染弥改メ 三代目林家菊丸襲名披露公演(東京公演)
1月21日(水)、東京・国立劇場小劇場にて、『染弥改メ 三代目林家菊丸襲名披露公演』が行われました。
上方落語の大名跡"林家菊丸"が115年ぶりに復活するとあり、あいにくの雨模様でしたが、昨年9月の大阪公演に引き続き、会場には大勢の来場者が足を運びました。
最初に高座へ上がったのは、菊丸の弟弟子・林家染左。
小学校への慰問で落語をしたエピソードのまくらに続き、おめでたい『つる』を披露しました。
続いては兄弟子・林家染二。
染丸一門の紹介を兼ねたまくらから、『いらち俥』を披露し、老いた車屋さんの濃いキャラで笑いを誘います。
次は、笑福亭鶴瓶さん。
演目の『長屋の傘』は、自身の体験談を元にした創作落語で、師匠の笑福亭松鶴や小松、松喬といった兄弟弟子の爆笑エピソードが矢継ぎ早に飛び出しました。
中トリは桂文珍です。
鶴瓶さんや桂文枝と間違われたり、目の前でスマートフォンを使い「大阪の落語家 メガネ」で検索されるといった逸話のまくらから入り、最新の時事ネタを随所に混じえた『花見酒』を披露。
中入りを挟んで、豪華な後ろ幕を背に口上が始まります。
上方の林家も江戸の林家に祖があるとして、まずは林家正蔵さんから。
これまでの公演を通じ、「誠実で明るくて、これからの落語会を背負って立つ一人だなということがよくわかりました」と菊丸について語ると、三遊亭円楽、林家木久扇・木久蔵の襲名披露を引き合いに出して笑いを誘った後、「またひとつ戻って嬉しい大名跡 ご贔屓お引き立ていっぱい申し上げます」と締めます。
二人目の口上は、進行役の染二から、各方面での活躍で「残すところは大河ドラマの主演だけ」との紹介を受けた笑福亭鶴瓶さん。
菊丸について「そんなに知らないんです」と言いながらも、弟子がお世話になっているという感謝を伝え、さらには"兄さん"と慕う染丸の体調を気遣います。
そして、「ロケット発射で"ドゥーッ!"といかないと、がんばってくださいね」と擬音を混じえてエールを送りました。
続いては、桂文珍。
染丸の弟子だけに「なんとか丸がええと思ってまして、ネイマールかなんかにしたらどうやと言ったら、背骨を折れたらいかんということで」といったくすぐりを口にします。
その後、アパートの部屋が隣同士だったという染丸との修行時代の思い出話などを明かし、「手を引いて引き上げていく山登り」と締めくくりました。
続いては、師匠の林家染丸。
脳梗塞を患い、リハビリ中の染丸ですが、染二から「ひとことだけご挨拶」との紹介を受けると「よっ!」と元気に挨拶します。
改めて「ええ男でございます。真面目で私のところに20年いてます。40歳、男盛りでございます。今後ともよろしくお願い申し上げます」と深々と頭を下げるのでした。
口上の最後は手締め。
発声を任された文珍は「菊丸さんは大学の落研の後輩でございます。本来、私のところへ来ないかんのですが...」とひと笑い起こしたところで、"大阪締め"と呼ばれる手締めを会場全体で行いました。
そうした引き締まったなかにも和やかさが漂った口上に続いては、柳貴家小雪さんによる大神楽。
バチや毬、皿、ミニチュアのハシゴといった道具を使った華やかな芸で菊丸の船出をお祝いします。
続いての林家正蔵さんは、小噺で「今日はいいお客さんですね(笑)」と反応を確認した後、「おめでたいことがあると、子供の噺とか旅の噺をいたします」として披露したのが『鼓ヶ滝』。
歌を詠むために滝を訪れる噺で、立て続けに歌を手直しされる描写に笑い声が絶えません。
そして、拍手と掛け声を浴びながら三代目林家菊丸の登場です。
上方落語ならではの見台、膝隠し、小拍子の説明をした後、
インタビューを受ける北の湖のものまねに続いて、人情噺『幸助餅』へ。
大阪の新町を舞台に、大関へと昇格した力士・雷五郎吉とそのタニマチだった幸助という2人の男の物語を情感たっぷりに演じました。
オチが決まると、お囃子が流れるとともに緞帳が下がるなか、名入りの座布団から降り、頭を下げて感謝の気持ちを表す菊丸。
こうして拍手喝采を浴びながら、記念すべき東京での襲名披露公演は終了しました。
『染弥改メ三代目林家菊丸襲名披露公演』は、この後、出身地でもある三重を始め、福岡、兵庫、山口と続きます。
三代目林家菊丸の活躍にご期待ください。
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