「烏龍パーク」加藤 社会人ラグビーに挑戦
高校時代にラグビーで国体優勝の実績を持つ、お笑いコンビ「烏龍パーク」の加藤康雄が20年ぶりに社会人ラグビーに挑戦し、話題になっています。7月中旬から厳しい練習に取り組み、日本IBMビッグブルー(愛称・BBB)のフランカーとして選手登録され、前代未聞の"現役ラグビー選手芸人"が誕生しました。再開のきっかけは「芸人として何か特技を持つ」ためでしたが、すっかり、昔の情熱もよみがえってきています。
加藤の所属する日本IBMビッグブルーは、過去4シーズン、トップリーグに所属していた名門チーム。現在はトップリーグ2部に相当するトップイーストディビジョン1に所属していますが、将来的な昇格を狙い、今季からはIBMグループの社員だけでなく、広く、他企業の社員や自営業従事者にも選手としての門戸を開いていました。
烏龍パークは10年以上の活動歴があるものの、残念ながら芸人としての知名度はイマイチ。芸人として何か目立つことをしたいと考えていた矢先、BBBが選手を募集している話を知人に聞き、決断。「自分はラグビー芸人になるしかない。現役ラグビー選手の芸人になれたらどうだろう」と芸人としての生き残りもかけ、覚悟を決めました。
7月中旬から練習に参加。最初はランニングについていくのも四苦八苦。練習は週3回。東京都中野区の自宅から千葉県八千代市のグランドまで1時間以上もかけて通ったとか。選手には外国人選手もおり、体格もまったくかないません。それでも、炎天下での厳しい練習に耐え、体重は2~3キロ増。ぶよぶよだった身体は筋肉で引き締まり「つらいし、きついことばっかりだけどラグビーが楽しい」と思うように。」チームでは最年長だが、球拾い、用具の運搬なども率先。チームメートにも親しまれ「本当の仲間ができた」と思えるようになったそうです。
練習に取り組む姿勢が認められ、8月末には正式に選手登録されることが決定。同じラグビー経験者で、公私にわたってかわいがってもらっているブラックマヨネーズの小杉竜一(41)に報告すると「うそやろ。20年ぶり?無理やろ!球を前に投げてしまうで!」とビックリ。相方の橋本武志(38)は「俺に迷惑をかけてもいいけど、チームに迷惑をかけないでほしい」と加藤の挑戦を快く応援することにしました。
チームにとって、9月に開幕したシーズンは3連敗の苦しいスタート。まだ加藤には、練習試合を含めて、出場機会はないものの「ラグビーの認知度を上げるためにも、僕のような人間が身をもって、ラグビーの本当の大変さを少しでも伝えられる役割ができれば」。ユーチューブ「yoshimotoチャンネル」には「本気ラガーマンへの道」と題した番組(https://www.youtube.com/user/oolongparkkato/)を開設し、今後自らの挑戦を伝えていきます。ご期待ください。
以下、加藤へのインタビューになります。
Q:20年越しにラグビーに挑戦してみようと思ったきっかけは?
A:今自分は39歳で、来年は40歳。10年以上、お笑い芸人を続けてきましたが、結局一度も名前が売れることなく、現在に至っている、いわゆる「芸人難民」です。自分の相方は「○○芸人」という枠で、これまで3回「アメトーク」に出させてもらっています。お笑い芸人が溢れている中で、少しでも目立つことをしないと「個」が生まれない。自分の「個」を考えたら、「ラグビー」しかなかった。そんなときに、IBM BBBビッグブルーがクラブチーム化し、メンバー募集をしていることを人づてに聞いたんです。自分ができるラグビーに挑戦して、現役ラグビー選手の芸人になりたいと思いました。人からは、売名行為と言われるかもしれませんが、それでもいいと思っています。自分にとっては、最後のチャンスなんですから。
Q:実際にチームに入って練習に参加されたのはいつごろからなんでしょう?
A:実際に練習をし始めたのは、今年の7月中旬からです。コーチからは、選手登録枠が8月の末に3枠追加分があるから、能力や実力というよりも、ラグビーに対する気持ちがきちんとあるかどうかをそれまでに判断するといわれました。そりゃいきなり芸人が言ったら、そうなりますよね。当たり前です。そこから週3回、皆さんと一緒に練習したり、試合のお手伝いをしたり、自分ができるだけのことをさせていただきました。もちろん20年ぶりですから、まったく体は動きません!最初はランニングだけでもヒイヒイ言っていましたよ。最初はね、無理かもしれんなって思っていたんです。これで、選手登録してもらえんかったら、それはそれでええわって思っていたところもあったんですが、いざ練習を始めてみると楽しくて。ラグビーが楽しくて仕方なくてね! つらいし、痛いし、きついことばっかりですが、ものすごく楽しんでいます。
Q:正式登録が発表されたときの気持ちは?
Aホンマにうれしかったです。最初に「お笑い芸人だとか、そういうことはまったく意識せず、あなた自身のことを見ますよ」とコーチからはっきりと言われたんです。一人の人間として、自分のラグビーへの思いを認めてもらったことはとてもうれしかったです。最近は徐々にタックルなどのコンタクトにも参加し始めました。チームの皆さんも、ロッカーを用意してくださったり、練習着をくれたり、スパイクをくださったり、少しずつ選手として認めていただいてもらっていることがうれしいですね。
Q:チームメイトとの関係は?
A:正直、お笑い芸人の世界は、全員がライバル。「仲間」なんていないんですよ。誰かがコンビ解散するって言っていても、心のどこかでガッツポーズをしている自分がいる。そんな世界なんです。でもラグビーってすごくピュアな仲間なんですよね。みんなで、同じ目標を目指して一緒に頑張っている分、お笑いとはまったく違う、本当の仲間だと思います。ぼくがチームに入って1か月くらいしたころに、スリッパを忘れてしまって困っていたんです。そしたら、チームメイトの方が「加藤さん、これ使ってください」って言ってくれて。「いいです、大丈夫です!」って言ってたら、その人が「いいですよ。もう仲間なんだから」って、ふっと言ってくれてね。その言葉に、ものすごく照れてしまいました。BBBの皆さんは、ほんまに優しい方ばかりで。僕は16歳のときにオカンを亡くして、オトンも借金まみれで蒸発したまま今どこにいるかも分かりません。兄弟もおらんし、ずっと一人やったんです。だから「あそこにいったら誰かがおるんや」っていう感覚が今までなかったから、すごく安心するというか、ほっとする感覚があるのと同時に、正直、まだちょっと照れますね。
Q:いまの一番の目標は?
A:自分がこのチームを辞める時に「あいつがおって、ちょっとおもろかったな」ってチームのみんなに思ってもらえることが目標です。