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2014年7月25日 (金)

『髙平哲郎スラップスティック選集』創刊記念トークイベントVOL.1

7月11日(金)紀伊国屋新宿本店にて、髙平哲郎の殊玉の作品をテーマ別にまとめた選集シリーズ『髙平哲郎スラップスティック選集』の創刊を記念したトークイベントを開催。第1回目となる今回は、6月に発売されたシリーズ第1弾『銀座の学校・新宿の授業』に解説を寄稿した南伸坊をゲストに迎え、2人の出会い、髙平の半生、そしてタモリや赤塚不二夫、立川談志ら“天才”たちとの思い出話などを語りました。


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演出家、作家にして編集者、テレビ番組の構成を手がけ『笑っていいとも!』の仕掛け人でもあり、タモリの初期の名盤LPなどレコードのプロデュースも…と、様々な顔で、70年代以降のエンターテイメント界、サブカル界を牽引してきた髙平哲郎。イベントでは、まずは髙平と南の出会いの話に。最初に顔を合わせたのは、髙平がカルチャー雑誌『宝島』の編集長を辞めた頃、漫画家・高信太郎の家でのバーベキューだったという2人。そこから、髙平がなぜ『宝島』を辞めたのかという話題へ。当時、オイルショックのあおりを受け出版元の経営が苦しくなり、『宝島』は廃刊危機に。そこで髙平は、原稿依頼を減らして社内原稿にして、紙を悪くして経費削減に努めたものの、「上司から片岡義男さんたち辞めさせてくれって言われて、さらに植草甚一さんまでってなったから“植草さんの代わりに俺が辞める”って、辞めたんだよね」と当時の真相を。それを聞いた南は「読者として見てる時って、そういうことって全然わからないから」と驚いた様子。その頃、『ガロ』の編集者だった南は、「最初『ワンダーランド宝島』が出た時、ものすごく斬新だったよね。鈴木翁二とか、安部慎一とかをイラストレーションとして使ってくれて。それがすごくかっこよかったんだよね」と、髙平の手掛けた雑誌がいかにインパクトがあったかを語りました。



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続いては、広告代理店勤務から編集者へ、そしてテレビの仕事を手掛けることになった髙平の半生についての話に。「髙平さんが最終的に演出や放送作家をするのは、なるべくしてなったと思ったんだよね」という南。髙平自身も「『ワンダーランド宝島』の時に僕が出した企画は、「東映悪役レスラー」とか「関西のお笑いは今」とか、どっちかというと小林信彦さんに通じるようなカルチャーの企画だったから」と、ルーツを語ります。髙平の最初のテレビの仕事は、愛川欽也が司会の『お正月映画全部見せます』。「映画をダイジェストで紹介する番組なんだけど、ただそれだけじゃつまんないっていうことで、淀川長治のマネをする小松政夫さん、野坂昭如の団しん也さん、寺山修司のタモリを入れたんだよね」と髙平。思わず「それは面白そうだね」と、南も身を乗り出します。その後、あの『笑っていいとも!』が誕生することになるのですが、その辺りは書籍でじっくりとご覧ください。



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さらに話はディープな方向に。当時、様々な文化人や業界人が集まる新宿のスナック「ジャックの豆の木」の常連だった髙平。その面子は、ジャズピアニストの山下洋輔、漫画家の長谷邦夫、サックス奏者の坂田明、著述家の奥成達、漫画家・高信太郎らそうそうたる顔ぶれ。面白いものに敏感な人々が集まるその店で、最も注目を集めていたのがデビュー前のタモリ。「ジャックにタモリっていう面白いやつがいる」と話題になっていたそう。そんなメンバーとともにバスツアーに行ったことがあるそうで、「あの時のタモリのバスガイドは秀逸だったね」と髙平。「“右手をご覧ください。中央、農作業にいそしむ夫婦は、技巧のないSEXを続けて80年、山田八郎さんです”とか、“この松は元和元年、一夜にしてできあがったものです”とかデタラメ言って。一番前のタモリと一番後ろに座ってる坂田さんで中継みたいなのやったり。面白かった。とにかくとんでもないものを見たと思ったね」と、後に芸能界のBIG3となるタモリの原点を語りました。




そして、数々の“天才”たちとの思い出話も。コメディー作家で演出家の滝大作の「天才は赤塚不二夫さんと青島幸男さんの2人だ」との言葉に異論はないという髙平と南。赤塚や青島との思い出を振り返りながら、同じく滝の「自分の職業を否定できる人は偉い」という所見に同意しました。さらに、髙平はもう一人の天才・立川談志の話題も。「青島さんも談志さんも、なんで政治家になったんだろうね?」と言う南に、髙平は「政治家のこと否定してみたかったんだと思うよ。無責任一代男、それでも社長になったみたいな。頂点になって、それを否定してしまうとことがいいんだよね。権威に魅力があるわけではない。たけしさんが世界的映画監督になっても被り物をするのも、ある種、自分の権威を否定してるからだよね。そういう人たちには潔さが共通するんだよね」と、親交が深かったからこその考えを。こうした天才たちとの思い出を振り返った髙平は、「天才は早死にするね。伸坊は分からないけど、俺は長生きするんだろうな(笑)」と笑いで締めくくりました。




最後は、『髙平哲郎スラップスティック選集』第2弾「アチャラカに魅せられて」(仮)の見どころを紹介。テーマである“アチャラカ喜劇”の“アチャラカ”とは、キチンとしたルールを逸脱するという意味で、“軽喜劇”とはまた違ったものであるという定義からはじまり、掲載予定の萩本欽一や三宅裕司との対談での話題、そして浅草で“軽演劇”を学んだ萩本がコント55号で“アチャラカ”に目覚めた瞬間の話などを、かいつまんで解説。髙平の話を聞いていた南も「面白そうだね。それは買わなきゃ!」と期待を膨らませてました。




『髙平哲郎スラップスティック選集』シリーズ第1弾「銀座の学校・新宿の授業」、好評販売中。第2弾「アチャラカに魅せられて」(仮)は8月に刊行予定です。