東京シュール5~未体験トークショー~(夜の部)
3月15日(土)、東京・新宿シアターモリエールにて『東京シュール5~未体験トークショー~』が開催されました。
マンボウやしろ、犬の心、POISON GIRL BAND、しずる、ライス、かたつむりによるユニット『東京シュール5』。元々カリカというコンビを組んでいたマンボウやしろが声をかけて、2008年よりスタートしたのが、こちらのユニット。スタート時に諸事情により出られなかったしずるに代わって入ったかたつむりがなんとなくそのまま残り、6組なのに「シュール5」という不思議な構成になっています。
2011年9月、カリカが解散。同月の京橋花月での公演後活動がなく、活動が危ぶまれていた同ユニットですが、昨年末、新宿ロフトプラスワンにて行われたマンボウやしろのオールナイトトークライブにて存続が決定。再開第1弾ライブとして、この日、昼と夜の2回公演が行われました。
『~未体験トークショー~』と銘打たれた今回のライブは、某国営放送で放送されている番組をオマージュした内容。芸人ひとりが出したテーマについて、全員で話し合うというものです。というわけで、客席もいつもと違い、真ん中の空いたスペースの周囲に設置されるという構図。お客さんの中に用意されている席に、芸人がそれぞれ座り、議論に参加するという形式のライブとなりました。
昼間に行われた1部の公演では、マンボウやしろ、犬の心・押見、さらに「東京シュール5」のメンバーではないエリートヤンキー・西島が登場。マンボウやしろは『ドラゴンボール』の孫悟空とベジータの戦いを引き合いに出し、復讐論や死生観を問うような議論を。「仲間を殺したベジータに留めを刺すか、刺さないか」という内容だったのですが、お客さんからの「留めは刺さない。ベジータを殺したところで、仲間が帰って来ない」というすばらしい答えに、大きな拍手が起こりました。また、押見は「カレー味のウ○コとウ○コ味のカレー、どっちを食べる?」など理性や決断にまつわるお題が。西島は「売れている芸人はみんな面白いのか?」という芸人らしい熱いお題で、時に相方・橘との公開口げんかする始末。結果、「みんな売れましょう!」という美しい着地で締めました。
今回は、夜に行われた2部の公演の模様をレポートします。2部では、出演者が座る席として東京シュール5では度々登場するアイテムである自転車が置かれていました。
まず現れたのは、しずる・村上。「生命の話をしたい」と切り出し、「授かり婚はありか、なしか」について議論を始めます。自転車には、マンボウやしろが着席していました。
パパ芸人である犬の心・いけやは「俺は授かり婚ではないけど、親から受け継いだ命のバトンを今度は自分が娘に受け渡している。そうやって人生は形成されているんだから、ありだと思う」と発言。「もし両親に、授かり婚を反対されたとしても?」という村上の問いかけにも、「子供をつくるチャンスは1年に12回しかない。新しい生命が宿るという意味では授かり婚は素敵なこと。とにかく子供は大事なもの」と強調します。
一方、押見は授かり婚だけではなく、結婚という制度について意見を。「結婚は周りの人のためにするものだと思っている。結婚とは、身内とかに祝福されることも含まれたもの。だから、みんなが幸せになる努力はすべきだと思う」とキッパリと答えます。実際、授かり婚となった関町には、マンボウやしろから「正直、子どもができなかったとしてもいまの奥さんとは結婚した?」という質問が。「のちのちするだろうとは思ってました。すごくお世話になったんで!」と答えた瞬間、なぜか会場中が爆笑となりました。
そんな関町は「相手のご両親と初対面なのに、結婚の挨拶をしなきゃいけないのは恐怖だった。しかも、挨拶に来るのが僕……。自分がお父さんだったら、2、3発殴るかもと思った」と正直な感想を。マンボウやしろは「愛情は大前提だけど、授かったという大きな力に任せたほうがいいんじゃないかなと思います。授かったこと自体、何かしらの因果があるということだと思う」と持論を展開しました。
みんなの意見を聞いた村上は、「結論としては、生命は引き継いでいかなきゃいけないものなのかなと思いました」と感想を。「個人的な答えとしては、もし元気な子供が生まれたら、みなさんにきちんと発表したい。そのためにも、責任を持ってお笑いを頑張っていきたいと思います!」と意気込みました。
続いて、登場したのはPOISON GIRL BAND・吉田。「1部のほうで生徒役にまわって、自分ってこういうことを考えてるんだな。いや、これに関しては何も考えてないんだなとか思いながら、授業を受けていました」と、まずは昼公演の感想を素直に語ります。その後「みなさんも同じようにして、脳が疲れてるんじゃないかなと思ったので、簡単な質問もしたいと思います」と説明し、「バチって当たると思いますか?」と切り出しました。
“当たらない”というのは、かたつむり・林。「そもそもバチとはなんなのかって思いますし、バチが当たるっていうのは、ポジティブな考え方というか。自分が悪いことをしたという自覚がないような気がする。それよりも、何かしてしまったときは“これからもっといいことをしなきゃいけない”と思うべきだと思う」と静かに語ります。「じゃあ、悪いことをしてもいいと思う?」と訊かれると、「う~~~~ん……ダメですよね」と一瞬、躊躇して返答。「ちょっと考えたよね(笑)。即答しなかったことに驚いてます」と吉田が言うと、会場からも笑いがこぼれました。
「では、角度を変えましょう。悪いことをした人にバチは当たって欲しいですか?」との質問が、続いて投げかけられます。
いけやは「俺の人生観だけど、未来は切り開くものじゃなく、最初から決まってると思う。だから、悪いことをするのも最初から決まっているし、財布を盗られることも決まってる。明後日、車に轢かれて死ぬことも決まっていたと思うとすっきりすることもあるんじゃないかなと思うんだよね」と主張します。
「バチが当たることがものすごく悪いことだったとして、“神さま、すみませんでした”で終わるのは嫌だ。もっと悪いことを犯した人には、生々しく考えてほしい」と意見するのは、押見。「感情はどうなんですか?」と吉田に訊かれた途端、口にしたい言葉をぐっとこらえます。察した林が「倍返しってことですか?」と問うも、頑に「言わない!」と断言。すると、「言わないなら土下座しろ!」とマンボウやしろが横やりを入れました。
それぞれの意見を頷きながら聞いていた吉田は、「ごめんなさい。丸投げなんですけど、僕はみんながそれぞれ思っているっていうことでいいと思う」と、このお題についての感想を。さらに「もうひとついいですか? 運の善し悪しはあると思いますか?」と投げかけました。
「運がいい」と答えたのは林。「東京に生まれたというだけで運はあると思う。みんな、親と離ればなれになって、出てくるような街に生まれたんだから」と言うと、「まぁ、恵比寿生まれの人間から言えば、調布なんて東京じゃないけどね!」と挑発する関町。その意見に反論しつつも、「どこに生まれるかは自分では決められない。日本に生まれたっていうこともそうだけど、この地に生を授かるというのは確立としてはすごいことだと思う」と言い切ります。
「俺も運がいいと思う」と言ういけや。「じゃんけん大会で勝ったりもするし、いい人生歩んでいるなと思ってる」と自負すると、思い出し笑いする吉田。「グランジの佐藤大が……(笑)。師匠方がお正月にじゃんけんで勝った芸人にお年玉をくれるんですよ。最初に勝てなくても3回くらいやってくれるから、どんなヤツでも2~3回戦まではいけるんです。なのに、大は“全部、初戦で負けたよ”って言ってた。僕、“そんなヤツがいるんだ”と引いてしまったんですよね」とエピソードを語ります。それに対して、押見は「俺は運とかないし、ギャンブルも弱い。でも、本当はじゃんけん大会が開催できる人こそ運がいいというか。そのポジションまで行けたなんて、“頑張ったな、俺”って思うと思う。だけど、いけやさんの考え方のほうが幸せだと思う」とひねくれた答えを導き出しました。
一方、マンボウやしろは「俺もギャンブルは弱いし、何をやっても勝てない。家のことや仕事でも勝負強くないけど、ずっと楽しいですよ。だから、運がいいと思う。楽しいと感じられるということを、運でもらったと思う」と前向きに返答。頷く吉田は「個人的にはやしろさん、林、いけやさんのように、小さいことでも運がいいと思える人のほうが元気だなと思いました」とまとめました。
最後に登場したのは、ライス・田所。「法律で禁止するのはどっち? アイドルが即興コンビを組んで賞レースに出ること。もしくは、芸人がアイドルユニットを組んで歌うこと」と問いかけます。
かたつむり・林は、「賞レースっていうのは、僕らにとって千載一遇のチャンス。ニュースのトピックスに上がりたいがために参加する……っていうのはどうかとは思う。逆に、アイドルの方からすれば、芸人がアイドルっぽい活動をすることも同じように思うことだと思います。でも、もし自分が一般人で、そのアイドルが好きだったら、賞レースに出ても応援するでしょうけど」と言葉を選びながら、冷静且つ客観的な意見を伝えます。
「じゃあ、芸人がアイドルグループを組んで歌うのは賛成? 反対?」や「芸人がグッズで写真を販売するのは賛成? 反対?」などを、お客さんにも問いかける田所。その質問に、お客さんが「写真はどんなものにもよります。私服の写真でも、写りが良ければ買うかもしれない」と素直に答えると、会場からは同調するような笑いが起こりました。
「じゃあ、芸人が芸人以外の仕事をするのは賛成? あぁ、売れてない芸人っていうのを前提としましょう」とさらに畳み掛ける田所。「神保町花月でのお芝居の脚本を書いてましたよね?」と詰め寄られた押見が「脚本を書いてるのは、今後のためということもある。アイドルユニットもやってましたけど、あれは僕にとってコント。売れてないならやるべきじゃないと思う」と弁解すると、「お金が欲しくて書いたんだって言え!」と絶叫する林。ぐうの音も出ないながらも、「俺は先輩だから、“言ってください”って言え」と絞り出した押見。「言ってください」と言われると、「お金! お金もあるよ!」と投げやりに言い返しました。
しずる・池田は「芸ごとをやらないなら、芸人を辞めればいい」と、彼らしい極論を。「じゃあ、芸人が小説を発売することについては?」と相方・村上の行動を思わせるような質問をぶつけられると、「反対です! 僕なら恥ずかしくてしょうがない」と吐露。「小説って次のステップじゃないですか。だから、相方にも“お前は恥ずかしくないのか?”って聞いたんですよ。“こいつら、つまんねぇのに小説出してる”って思われるのが、僕なら怖いと。でも、相方は“もっとポジティブに考えればいいんじゃない? 自分たちのことを嫌いな人は買わないよ。でも、間違って手に取った人が、こいつ面白いじゃんって思ってくれるかもしれない。俺はそっちに懸けたい”って言われました」と赤裸々に語ると、お客さんからは感嘆の声が挙がりました。
POISON GIRL BAND・阿部は「いろんなことをやって、幅を広げたほうがいい。僕も体格さえあったら、相撲取り兼芸人をやりたい。いま考えてるのは、“面白いゴー○ーカレーの店長”になれないかってことなんですけど」とマイペースに返答。田所から「相方さんがラジオのパーソナリティをやっていることは?」と訊かれても、「賛成、賛成。毎日聴いてますよ。ボリューム最大でね」とひょうひょうと答えます。ここから話がすべて、ゴー○ーカレーのフランチャイズへと結びつくような時間も続きました。
その後も「芸人を辞めたら、月収500万円の仕事があると言われたら?」「自分がめちゃくちゃかっこ良かったら、アイドルになりますか? 芸人になりますか?」など、究極の選択が続きます。みんなの意見を静かに聞いていた田所は不適な笑みを浮かべながら、「まぁ、僕は芸人がいちばんだと思いますけどね!」と締めました。
エンディングでは、「人の意見、全部聞いちゃうから、こういうの向いてないとわかった」と、ひとり反省しきりだった吉田。メンバーを替えて、再びこの形式のライブをやるかもしれないとのことですが、東京シュール5らしい画期的なライブだったことは確実。1部のエンディングでは、マンボウやしろが「夏くらいまでに、また何かやれたら」とも話していました。
彼らの次なる活動に期待です!