二階堂ふみさん、長谷川博己さんらが語る平和への想い。 『この国の空』初日舞台挨拶
8月8日(土)、東京・テアトル新宿にて、『この国の空』が封切りを迎え、上映後の舞台挨拶に、二階堂ふみさん、長谷川博己さん、工藤夕貴さん、荒井晴彦監督が登壇しました。
満員の客席から拍手で迎えられた4人。
まず、二階堂さんが「ようやくみなさんにこうやって劇場でお披露目することが出来て、とてもうれしいです」と初日の喜びを口にすると、長谷川さんは「念願のテアトル新宿さんに登壇できたことが一番うれしいです。昔、ここでバイトしたいなって真剣に考えたことがあったので(笑)」といったエピソードで和ませます。
18年ぶりにメガホンを取り、テアトル新宿の舞台挨拶もそれ以来という荒井監督は、「戦争を扱ってますけど、誰も死なないし、兵隊も出てこない、地味な映画が出来ただけで奇跡だと思ってます。お客さんが『進撃の巨人』ほどじゃなくても、見に来て欲しい(笑)。いわゆる反戦映画っぽくないので、安倍政権がああいうことやるんなら、もうちょっと過激な反戦映画にすればよかったと思うけど、ただただご飯を食べてるだけなので...」とジョークを混じえながら、作品に込めた想いを吐露。
作品を見て、長谷川さんは「昔のいい映画の雰囲気がある」との感想を持ったそうですが、と同時にラストシーンについて触れ、「自分の尊敬する森雅之さんには到底ダメだなと思って、もっともっと修行が足りないなと思いました」と戦後間もない頃から活躍した名優の名前を挙げて、省みます。
さらに長谷川さんは「もしこの映画があの時代にやってたら、森さんが配役されたのでは?」と荒井監督に訊くと、肯定しつつ「長谷川が悪いってわけじゃないよ」と即答。
この話題に工藤さんは、「(長谷川さん扮する市毛は)充分いやらしくて悪かったと思いますよ(笑)」と述べます。
物語のその後について話題が移ると、「長谷川君は多分、すぐ引っ越してると思う」とは荒井監督の弁ですが、「長谷川じゃないですよ、市毛ですよ(笑)」と長谷川さんがツッコみ、ドッと沸く場内。
その市毛に思いを寄せる主演の里子役の二階堂さんは、市毛の引越し先に里子がついて行き、「病気になって死んじゃうんですかね。『浮雲』ですね」と、前記した森雅之さんも出演する成瀬巳喜男監督作品を挙げながら、「昔の名作を思い出させるようなシーンに出来たんじゃないかな」と満足気な表情を見せます。
その後、英語の勉強のためにと、二階堂さんが工藤さんと衣装のモンペ姿のままで英語で会話をしていたことや、二階堂さんが撮影用の食事の残り物をタッパーに詰めて楽屋で食べていたといった撮影秘話が続出。
そうしたなか、工藤さんは、食材を無駄なく食べていた当時の料理に触れ、「食べ物に対しても感謝がなくなってるけど、平和に関しても私たちは感謝が少ないような気がして、いろんな意味でいろんなものに感謝をする気持ちをもう一度取り戻さないといけないと感じました」と平和への想いを口にします。
最後にメッセージを問われた荒井監督は、「反戦映画は戦後70年の間にいっぱいありますけど、結局、映画じゃなかなか世の中変わらないので、映画だから対映画で戦うしかないと思います。具体的な名前を出すとまずいので言いませんが、今日封切りの映画です(笑)」とユーモアたっぷり。
とは言いながらも、本作について戦時中の暮らしとしては非国民だとの感想を引き合いに、「国が間違った時は非国民の方が正しいと思います。今またこの国は間違いそうになっているので、僕は非国民になろうと思ってます」との強烈なメッセージも残しました。
その発言を緩和させるかのように、二階堂さんは「家族や大事な人と改めて生きるとは何かとか少しでも思ったり、話したりしていただければ、とてもうれしいなと思います」と来場者に優しく語りかけたところで、終演を迎えました。
『この国の空』は、本日8月8日(土)より、テアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか、全国ロードショー。
詳細は、公式サイト(http://kuni-sora.com/)でご確認ください。
(c)2015「この国の空」製作委員会