こういうことがあったんだ。おじいさんとおばあさんが孫を連れて来たんだけど、客席に大きなバルーンが出てきた時に、おばあちゃんは孫のことをすっかり忘れて、自分の杖でバルーンをつついて遊んでいたんだ。一方、おじいさんは本当に雪が好きになって、ショーの中で降ってきたありとあらゆる雪をポケットに詰め込んで家に持って帰って遊ぼうとしていた。すっかり子どもになっていたんだ。
――スラバさんご自身は、どんな子どもだったんですか?
今と同じだよ(笑) 森に4階建て家を作ったり、雪で街を作ったり。おもちゃを買ってもらえなかったから、自分でおもちゃを作って遊んでいたんだ。小学校の時には、学校に日本の『風雲たけし城』みたいなものを作って遊んでいたよ。
――『スラバのスノーショー』誕生のきっかけは?
伝統的な“道化の芸”を現代的なものにしていきたかったんだ。そのためにはどうしたらいいかと考え、他のいろいろなジャンルのものを取り入れて作っていったんだ。例えば、シュールリアルスティックな絵画とか、アバンギャルドな演劇とか。そういった現代の芸術の難解なものを道化というシンプルなものに結び付けた。その結果、大人から子どもまで大満足できるショーになったんだ。
――吹雪や蜘蛛の巣など印象的なシーンがたくさんありますが、これはどういう発想から生まれたんですか?
空想するのが大好きなんだ。家族もみんな空想好きで、妻や子どもたちは私より優れた空想家だよ。家族で食事をしているとゆっくり座っていられないんだ。例えば、リンゴがふわっと飛んでいったり、お茶が一人歩きしたり。友人たちが遊びに来くると、さらにめちゃくちゃ(笑) ファンタジーの泉だよ。
――スラバさんは、日本公演を楽しみにされていたそうですね。
ずっと待ち続けてやっと決まったよ。日本が大好きで、家には日本の本がたくさんあるし、庭は日本庭園なんだ。この『スラバのスノーショー』は日本人のために作ったのではなかと思うくらい、日本のみなさんにピッタリのショーだと思うよ。
――世界中を楽しませてきた『スラバのスノーショー』は、訪れる国の文化によってパフォーマンスを変えているそうですが、日本公演ならではの見どころは?
国によって、観客によって、特別なものを見せているよ。例えばイギリスでは控えめな動きで、スペインでは情熱的に、ロシアでは哀みを…という風にね。原則的に2つの相反するアプローチがあるんだ。その国の伝統的なものに従って作ることと、逆にそれを壊してして全く違うものを作ること。日本の人々は繊細でいろいろなことに配慮しているから、作品も繊細さに気を付けながら慎重に作っていく。と同時に、それと正反対のはちゃめちゃなことも起こしていきたいと思っているよ。
――いろんな国の国民性や文化を勉強されているんですね。
本を読むのが大好きで、いろんな物に触れたいんだ。自宅には7つ図書室があって、本屋に行くとスーツケース2つ分の本を買って帰るからものすごい数の本があるよ。例えば“祭り”というテーマだけでも400冊くらい、“驚喜の庭”というテーマでも500冊くらい。アニメーションにも関心があって、いろいろ勉強しているんだ。ヨーロッパで宮崎アニメが知られるようになるかなり前から、私は宮崎駿さんに注目していたんだから。日本の舞踏グループ・山海塾がヨーロッパに来た時も、紹介される前から知っていたよ。
――今、注目している日本の文化は?
庭に夢中になっているね。家には、日本の庭も、日本の道も、日本の橋も、仏教寺院もあるんだ。庭自体がショー、自分の人生そのものもショー。『スノーショー』を作るのと同じように、自分の人生も芸術作品のように生きているよ。
――ショーを作る上で心掛けていることは?
まず自分が心から楽しいこと。そして、自分がすごく楽しいと思ったら、できるだけ多くの人に楽しさを伝えたい。それが全てだね。
――では最後に、ショーを楽しみしているみなさんにメッセージを!
このショーには、絶対に来ちゃいけない! 最悪で、とても見れられないんだから。家族や友達にも「絶対に行かない方がいい」って言っておいてね。私たちだけで楽しむから(笑)
『SLAVA’S SNOWSHOW スラバのスノーショー』は、8月6日(水)~8月17日(日)東京・シアター1010、8月20日(水)~8月24日(日)大阪・シアターBRAVA!にて上演。
詳細はこちら:http://slavasnowshow.jp/