「本当に書いてよかった」とCOWCOW・善し! 実話小説『ハイハイからバイバイまで』刊行記念インタビュー!!!
COWCOW・山田善しの著書『ハイハイからバイバイまで~田島のおばあちゃんとぼくのヘンテコな二人暮らし』(ワニブックス刊)が、現在好評発売中です。
同著は、善しと祖母の実話小説。小さい頃から優しくかわいがってくれた大阪・田島に住む大好きな"おばあ"との2人暮らし、"おとん"そして"おばあ"との別れ......。家族という普遍的な題材を、リズム感のある文章で描いた1冊。暖かみのあるイラストが魅力の1つです。
今回は、著者である善しにインタビューを刊行! 初めての小説執筆はいろいろと苦労も多かったおうで、編集者と相談しながら書き進めたんだとか。また、"おばあ"を取り巻く人々へ取材を重ねることにより、善し自身も知らなかった事実が明らかに......。「おばあやおとんについて考える、すごくいい機会になりました。本当に書いて良かったです」と自信をのぞかせます。
――読売新聞の連載から生まれた企画だそうで。
「連載自体は全6回のコラムで、1つの話としておばあのことを書いたんです。それをワニブックスの方が読んでくださって、"1冊の本にしませんか?"と声をかけてくれたのがきっかけでしたね。コラムは1本1200字くらいなのであっという間に書けるんですけど、1冊にするとなれば大変やぞと。そう思いつつも"やります"と言ってしまったので、引くに引けなくなってしまった感じはありました(笑)」
――オファーは、どれくらい前にいただいたんですか?
「昨年ですね。お話をいただいてからコラム形式で2~3本書いたんですけど、年を越してからぱたりとペンが止まってしまい.......。何も書けないまま、ただただ年末年始を楽しんでしまいました(笑)」
――(笑)。
「ライブのトークとかで喋ったエピソードは、ある程度書けたんですよ。けど、それ以外のエピソードを文章にするのが本当に難しくて。うろ覚えの部分も多かったんで、年を明けてから田島に帰っていろんな人に話を訊きながらいくつかエピソードを思い出していって......。そうこうしているうちに、春になっちゃったんです(笑)。そのタイミングで担当の編集者さんが代わったので、その方に文章の書き方などを教えていただきながら書き進めていきました。僕は、夏休みの宿題もきちんと出してなかった人間。締め切りを細かく決めてもらえないと書き切れないと思ったので、スケジュールを組んでもらいました。最初、20日ごとに50ページ書くっていう感じやったんですけど、それでも難しいなぁということで、10日ずつ25ページを書くように再度調整してもらい、なんとか最後まで書き切ることができました」
――執筆する中で、いちばん大変だったのは?
「時間の流れであるとか、そのときの感情であるとかっていうところですかね。書けない部分がいくつかあったんですよ。例えば、おとんが家を出て行ったときの感情やその後のおとんに対する感情っていうのは、あんまり考えたことがなかったというか......。気持ちの決着が付いてないっていうほうが正しいんかな。でも、こういうことも書いたほうがいいねんなと思いながら書いていく作業は、少しだけ大変でした」
――第1章の『おばあちゃんと「ハイハイ」』、第2章の『おとんと「バイバイ」』、第3章の『おばあと「バイバイ」』となる構成は、編集の方と考えていかれたんですか?
「はい。時系列の面では、いろいろと悩みました。順番に書いていくと、おとんとおばあとバイバイする時期って、実は近いんです。だから編集の方と相談して、第2章でおとんとの別れについて、第3章では高校時代に戻っておばあとの別れについて、まとめて書くことにしたんです」
――周囲の方にたくさんお話を訊いたとのことですが、おばあさまについて初めて知ったことも多かったそうですね。
「自分の記憶と感情って、段々つくられていったもんなんやなって思いました。結構違うことが多かったですよ」
――例えば?
「おばあが亡くなるまでの1年半、特に"今夜が山だ"と言われて(持ち直して)からの記憶ってほとんどなかったんですけど、話を訊いていくと僕が思っている感じとは別のことが出てきたんです。あと、バニラアイスクリームの件(病床のおばあが"食べたい"と言って、善しが買いに行く)も、僕にとっては思い出深かったんですけど、従兄弟のまさみ姉ちゃんに訊いたら"あのおばあさん、そういうことが何回もあった"と言われて。その度に蘇っていたらしいんですよね(笑)。尾形さんっていう、おばあの友達に訊いた意外なエピソードもそうです。(第3章内にある)『おばあちゃんとタマネギさん』の回で書いたエピソードなんですけど、おばあの......言うなれば再婚話ですよね。"そういう人がいてなぁ"って聞いた時は信じがたく、且つ興味深くもあったので入れました。あと、これはもうちょっと早く聞いてたら書けたなっていう話なんですけどね、僕は恭子おばちゃんの旦那さんである"安達のおっちゃん"とおとんが仲良かったらしくて。で、自分の妹である恭子おばちゃんと"結婚せぇ"って言うたんは、おとんやったらしいんですよ。そういう話って、本を書こうと思わなければ聞けない話だったので、こういう機会があって良かったなと思いました」
――そのほか、拝読して印象的だったのは、ステーキのことを"テキ"と言うだとか、関西出身の人ならわかる「あるある」の描写だったんですけれど。
「そこは、気をつけて書いたところですね。引っかかってるところは違うんでしょうけど、感情移入しながら読んでもらいたいなと思って細かく描写することを心がけていたので、伝わったなら良かったです。先輩や後輩の芸人さんにも読んでもらってるんですけど、それぞれ引っかかって感情移入してくれてるみたいで。読んでくださっている方々もそう思ってくれていると嬉しいですね」
――この本を書くことが、ご自身の家庭についてもいろいろと考える機会になったんじゃないかなと思うんですが。
「そうですね。2人の子ども達には、"おばあちゃんと接するのはいいねんで"と伝えています。僕のおかんも向こうのおばあちゃんもなかなか自由に行き来できない距離にいるんですけど、実家に帰るときは連れて帰ったりもしますよ。もちろん、子どものタイプにもよると思うんですけど、住んでいるところと違う環境に行ったり、会ったことのない人と会ったりするのはいい経験だと思うので、僕は積極的に連れて行ってますね。あと、この本を書いたことも、2人ともすごく喜んでくれています」
――それは嬉しいですね。また、善しさんのすごいところは写真、イラスト、文章すべてを手がけているところだと思うんですが。
「ありがとうございます(笑)。おばあの家の写真を観た恭子おばちゃんが"恥ずかしい"って言いながら泣きそうになってました。表紙のイラストはパソコンで描いたんですけど、挿絵はモノクロということもあって違うテイストで描きたくて。で、割り箸を削った先に墨をつけて描いていったんですよ」
――だから、味わいある優しい感じのイラストになってるんですね。
「そうですね。学生時代の図工を思い出しながら描いたんですけど、ええなと思いました。文章ももちろんなんですけど、イラストで表現したい部分もあったんで描けて良かったです」
――どんな人に読んで欲しいですか?
「これから年末なので、帰省される方とかにも読んでいただきたいですね。大人になると疎遠になったりもしがちですけど、この本を読むことで家族に会いに行くきっかけになれたら嬉しいです。もし会えない状況であっても、知っている人に話を訊いたりほしいなと思います。......僕はね、1分1秒でも多く子どもと一緒にいたいタイプなんですよ。仕事が終わったらすぐ家に帰りたいですし、子どもを仕事場に連れて行きたい。今、月に1回、幕張(イオンモール劇場)で仕事が入ってるんですけど、ほぼ毎回、子どもを連れて行ってます。やっぱり家族といられる時間っていいもんですよ。だから、少しでも家族について考える機会になれたらいいなとは思いますね」
――では最後に、よしもとニュースセンターをご覧のみなさんに、本のPRをもう一度お願いします!
「文章のレベルは、小学校3年生の国語の教科書くらい(笑)。読みやすいので、立ち読みでもいいんで手に取ってもらえれば。で、気に入ったら買ってください。もちろん、人によって読むタイミングも大事になる本だと思うので、家族について考えたいなど思ったときに、手に取ってください。あと、年末年始の帰省のお供にも是非。よろしくお願いします!」
●書籍情報
ハイハイからバイバイまで~田島のおばあちゃんとぼくのヘンテコな二人暮らし
著者:山田善し(COWCOW)
価格:1404円(税込)
ワニブックス刊
【山田善し】【COWCOW】