神保町花月 ~桂文枝プロデュース~ 戀する落語会 パートⅤ 「三語は5回"笑ぶ"する」
10月6日(月)、神保町花月にて、六代 桂文枝が若手育成のためにプロデュースする『戀(こい)する落語会』の第5回公演が行われました。
今や毎月恒例となったこの落語会、今回は「三語は五回"笑ぶ"する」という副題のもと、天満天神繁盛亭などを中心に関西で活躍する桂三語がメインとなり、「落語」や「トーク」など5回の"笑ぶ=勝負"に挑む、という趣向で開催。さらに桂三四郎、桂三輝、桂三度といった若手が創作落語を披露、そして大トリを彼らの師匠である桂文枝が務め、年配の上方落語好きから若い落語ファンまで、満場の観客を大いに楽しませました。
まずは今回の主役、桂三語が幕前に登場し、本日1回目の"笑ぶ"となる「オープニングトーク」を。東京ではまだまだ知られていない自分の名前を冠した落語会に足を運んでくれた観客の皆さんに感謝の意を表しつつ、いかに自分が無名かをネタに爆笑のエピソードトークを繰り広げます。
そして幕が開くと、桂三度が登場し、創作落語を披露。演目は、退学を決意した生徒を"たとえ話"で引き留めようとする高校教師の姿をコミカルに描く『先生ちゃうねん』。生徒がラクロス部員ということで、人生を無理やりラクロスにたとえながら必死に説得を試みる熱血教師に扮する三度の演技に、会場は早くも大きな笑い声に包まれていました。
続いては桂三語が、古典落語の名作のひとつ『天災』で、2回目の"笑ぶ"に挑みます。『天災』とは、短気でケンカっ早い主人公が、有名な心学の先生のもとを訪ね、ご高説を賜るが...という"長屋もの"の一席。「どんな揉め事も天災だと思ってあきらめなさい」という先生の言葉を曲解して、的外れな振る舞いで騒動を巻き起こす主人公を、三語が愛嬌たっぷりに演じ、爆笑の中にも人情味を感じさせる、落語ならではの世界を表現してみせたのでした。
三番手は、カナダ出身の金髪の落語家・桂三輝(サンシャイン)。マクラで「日本人とのコミュニケーションは難しい」と自らの失敗談を語った後、引き続き"コミュニケーションの齟齬"をテーマにした創作落語『ダレがファースト』を披露し始める、という見事な流れに、客席からは感嘆の声がこぼれます。ファースト=ダレ、セカンド=ナニ、サード=シランネン、という変な名前の選手ばかりを雇うことになった野球チームの監督が、友達にそのメンバーを紹介していく、というシュールな会話劇で、会場を大いに沸かせました。
その後、仲入りを挟んで、三語の3回目の"笑ぶ"となる「ゲストトーク」のコーナーへ。実は当初、FC東京の太田宏介選手のゲスト出演が予定されていたのですが、そのわずか数日前、太田選手が「キリンチャレンジカップ2014」の"SAMURAI BLUE"(日本代表)のメンバーに選出され、その試合に備えるため、急きょ休演することに。代わりに太田選手からはビデオレターが届き、「今日はそちらに行けなくて申し訳ありません。僕の代役として面白い奴を送り込みます」とのメッセージが贈られました。
そして「面白い奴」との紹介を受けて舞台に現れたのは、同じFC東京の吉本一謙選手。照れ笑いを浮かべる吉本選手を、大のサッカー好きである三語は力強い拍手で迎え、さっそくサッカー談義がスタートします。この日出演する落語家たちからの質問に答えたり、三語と二人でリフティングをしたりと、終始楽しそうな吉本選手の笑顔を、観客たちも皆、癒されながら温かく見守っていたのでした。
トークコーナーが終わると、桂三四郎が登場。近年成長著しい彼が披露するのは、オーケストラでシンバルを担当するも、気弱な性格が災いし、ついには家に引きこもるようになってしまった若者の悲喜劇をつづる創作落語『オーケストラのはしっこで』。イケメン落語家として注目を集める彼が、確かな芸の持ち主でもあることを証明するかのような圧巻の大熱演を見せていました。
そして、文語が4回目の"笑ぶ"としてお茶子(座布団を返し、名ビラをめくる進行役)を務めた後、いよいよ大トリの桂文枝が登場し、創作落語『友よ』を披露。ともに75歳を迎えて温泉旅行へやってきた、幼なじみの2人の男のやりとりを、軽妙に、かつ味わい深く演じてみせる圧倒的な表現力に、観客もときに笑い転げ、ときに大きくうなずきながら、文枝落語を心から楽しんでいるようでした。
文枝の高座が終わると、文語が吉本選手とともに再度登場。文語のラスト5回目の"笑ぶ"ということで、師匠の文枝、スペシャルゲストの吉本選手との3人によるエンディングトークが繰り広げられました。会話は盛り上がり、最後はなぜか、吉本選手が今度試合でゴールを決めたら、文枝の十八番ギャグ「いらっしゃ~い!」のポーズを取ってもらおう、ということに。文枝直々の指導で吉本選手の渾身の「いらっしゃ~い!」が決まり、拍手喝采が鳴りやまぬ中、5回目の『戀する落語会』は終幕を迎えたのでした。
なお、待望の次回公演は11月16日(日)、神保町花月にて開催。今年9月に大名跡を襲名した、林家染弥改メ三代目林家菊丸が中心となってお届けします。
神保町花月 ~桂文枝プロデュース~ 戀する落語会 パートⅥ
「染弥は名前を変えて"笑ぶ"する」~染弥改メ三代目林家菊丸襲名記念~
日時:11月16日(日) 開場12:30/開演13:00
出演:[落語]林家菊丸/月亭方正/桂三輝/桂三度/[ゲスト]佐久間一行
チケット:前売,800/当日,000
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