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2014年2月 5日 (水)

芸人としての生き様は“幸せまでのドキュメンタリー”!? 相席スタートロングインタビュー

コンビ結成わずかながら、昨年の『THE MANZAI2013』において認定漫才師、さらにワイルドカードにも進出した男女コンビ「相席スタート」。女性ならではの“モテたい欲”溢れんばかりの心情を赤裸々に吐露する山﨑ケイと、正直すぎる男心の声をついつい口にしてしまう山添寛との掛け合いは、これまでに類を見なかった男女のしゃべくり漫才として注目を集めています。
先日行われた『彩〜irodori〜East Championship』では8位となり、3月からの新システムで「〜Member」入り。また、今週2月7日(金)にはコンビ初のトークライブ開催とますます勢いを増す相席スタートに、『彩〜irodori〜East〜』や初のトークライブ、またコンビ結成や2人の関係性について、多いに語ってもらいました!

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——1月25日に、3月からスタートする新たな『彩~irodori~East~』のランキングを決定する『彩~irodori~Championship』が開催されました。相席スタートさんは「~Member」からのスタートが決定しましたが、当日の戦いを振り返っての心境は?

山﨑:私は良かったなという感じですね。これは男と女の違いじゃないかなと思うんですけど、そこまで賞レースとか戦いに興味がないというか。男の人はわかりやすい称号みたいなものが欲しいんでしょうけど。
山添:そうですね。お笑い自体、数字では評価されにくいものじゃないですか。ああいう大会で結果を残したら努力が報われた感じが実感できるから、僕はちょっとでも上に行きたかったですけどね。
山﨑:悔しかった?
山添:自分らのネタとあの日の出来栄えを考えたら、直後は“よう(Memberまで)いけたな”って感じでしたけど、やっぱり良く考えたら悔しいですよね。
山﨑:そうなんだ。でも、一昨年は『ing!』(注:新たにできた『彩~irodori~East~』のランキングを決める決戦。2012年の年末に東京・SHIBUYA-AXにて開催した結果、ジューシーズ、シソンヌ、ジャングルポケットがTOP3に決定した)に入ってなかった訳だし。私、それこそ『ing!』に出てる同期を待ちながら、出てない後輩と飲んでたもん。
山添:みんな行っちゃうんで、寂しいですよね。僕、3人でルームシェアしてるんですけど、みんな、いいひんなって。
山﨑:ね。で、ライブ終わりの同期たちがやって来て、「この人たちがTOP3になったよ~」って話してるのを、蚊帳の外で聞きながら“私、これからどうなるんだろう”と思ってました。

――その頃、まだお2人はコンビを組んでないですもんね?

山添:僕は「山﨑と組めや」って作家さんに勧められて、どうやって丁重に断ろうかなと思ってたのが、1年前。
山﨑:私も解散したばっかりだった。いま、CMで「3年あれば人生が変わる」って言ってますけど、いや、1年でもずいぶん変わるよなって。1年前から思えば、いまの状況は考えられないから。
山添 そう思うたら、「〜Member」に入れて良かったですね。

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――TOP2に入れると思ってはなかった?

山﨑:決勝5組には入れるかも、っていうのは少しだけあったかもしれないですね。『THE MANZAI2013』もちょっとだけですけど、決勝に行けたかも、みたいなことを思った瞬間があったんですよ。結局、18位でワイルドカードもギリギリだったなぁって話になったんですけど、最初ワイルドカードだと訊いたとき、ちょっと悔しくて。
山添:来年はもっとキツくなるから、ここでこのチャンスを逃さずに決勝へ行っときたいっていうのがあったんですよね。
山﨑:だけど、1年で“悔しい”って思えるところまで来られたのがすごいよね? 前のコンビのときは思わなかったから。
山添:確かに、ケイさんはめっちゃ変わらはった。コンビを組み直すと、いちばん下(のカテゴリー)からのスタートになるじゃないですか。月2回のライブで2分ネタをやってたんですけど全部新ネタでいきたいし、ネタ合わせもしたい僕に対して、ケイさんはエンジンがかかってない感じで。やけど、結果が見え出してからのこの半年、意識が変わりましたね。
山﨑:私は遊んだり、飲みに行ったり、バイトしたり、自分の生活を充実させることがまず基本で。だから、「その日は飲みに行くから」「その日はバイトがあるから」って「そんなにネタ合わせしなくてもいいんじゃない?」って言ってたんですけど、結果が出たら楽しくなったんですよね。で、『THE MANZAI』が終わって、2人で話したのは“100組いても1位にはなれないコンビだな”っていうことで。たぶん100組いても5番くらいがマックスで、もし1000組に増えたとしても20番くらいに入れるのが現状の力なんだろうと思いましたね。
山添:いまはね。いまのところは、です。ただ弱点は見えたんで、今年は未完成の部分を完成させてレベルアップしたコンビになる……予定なんですけど(笑)。

――弱点は見えているんですね?

山添:はい。『THE MANZAI2013』と『~Championship』を経て、僕らのネタを観てみるとまだ未完成なんですよ。ワイルドカードや決勝で戦っていた先輩方はこれ以上ないっていうくらいの完成度の高いネタを持ってきはる。そんな中で未完成では勝てへんなって思ったんで、今年は完成させます!
山﨑:……ふふふ、宣言してますねぇ。

――山添さん、かなり気合い入ってますね(笑)。

山﨑:すぐ気合い入るんですよ。『~Championship』の前日も、(神保町花月であった)『囲碁OR将棋』終わりで、疲れてるのにかなりネタの練習させられました。
山添:はははは!
山﨑:誰もいなくなった神保町花月の楽屋で、「ケイさん、1回ずつ通しましょう」って。でも私もやりだしたらこだわるんで、結局1時間くらいやりました。2人ともこだわりがめちゃくちゃ強いんですよ。お互い、前のコンビでは相方がこだわりのない人で。たぶん、そういう人ってなぜこだわるのかが理解できないから「別に良くない? 言い方がちょっと違っていても」って考えると思うんです。山添のこだわりも、私のそれとは違うところもあるからイラッとはするんですけど、同じくらい強い気持ちでこだわってることは理解できる。私のこだわりを理解するには、同じくらいこだわりが強い人じゃないと無理なんです。
山添:ケイさんはボケやから、こだわりがあるほうがええんですよ。そう思うてるからこそ、めっちゃ理解しようとするんですけど、最初の頃はなかなか理解できなくて。
山﨑:そのこだわり方も、「そんなことは言いたくない」とか「気持ちが乗らない」とか女性特有の感じだからね。
山添:男コンビの、本来、相方がこだわる側やった場合の悩みとはまた別なんですよね。面白い方向に進むためのこだわりやから別にいいんですけど、相方がこういうタイプの女性の場合、どう対処したらええかが全くわからなくて。まぁ、いまでも見えてないですけど。

――前例はほとんどないですよね。

山添:そうなんです! 相方が男やったら経験がものを言うんでしょうけど、それが通用しないんでサラから勉強してる最中です。
山﨑:……だそうです。

――(笑)。

山添:観ている人は“前と、ちょっと雰囲気変わったな”くらいしか思ってない可能性ありますけど、僕としては全く違う。いちばん違うのは立場ですね。相方へ説明したり、教えたりする立場から、気ぃ使う立場になったんで。
山﨑:ただ、山添は前のコンビのときよりもかわいらしく見えてると思うんですよね。前はしっかり者みたいな感じでしたけど、普段はしっかり者でもなんでもない。結構天然ですし、結構バカなんで。

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――言われたい放題ですね。

山添:……情けないです(笑)。
山﨑:本当に普通の人なんですよ。普通の、全てがそこそこにそこそこの……ね?
山添:もうちょいええ言葉あるんじゃないですか?
山﨑:(笑)だからわかりやすいですよね。そこそこの男を捕まえて「何そこそこ楽しんでんだよ」ってイチャモンを付けながら、「所詮そこそこなんだからな」って言い続けてるっていう。
山添:そこそこにも満たへん女が?
山﨑:そうそう。そこそこに満たない女がそこそこの男を捕まえて、必死で「所詮そこそこなんだからな」って文句言うっていう。
山添:僕は僕で、そのそこそこの部分から目を背けてたから……まぁ、そんな感じの漫才です。ただ、僕ら2人に共通してるのは、ネタとトークで嘘をつきたくないっていうことで。
山﨑:前のコンビのときも、彼氏がいた時期は一度も“彼氏が欲しい”っていうネタをやったことはないんですよ。お客さんに言う訳じゃないし、本来はどうでもいいところかもしれないですけど、誰に知られていなくても嘘をつくのは嫌だっていうこだわりが元々あって。それが(コンビを組んでから)山添にもうつっていきましたね。
山添:確かに、以前はそんなことなかったというか。昔話のネタとかもそうやし、“何々をやってみたいな”“ほなやってみよう”っていうネタも自然にできてましたし。
山﨑:でも、やってみたくないじゃん。“桃太郎の話ってどんなんだったっけ?”って。いや、別にほかの人がやるのは全然いいんですけど。
山添:まぁまぁ、“人前に出てすぐにそんなこと思う?”って思い出したら、僕もほんまのことを言いたいと思うようになりましたね。たぶんですけど、僕らみたいな2人が恥じらいもなく、思ってることを言い合ってるって面白いんちゃうかなと思うんですよ。ケイさんみたいにめっちゃ美人ではないけど、ブスでもない人。で、僕も中間の男で……。
山﨑:山添は中間より、ちょっと上だよ。そこそこ、だから。
山添:え? ちょっと上?

――中の上くらいですか?

山﨑:うーん、顔だけでいうと中の上くらいなんですけど、背の高さとか清潔感とかで結局、上の下くらいのところにはいると思います。男はあんまり顔を重視されないですし。
山添:褒めてから落とすの、やめてくださいよ。
山﨑:良く見たら、そんなに大した顔じゃないんだよね(笑)。
山添:……おさらいしたら、最初から褒められてなかったです。

――はははは! 相席スタートさんは、そういう2人の関係性がものすごく面白いですよね。だからこそ、漫才の掛け合いも自然で面白いんだと思いますが。

山添:女性も男性も言われたら恥ずかしいことってありますやん。でも、せっかく芸人なんやから思いっきり言うてやろうと思いますけど。
山﨑:ただ、ターゲットは狭いです。ウケないときもありますし。
山添:ルミネとかだと、僕らの中ではちょっとベタすぎるというか、ほんまにしたいこととちょっとずれてるかなくらいのほうがウケやすかったりします。

――反省っていうか、そういうのはネタ終わりに毎回話し合うんですか?

山﨑:そうですね。ルミネのときは、私が山添に推した説があって。私、中の下の女っていう体でネタをやらせてもらってるんですけど、ルミネに来てくださるような年配の方は私のことをブスとは思わないんですよ。歳を重ねると、若いとか健康とか。
山添:元気とかね。
山﨑:っていうだけで、きれいっていうカテゴリーに入るんで、ちょうどいいブスボケが伝わらなかったことが敗因なんじゃないかなって。その日、ゆにばーすも出てたんですけど、はらはちゃんとウケてたから「はらは、ちゃんとブスなんだよ。でも、私はあの年齢層から見たら、健康的でかわいい。それが敗因だわ」って言いきって満足げに帰りました(笑)。
山添:ははは。まぁ、ウケない理由は意外とすぐ見つかるんで、凹むことなくいけますよね。そのときはそういうことにして、次に活かして。で、次ええほうに向かったら“やっぱりそうやったんかもしれないですね”ってまた話し合う感じですね。
山﨑 そういう分析が好きなんです。

――3月からの「~Member」に入ったということは、∞ホールの中心的な存在として盛り上げる立場になるということで。また、11期生までが卒業するので、お客さんがガラッと変わる可能性もあると思うんですけど、そういうのはどう分析していますか?

山添:ガラッと変わるのは、いろんなネタを試せそうなんで楽しみですね。ほかの芸人さんのネタは何回見ても笑えるんですけど、ケイさんのはその、ボケじゃなくて言いたいことを言ってるだけなんで。
山﨑:私たちの漫才って、初見がいちばん面白いと思うんですよ。
山添:2回目もまだ味あると思うんです。で、3~4回目になるとボケじゃないから、笑われへんようになるんですよ。
山﨑:新喜劇的な要素はないというか。思っていたことを喋ってるような気持ちで毎回ネタをやってるんで、極端なことを言ったら全部違うネタをやりたいくらいなんですよ。漫才って元々、出会った2人が喋ってボケてツッコんでみたいなことだから本当はそうしたいんですけど、毎日毎日卑屈に生きてるわけでもないじゃないですか。

——まぁ、そうですよね。

山﨑:それに、私たちの漫才って良くエッセイとかコラムみたいなネタって言われるんですけど、ボケも普通に生きてる人たちがなんか引っかかってることを言葉にしてるんだけなんですよね。だから、「共感できます」って言ってくれる人もいるし、「泣きました」っていう人もいるし。山添のバイト先の人みたいに共感しすぎて、噛み締める人もいるし。
山添:「どんなネタやってるの?」って訊かれて答えたら「わかる」って……ほんまに気まずかったです。でも、そのおかげでちょっと仲良くなれましたけどね。
山﨑:じゃあ、良かった(笑)。∞ホールだと若い子が多いから、私が言ってることよりも山添の「何言ってんねん」とかひえ~って引いてるところがウケるんです。でも、賞レースとかお客さんの年齢層が高くなると、私が言ってることで笑ってくれるんですよね。そういう反応の違いも面白いですよね。Twitterなりリプライでも「共感しました」って言うのが多くて。

――面白いではなく(笑)。

山添:でも、そういう反応がくることに、僕らもよしよしって思い始めてるんですよね。不思議なことに。

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――そういう意味では、2月7日(金)、東京・渋谷公園通りシアターDで開催される初のトークライブ『相席スタートトークライブ~終電逃し逃がし』の期待も高まりますね。チケットぴあでは発売初日にチケットが完売したそうで。

山﨑:でも、ぴあに置いてたのってきっと10枚くらいですよ。いっぱい手売り持ってます! だから、完売って言われるのは恥ずかしいんですけど、でも10人の人がどうしても行きたいという気持ちで、ぴあでチケットを取ってくれたっていうのはすごいことだなって。私もサッカーとか好きだったり、GLAYさんのファンクラブに入ってたんでチケット取るのがどれくらい大変かわかってるんで、そう思います。
山添:いやぁ、ほんまにうれしいですよね。
山﨑:「置きチケとかしたことないんですけど、行ってもいいですか?」って言ってくれる人も結構いて、普段とはまた違う人が観てみたいと思ってくれたこともうれしいですね。
山添:前のコンビのときより、応援してくれるお客さんの層も幅広くなりました。言ったら、大人の女性が来てくれはるのとか、うれしいですよね。男性も来てくれはるし。

――元々、トークライブはやりたいなとは思っていたんですか? お2人で話してた『よしログ』を拝見したらめちゃくちゃ面白かったので、個人的に“トークライブやってほしいな”と思ってたところでした。

山﨑:あっ、ありがとうございます(笑)。
山添:めっちゃうれしいですね。
山﨑:ずっと「トークライブやりたいね」って言ってたんですよ。
山添:さっきの話じゃないですけど、トークライブからネタが生まれる可能性もあると思いますし。
山﨑:ただ、“このトークライブ、絶対面白い”と思って来てくれるんだろうなって、みなさんの期待を感じる分、どうしようと思ってます(笑)。

――はははは!

山﨑:客観視したら、私も“なんか面白そう”と思いますもん。
山添:僕も大体想像つきますよ。なんか言うてまうんでしょ? 僕が。で、ケイさんを怒らせるんでしょうね、きっと。
山﨑:ネタの冒頭で山添はいつも、そんなこと言ったら絶対、私に怒られるってことを言っちゃうじゃないですか。2人でネタ作ってるときに、あの部分が最近、私のツボで。
山添:1年くらい経つと、お互いの役割を把握するじゃないですか。で、「僕、こういうこと言いますわ」と。ケイさんがそれならこういうって言ったことに対して、「あぁ、じゃあ、こう言います」って言うてるときに、もう絶対怒られるやん……って僕も思ってるんですよ。
山﨑:“絶対怒られるじゃん”って思いながら言ってることが面白いっていうか。それを私が言わせてるんだっていうことが、段々面白くなっちゃってます。
山添:で、僕も「こんな言い回しどうです?」って、ケイさんがより怒りやすくするように持っていってたりしますし。
山﨑:だから、トークライブでもそういうことをするんでしょうね。山添はちゃんと見事に浅いことを言うんですよ。そこそこの男、なんで。

――山添さん、さっきから結構な言われようですけど、腹立たないんですか?

山添:……ちょっともうおかしくなってるんですかね?

――(笑)プライドの高い、器の小さい男の人だったらブチ切れそうなことを言われてるかもしれないですよ?

山﨑:山添はいつも「そうっすねー!」って訊いてます。うまいこと、育てました!
山添:はははは!

――いい関係性ですね〜。山添さんは男性同士の、山﨑さんは女性同士のコンビから解散を経て、新たにコンビを組まれたわけですけど、元々お互いにいい印象は持っていたんですか?

山﨑:いい印象どころか! どっちかと言ったら、好きじゃないっていうタイプでした。
山添:僕も周りから聞いてたイメージで、絶対ひどい人やと思ってました。ひどくて、怖くて、性格が悪すぎるって。
山﨑:はははは!

――構成作家さんの勧めで、コンビを組むことになったんですよね。

山﨑:そうですね。その話がなかったら組んでないと思います。組もうなんて考え、1ミリもなかったです。私は相方が辞めるって言うんで(その作家さんに)「解散します」って報告に行ったんですよ。最初は「マジか~」って言いながらしばらく落ち込んでたんですけど、「山添と組め!」って急に明るく言い出して。「え? なんですか、その発想」って言ったら「見えたな」って言われたんですけど……なんだったんですかね? 単なる思いつきだったのか、本当に何か見えたのかは謎です。
山添:僕はその頃もう解散してて、見学に行った同期の対決ライブの打ち上げで、その作家さんに「山添、山﨑と組め」って。同期の芸人もその人が言うてるからわかったような顔してましたけど、あとで全員に「絶対やめとけ」って言われました。僕もどうやって断ろうかなと思ってたし。
山﨑:私もみんなに「絶対違うと思うよ」って言われましたね。

――でも、コンビを組む前に一度、2人で舞台に立ったんですよね?

山﨑:その作家さんに解散するって言いに行ったときに、報告の前に「(同期で昨年、芸人を辞めた)久松くんと山添とトークライブをしたい」って言ったんですよ。私としては、解散した芸人が解散秘話を喋るライブがやりたくて。
山添:ちょっとでも解散が悲しく感じないように、笑ってやーみたいなことですよね。
山﨑:そうそう。解散するとどうしてもかわいそう感が出ちゃうんで、お客さんに「どうしたらいいと思います?」って相談しながら、試しにシャッフルネタもやってもいいかなと思ったんです。で、私と山添、(ちんぺいの)ゆっちゃんと久松くんでライブしたんですけど。

――お2人でネタをしてみて、しっくり来たんですか?

山﨑:それが全然来なくって。
山添:全然来なかったですよねぇ。

――あれ、そうだったんですか(笑)。そこからなぜ組んでみようと?

山添:そのときのネタ作りの感じが良かったというか。(それまでの)イメージと違って、こんなに優しいんや。思いやりとかある人なんや。ネタのこととか、僕に訊いてくれはんねや、と思ったんですよ。ケイさん、前の相方さんとのネタ作りのとき、一言も会話しなかったんです。やから、どんだけ極悪な人なんやろうと思ってたら、意外と普通やんって。むしろ、面白くしたいっていう思いを汲み取ってくれはる人なんやなと思ったんです。
山﨑:いいギャップですね(笑)。私、前のコンビのときは1人でネタを作ってたんで、きつかったんですよ。で、山添も前のコンビでネタを作ってたほうだったから、コンビ組んだら今度こそ楽できると思ったんです。けど、そのお試しライブで一緒にネタを作ってみたら、めっちゃキツくて。当時の山添は完全にお笑い脳なんで、私のニュアンスをボケとして捉えられなくて「ちょっとわかんないですねぇ」みたいな感じで。さっきも言ったように、山添が思ってることは私にとってやりたくないことだったし、本当にキツかったんです。で、結局、誰と組んでもネタを作るのはキツいんだと絶望的な気持ちになって、すごく嫌な気持ちになりました。私がいいじゃんと思っても、山添は「でも……」って言うし。
山添:へぇ、そんなん思ってたの知らなかったです(笑)。
山﨑:あと、ちょうど日本テレビの『NexT』っていう番組に取材してもらっていたんですよ。番組からは「コンビを組んでも組まなくてもいいんで、答えを一度出してください。ここで断ってあとで組んでもかまわないから、いまの気持ちを言ってください」って言われていたんですけど、私はせっかくこういうきっかけをいただいたんだから、イエスかノーかで決めようと思っていて。まぁ、ライブに番組にって2つもこういうことが重なることはないだろうから、とりあえずやってみるかみたいな感じでした。
山添:いま思うたら、(組み立ての頃の)新ネタ作る言うて結局作れずに、距離だけが縮まって仲良うなっていく期間がめっちゃ大事やった気がします。
山﨑:それは本当にそうですね。

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——男女コンビならではの、困った点ってありますか?

山﨑:困ったというか、私たち良く「お互いを異性として見ることはないの?」って訊かれるんですよ。で、山添は一応、男じゃないですか。コンビだから楽屋とかでも近くにいるんですけど、そのときに無神経だから気にせず、平気な顔で着替えたりする訳ですよ。そういう上半身裸になってるときって敢えてどこを見たらいいんだろうっていうのが、最初はありましたよね。本人は「いや、だから~」ってネタのことを話しながら裸になってるんです。服を着てるときは意識しないんですけど、裸になられたらなんかちょっと……どこ見たらいいのかなって思っちゃって(笑)。
山添:ははははは!

――(笑)そんなこと考えてたんですか。

山﨑:だって、普通に喋っているときは肩の辺りも見てるのに、裸のときは目だけ見て敢えて見ないようにしてるんだって思われても……みたいな感じで、「あぁ、うんうん」って返事しながらチラチラ(裸を)見たり(笑)。そういう意味での“男の人”っていう意識はあったんですよ。隣りにいて、腕が触れるときも意識したり。
山添:へぇ~~~、そんな葛藤あったんすか!
山﨑:いやぁ、葛藤じゃないけど。
山添:じゃあトキメキ?
山﨑:トキメキっていうほど素敵なものでも……。あまりに無神経だから、ちょっと……みたいな気持ちがあったんです。だけど最近、マジでないです!
山添:それ、逆にショックやわ! ちなみにケイさん、僕はすんません、最初から意識してなかったです(笑)。ケイさん、先輩ですし、後輩の僕が気ぃ使ってたら余計気を使わせるんじゃないかと思いますし。

――山添さんは意識してないと言いますけど、山﨑さんがざっくりと胸元の空いた洋服を着てたら? 男の人ってそういうところに必ず目がいってしまうって言いますよね?

山添:まぁ、僕もちょこちょこは目がいきますけども……。
山﨑:はははは!
山添:やけど、ケイさんなんやって思うてまうと、気持ちがすっとね(笑)。

――(笑)あと、山﨑さんが以前『よしログ』で話してた“自分宗教”のお話も伺いたいんですけど。

山添:いやぁ、これは気持ち悪いですよ。
山﨑:山﨑教はものすごくいい宗教なんですよ。大教祖は母親だと思うんですけど、私にいくつかしつこく言っていた教えが基本になってるんです。母が言っていたのは、人の立場に立って物事を考えなさいということで。されてうれしいことが人にすればいいし、嫌なことはしていけないっていうのを、ものすごくうるさく言われたんです。
山添:いい教えですよね。

――ですね。

山﨑:でも、中学生くらいの頃、「あなたの価値観を押し付けないで!」みたいなことを言われて。そこで初めて“人間ってみんな一緒じゃないんだ”って、遅ればせながら気付いたんです。
山添:みんながみんな、そういう教えを受けている訳じゃないっていうことをですか?
山﨑:っていうより、みんな何かをされたらうれしいんだと信じて生きて来たんだけど、違ったというか。「偽善者!」みたいなことも言われて、そのときタイムリーに太宰治の『人間失格』を読んでしまったんです。で、主人公(の大庭葉蔵)が私自身なんじゃないかと思えて。私がぐちゃぐちゃ思ってることが実はみんなにばれてるんじゃないかと怖くなって、誰とも喋るのをやめようと思ったんですよ。その辺りから自分の殻に閉じこもる“暗黒時代”に入るんですけど、それは“キラキラ組とザ・シャドー”っていう漫才のネタで昇華されました(笑)。
山添:その頃、サッカーしてましたわ、僕。

――めちゃくちゃ青春を謳歌してる!

山﨑:でしょ? ダッサいんだから。なんにも考えずにボール蹴ってたんでしょ、どうせ!
山添:ははは! 鼻垂らして、寒いのに半袖でね。

――(笑)対照的ですねぇ。

山﨑:そうなんです。で、結局、自分がされてうれしいことをするしかないって思ったんですよ。自分の物差しで測るしかないんだから、されてうれしいことはしたほうがいいし、嫌なことはしない。押しつけでも偽善者でもそうしていこうっていうのが、“山﨑教”なんです。あと、母からの教えで「トイレは必ずきれいに使いなさい」っていうのがあって。「トイレットペーパーを空にしたままにする人がいるけど、ああいう見えないところこそちゃんとしなきゃいけないのよ」って言われて育ったんです。
山添:素敵なお母さんや~!
山﨑:だから私はトイレットペーパーの2つのうち1つが空になっていても、ちゃんと付け替えるようにしてます。母の教えもありますけど、美人は最悪、トイレットペーパーなんて替えなくていい。だけど、そうじゃない人は替えないとどうするんだって思うんです。
山添:そういう気遣いが大事やと。
山﨑:そう! だけど、私がトイレットペーパーを替えてることは、誰も見てくれないじゃないですか。でも、いつか絶対、何かしらで返ってくるはずだと信じて、毎日替えてるんです。
山添:さりげなくやってるところをイケメンが見て「気が付くんだね」って?
山﨑:そうそう。ただ、その現場は見てもらえないんで、“私はトイレットペーパーを替える女です”ってアピールしていくしかないけど。だから山﨑教に入ったら、必ずトイレットペーパーを替えないといけなくなります。
山添:清掃員やと思われますよ?(笑)あと、お父さんの素敵な話もありますよね?
山﨑:父と話してたんですよ。男女平等っていうのはいいこと。雇用機会均等法っていうのもすごくいいことだと。だけど、例えば会社で女の子が重い物を持っていたら持ってあげようかなと思うし、持ってあげる。で、女性っていうのは男性にはできない気遣いができるから――お父さんは別にお茶を汲んでほしいと思ってるわけではないけど――“さっきはありがとうございました。お茶どうぞ”ってさりげなく気遣ってくれる。それが平等なんじゃないかって。
山添:僕もそう思います! 僕も、ケイさんの荷物とか持ちますし。
山﨑:持ってくれますし、車道側も歩いてくれるんです。
山添:けど、そんなええもんじゃないというか。僕、ツメが甘いんで、動いたときにちょうどチャリが来てぶつかったりするからカッコ良くはならないんですけどね。
山﨑:私だからそうしてくれてる訳じゃないしね。山添は優しさが浅いんです。極端なこと言ったら、そうすりゃあいいんでしょ、みたいな感じなんですよ。
山添:ほんまに極端やなぁ!
山﨑:風邪引いたときも「大丈夫ですか? うわぁ辛そうですね」って声をかけるのが本当の優しさなのに、山添は「明日、朝起きて体調悪かったら、絶対に病院行ってくださいね」って。別に、私を女として見ろって言ってる訳じゃないんです。山添は人としての優しさが足りないと言いたいんですよ。
山添:いや、心配ですよ? ただまぁ、あのときはワイルドカードの前やったから、優しさ込みの心配が4割、“しっかりせぇよ、ワイルドカードの前なんやから”っていう心配が6割でしたけど(笑)。
山﨑:そういうところが優しくない! 山添の優しさは全部、そういう感じ。“困ってる人がいたら声をかければいいんでしょ”っていう感じに見える!
山添:そういう考え方は良くない。ケイさん、心が汚いです!

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――ふふふふ……まるで漫才ですね。いつもそういう感じで話してるんですか?

山添:そうですね。
山﨑:こんな感じだからか、テーマを決めてネタを作ろうとすると意外とできないんです。いま男女の恋愛は成立するのかみたいな議題を持ってるんですけど、なかなかできなくて。
山添:でも、ネタを作るスピード自体は上がって来てると思います。

――そして、台詞にはかなりこだわる。

山﨑:そうですね。気に入ったのができたら、「ちょっとこの台詞、良すぎるなぁ」って泣いちゃいます(笑)。あと、山添を攻めるのが楽しくて、何回やっても笑っちゃう好きな台詞が3つくらいあって。練習してても笑っちゃうんですよ。男の人のあら探しをしてあら探しをして、攻めきった!みたいな台詞を言ったときって楽しいんですよね。
山添:いままでケイさんが出会ってきた男を、僕が背負ってます。

――(笑)面白いネタをつくるためにも、山﨑さんの私生活の充実が今後も不可欠ですけど……でも、好きな人ができるとネタ合わせをサボっちゃうんですよね?

山添:そうなんですよ。まぁ、サボったらサボったで、久しぶりに会うたときにおもろい話を持って来てくれるんでいいんですけど。
山﨑:それこそ、男芸人さんは(ウーマンラッシュアワーの)村本さんくらいいかないと、遊んでるエピソードを世間に出せないじゃないですか。っていう意味でも、男芸人が10人の女の子と遊ぶより、私が真剣にした1つの恋愛の失敗のほうが絶対に面白い。だから、私、一生懸命生きていこうと思ってます。
山添:僕、相方やからまだ聞いてられますけど、第三者が聞いたら結構恥ずかしいことをいま、ケイさん言うてますよ?
山﨑:え? 私はみなさんに、幸せになるまでのドキュメンタリーをお見せしてるだけだから。人生のこととかを考えると、最終的にはいつも“幸せになりたいだけなのに……”ってところに行き着くんです。マジでそう思ってるんですよね。
山添:たまに歌手みたいなこと言うんですよね。

――山﨑さんが「幸せになりたいだけなのに……」ってつぶやいた瞬間、山添さんは隣りで洋服のホコリ取ってました(笑)。

山﨑:ははは! でも本当に私、幸せになりたいだけなんだよね。
山添:(興味なさそうに)なれるなれる。そう思ってたらなれる。だって、女芸人をやってる理由がね? 最高のお見合いやと思ってるんですよね?
山﨑:そう。テレビに出るのが、いちばんたくさんの人と一気に出会える方法だと思ってるんで。

――山﨑さんがドキュメンタリーとして幸せまでの奇跡を見せているなら、山添さんは?

山添:僕はいちばん近くで、ケイさんのドキュメンタリーが完結するまで全部見届けたいですね。だって、お笑いをあんまり知らん、お笑いよりも好きなことがあるケイさんみたいな芸人って、僕と全く違っていて面白いですもん。(『THE MANZAI2013』の生放送中のビート)たけしさんのボケにもケイさん、(全員がコケるなかで)突っ立ったまま拍手してたし(笑)。「テレビで観たことあるやつ~」って言いながらテレビに出てたんですからゾクゾクしましたけど、ワクワクもしましたからね。
山﨑:あれ、いろんな人からツッコまれました(笑)。あと、最近「きれいになったね」って良く言われるんですけど、充実が顔に出ちゃってるんですかね。

――ネタ中に、山添さんを追い詰められるし、ストレス解消できてるんじゃないですか(笑)。

山﨑:そうかもしれないですね。私はちょっとだけ若い男と喋って生き生きして、ストレス解消してきれいになって。で、山添はいろいろ吸い取られてどんどん顔が変わって……確かに昔はかわいかったよね。
山添:まぁ28歳やからっていうのもあるでしょうけど、吸い取られてる可能性はあります。できもんができたら、絶対ケイさんのせいですからね!
山﨑:はははは!
山添:そういう意味では、僕のドキュメンタリーも絶対見届けてほしいですね(笑)。


●ライブ情報
相席スタートトークライブ~終電逃し逃がし~
開催日時:2月7日(金)21時15分開場/21時30分開演
会場:渋谷公園通りシアターD
チケット料金:前売自由1000円
チケットよしもと:http://yoshimoto.pia.jp

●ヨシモト∞ホール
http://www.yoshimoto.co.jp/mugendai/


【相席スタート】