4月8日(日)にリニューアルオープンするなんばグランド花月では、劇場玄関の庇(ひさし)に、芸人の名前が描かれた「伝統工芸看板」を掲げることになりました。これは昨年スタートした47都道府県エリアプロジェクトの一環で、各地に住んでいる芸人や社員から寄せられた伝統工芸に関する情報をもとに、工芸士の皆さんにお声がけして実現したもの。全国から多数のご協力をいただいたなかから、選考委員会が選びに選んだ9組が、実際に看板を作成。そのお披露目と大賞の選考・発表が、2月2日(木)に行われました。
会場となったなんばグランド花月の幕が上がると、新たな装いの劇場正面玄関が描かれた巨大パネルの前に、笑福亭仁鶴、桂三枝、西川きよし、中田カウス・ボタン、月亭八方、桂文珍、オール阪神・巨人と、よしもときっての大御所芸人が勢ぞろい。司会のなるみによる大賞についての趣旨説明に続き、弊社代表取締役会長・吉野伊佐男のあいさつからスタート。吉野は参加していただいた全国の伝統工芸士、自治体などの皆さんへのお礼とともに、「この看板大賞を契機に、また、地域の絆、全国の絆をむすんでいきたい」と希望を語りました。
ここでいよいよ、看板を手がけた伝統工芸士の皆さんが舞台へ。自己紹介ののち、それぞれの看板作品が公開されました。覆っていた布が除かれ技を凝らした作品群がお目見えすると、会場からは大きな拍手が。舞台上の芸人らも、立ち上がって近くでまじまじと眺め、お互いの看板を見あったり、感想を述べあったりするなど、興味津々の様子です。
さっそく、なるみとともに芸人らが、自らの名前が描かれた看板について印象を述べていくことに。桂文珍の看板は、群馬県の沼田指物による作品。「キレイでええやん〜」と大絶賛の文珍は、思わず「これ、買うたら高こつくやろなあ……いや、関西人なんでつい(笑)」と漏らし笑わせます。指物・家具吉澤の吉澤良和さんに、素材や製造工程についてあれこれ質問した後は、「終わったら家に持って帰りたいなあ……」としみじみ呟いていました。
月亭八方の看板は、鹿児島県の大島紬と屋久杉のコラボレーション。「自前でも大島の着物持ってないのに……」と看板を熱心に見つめる八方に、鹿児島県特産品協会の池田誠さんは「文字の書体も師匠をイメージして作らせていただきました」と一言。こちらも大変気に入ったようで、「これ……持って帰りたい感じがいたしますが(笑)」と、文珍に続いてまさかのお持ち帰り希望が飛び出し、なるみが慌てて止めに入っていました。
中田カウス・ボタンの看板は2種類。まずは沖縄県・琉球ガラスの看板から。「深みがあって温かい感じですね」とコメントしたカウスは、琉球ガラス工芸協会業組合の瑞慶覧直人さんを、その歴史や成り立ちについて質問攻めに。「戦後に始まった工芸で、駐留米軍の廃瓶などを使ったのが始まり」と聞くと、「ほお〜! エコですね!」と笑顔を見せていました。和歌山県・紀州漆器の看板には、「和歌山の塗りは歴史がありますよね。室町ぐらいから?」と、これまた歴史に造詣の深いカウスならではの発言が。紀州漆器協同協会・池原弘貴さんと、和歌山トークでも盛り上がります。一方のボタンは「ツヤが素晴らしい。これに負けんような芸をせなアカンなあ」と、見事な作品を前に決意を新たにしていました。
笑福亭仁鶴の看板は、広島県・広島仏壇によるもの。広島仏壇伝統工芸士会の岩本修造さんは、「私どもは字を先に彫って塗りますので、どなたのお名前で作らせていただくか決まるまで気をもみました」と裏話を披露。仁鶴は「この名前は難しいんですよ。笑福亭が長いし、仁鶴は短い、このバランスがね。だいぶ考えはりましたか? ほんま?(笑)」と茶目っ気たっぷりなコメント。さらには「仏具の技術者に作っていただいて、うれしいような、心細いような(笑)。ありがとうございました」と笑わせました。
西川きよしの看板は、滋賀県・上丹生彫刻で作られました。井尻彫刻所の井尻一茂さんによると、「100周年ということで、めでタイの鯛を彫らせていただきました」とのこと。これにはきよしも大感激で、「まさに小さなことからコツコツと……作っていただいたんですね」とニッコリ。春のオープンに合わせて桜も彫られた、華やかな看板に見入っていました。
桂三枝の看板は、愛媛県・菊間瓦によるもの。屋根の先についている鬼瓦を装飾用に小さくしたという飾りについて、いぶし瓦工芸士の小泉信三さんは「普通のものではなく、笑っているんですよ。笑う鬼に福来たる、というのと、瓦だけに“かわら”ぬ人気が続くように」と、密かに込めた思いを明かしました。これには三枝も感心し、「ありがたいですね。重厚な感じがしていい」と大満足。とはいえ最後には「あの〜、名前より瓦のほうが大きいような気がするんやけど、気のせい?(笑)」と聞き、会場の笑いを誘っていました。
オール阪神・巨人の看板も2種類。まずは石川県・山中漆器から。「色目がすっごい渋いですよね」と、贅沢な塗りに目を奪われる巨人。阪神は「怒られそうですけど、劇場以外でも使えそうですよね。この世界やめてスナックするねん、というときとか」と言い、巨人から「そのときはまた別に作ってもらい!」とツッコまれていました。北海道・旭川木彫の看板には、巨大なヒグマが。旭川木彫・工芸品協会の菅野秀雄さんによると、「北海道を代表するものであり、阪神・巨人さんをイメージして」とのこと。すかさず巨人が「ヒグマと、(阪神を指さし)子グマで(笑)」と笑わせつつ、「これは子どもさんが喜ぶんちゃうかなあ。一番人気かも!」と感想を述べていました。
全作品が紹介された後は、ついに大賞が発表されることに。素晴らしすぎて選考委員が非常に困った、ということで、「師匠方のご意見もお聞きして、この9作品すべてを大賞ということにさせていただき、春夏秋冬もしくは3ヵ月、4ヵ月交代で掲げさせていただくということでいかがでしょうか」と吉野が会場に問うと、またまた大きな拍手が沸き起こりました。
発表後の囲み会見では、仁鶴が「より演芸場の雰囲気が正面に出まして、お客様の目に留まって、興味をもっていただき、一人でも多くご入場いただいたらうれしい」とコメント。カウスも、「やはり看板は芸人の顔ですから、舞台も、よりもっと責任持って務めなアカンなと思います」と真剣な表情で語りました。看板を掲げるスケジュールは未定ですが、「九つ目の看板はかなり先になるということですね」と八方が言えば、文珍が「それまで生きてるかどうかやね(笑)」と合いの手を入れて笑いが広がる一幕も。「これを機会に、たくさんの人に伝統工芸のことを知ってもらうのも大事。そのお手伝いができれば。お客さまには、看板だけでも見に来ていただけたらなと思います」という三枝の言葉には、全員が大きく頷いていました。
4月8日のオープン時には、果たしてどの看板が上がっているのか!? ぜひ、今から楽しみにお待ちくださいね!
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