東京グランド花月
12月24日(水)、東京・明治座にて、『東京グランド花月』の初日公演が開催されました。
よしもと100年の歴史に裏付けられた看板寄席"グランド花月"の待望の東京公演となる本公演は、12月24日(水)、25日(木)の2日間、全3公演が行われ、24日は桂文枝、中田カウス・ボタン、西川のりお・上方よしお、COWCOW、トータルテンボス、NON STYLE、林家菊丸、もりやすバンバンビガロがそれぞれネタを披露し、後半は吉本新喜劇が上演されました。
満員の客席の期待が高まる中、トップバッターとして登場したのはNON STYLE。井上の「狼男って哀しいですよね」という問いかけからスタートした漫才に石田が「おまえよりマシやん。おまえ、哀しい生きもの界の王様やん。だっておまえ、ツイッターで『おはよう』ってつぶやいたら『おまえは目覚めるな』って返ってきたんやろ?」と、のっけから井上の哀しいエピソードを披露。また、哀しさを伝えるために井上が石田に「オレ狼男やるからおまえオレの最愛の人やって」と頼むのですが、石田が「死んでもイヤ」と言うので話がなかなか進みません(笑)。話は狼男よりもキリン男やゾウ男、アルパカ男の方が哀しい......とどんどん脱線していくのでした。
続いて登場したのはトータルテンボス。トータルテンボスといえば藤田のアフロヘアがトレードマークだったのですが、この日登場した藤田は坊主頭。まだ坊主頭がそれほど浸透していなかったようで、登場しただけで客席に軽いざわめきが起きていました(笑)。また、大村がお客さんに「トータルテンボスのこと、知ってたよ~、という方......」と問いかけたので、チラホラ手が挙がりかけたのですが、続けて大村が「ちょっとはにかんでもらえますか?」と言ったため、ドッと笑いが。他にも、藤田のことを紹介しようと大村が「褐色の恋人って呼ばれてまして......」と「藤田」ではなく「スジャータ」の紹介をしたり、生徒2人の設定で会話をしようとして「オレが生徒Aやるから、おまえ生徒Fやって」(大村)、「Bでよくねぇ?藤子不二雄か!」(藤田)というやりとりがあったり、内股ばかり叩かれて怒った藤田が「痛いよバカ!」と言うと、大村が「バカって言われる方がバカだよ!」と言ったため、言い返そうとした藤田が「お、おう......」と言葉を失ったりと、爆笑に次ぐ爆笑の連続でした。
次に登場したのはもりやすバンバンビガロ。一輪車で登場した彼は、最初にリンゴ3個をジャグリングしながら食べるというスゴ技を披露し、あっという間に観客のハートを掴みます。その後、お客さんに輪っかを渡し、一輪車に乗りながらお客さんが投げる輪っかを首にひっかける、という技を披露しようとしますが、お客さんの投げるタイミングや投げ方などがかなりめちゃくちゃなため、まったく成功しません(笑)。何度も立候補するお客さんの男の子に「え~、また自分? 大丈夫?」と言いながら輪っかを渡したり、お願いしますとお客さんに輪っかを渡したつもりがお客さん自身が首にひっかけて受け取ろうとしてしまい、「普通に手で受け取って~!」とツッコんだりと、お客さんとの息の合った(?)かけ合いが楽しく、終始盛り上がっていました。
続いてはCOWCOWの登場。お客さんからの拍手に、丁寧に手を振って応える2人。2人が手を振り続けるため、なかなか鳴り止まない拍手に多田が「キリないんでもうやめてください~」と笑顔でピシャリ。回文対決などが行われたあと、いったん漫才が終わったか......と見せかけて再度登場し、「アンコールありがとうございます」と多田。続けて「リクエストにお答えして、『あれちょっとやってよ~』っていうの、あります?」と言うと、客席から「あたりまえ体操!」という声が挙がります。そのリクエストに応え、冬らしく"ゲレンデバージョン"でお届けしたあたりまえ体操は、「スキー場でめっちゃカッコいい人がゴーグル外したらそうでもない」というあるあるネタでした。
林家菊丸は大阪のおばちゃんのあるあるネタを披露。普通はどんなに混んでいようが女子トイレに並ぶものですが、大阪のおばちゃんは、女子便所が混んでたら男子便所に入り、注意されると「私、今日だけ男やねん」と平然としているというエピソードを披露したり、大阪の親子と東京の親子の会話の違いを紹介したりと、東京公演らしいエピソードが続きます。また、田舎の純朴な中学生は何を言っても笑ってくれるから、芸人仲間の間では田舎の中学生相手にネタを披露することを「リハビリ」と呼んでいる、という話や、田舎で披露したネタを大阪の小学生相手に話したら「死ね!」と言われたなど、住んでいる場所が違うだけでこれほど反応が違うものかという驚きのエピソードなども披露していました。
続いての登場は西川のりお・上方よしお。登場するなりのりおが「ただいまご紹介にあずかりました、津川雅彦です」と自己紹介をして客席を沸かせたあとは、芸人の結婚の話題について触れ、「ブラマヨは2人ともブサイクなんやからハリセンボンと結婚したらええのに」など、いろんな意味でムチャクチャなことを提案したかと思えば、今年世間を賑わせた号泣議員の泣きマネをしたり、しまいには自身の鉄板持ちネタである「ツクツクボーシ」につなげて拍手喝采をさらっていましたが、よしおに「おまえそれ、ツッタカターやないか」とツッコまれるのりお。確かに、言われてみればツッタカターの振りで「ツクツクボーシ」と言っていたのですが、客席も特に違和感を感じていないようでした(笑)。そこで「誰もその間違いに気づいてないやないか」と反論するのりおでしたが、気づいてもらえないことがいいことなのかどうか......(笑)。
中田カウス・ボタンは「今年もあっという間でしたね」という挨拶に始まり、「健康のためにストーカー以外何やってんの?」(カウス)、「ストーカーなんかしてないわ!」(ボタン)というやりとりのあと、「でも、健康のために今年から泳ぎに行ってます」というボタンに「それ、泳いでんのとちゃう。泳がされてんねん」と指摘するカウス。「何に?」と不思議そうに聞くボタンに「警察に」とカウスが答え、爆笑をさらっていました。その後、引っ越しの挨拶状についての話となり、いろんな方面に気を遣いすぎてどんどんわけがわからなくなっていく文面を作成していくボタンと、さらに混乱を招くようなアドバイスや指摘ばかりするカウスに、客席は大いに沸いていました。
そしていよいよネタパートのトリ、桂文枝の登場です。鮮やかな松が描かれた華やかなセットをバックに登場する文枝。出囃子が『コーヒールンバ』だったことを受け、「久しぶりの明治座でございます。こんな立派なセットと『コーヒールンバ』が合うのかどうか......(笑)」と話したあとは、来年で放送45周年を迎える自身の番組『新婚さんいらっしゃい!』に触れ、一人の司会者がやっている番組としてはいちばん長いということを説明したあと、「みなさんからよく、イスから落ちるときのことを心配されるんですが、どっちか言うたら最近は、その後起き上がる方が大変なんです」と告白し、爆笑をさらっていました。また、襲名して2年以上たつ「文枝」という名前がなかなか浸透しておらず、未だに街では「三枝」と呼ばれると嘆いていたのですが、ふとした折に自分のことを「三枝」と言ってしまい、「今のはネタじゃないんです。自分でもまだ、自分が文枝ということが浸透してないんかな(笑)」と自虐っぽく語る一幕もありました。
その後、30分の休憩をはさんで、山田花子のナレーションで出演者が紹介されたあとは、吉本新喜劇『ステキなステキなクリスマス』のスタートです。
舞台はクリスマスらしいデコレーションが施された『ペンション花月』。このペンションを巡ってさまざまな出来事が巻き起こるのですが、まずはペンションに泊まる2組のカップルが登場。ペンションで働く花子がお客さんにふるまうお茶をこぼし、ぞうきんでふいてその絞り汁を湯のみに入れて出すという暴挙に出たため、カップルが怒っていると、オーナーの本田みずほが現れ、カップルに謝罪します。
同じくペンションで働く山本吉貴も登場し、お客さんがなんとか怒りをおさめ、部屋に通された後は、警官が2人登場。まずは警官役のシベリア文太が「失礼します!」と言いたいらしいのですが、どう聞いても「千円札!」としか聞こえません(笑)。その後も「ちょっとお聞きしますけど」が「ちょっとおチチしますけど」としか聞こえないなどの滑舌悪いトークが続いたあとは、いよいよ間寛平演じるおじいさんの登場です!
杖を振り回しながら登場し、お決まりのセリフ「ワシャ止まると死ぬんじゃ」が出たあとは、このペンションで働きたいという寛平。年齢的に無理だと断る山本ですが、オーナーがあっさり「人手不足だから」と言い、採用されることに。そんなドタバタがあった後は、なにやら怪しいNGKリゾート開発会社の社長とその秘書が、『ペンション花月』を買い取りたいとやってきます。オーナーは「売る気はない」と断りますが、「知ってるんですよ。このペンション、後継者がいなくて困ってるんでしょ?」と言われ、言葉に詰まります。実はオーナーには娘がいたのですが、5年前に家を飛び出し、行方がわからなくなっていたのでした。
困っているオーナーを助けようと寛平が出てきますが、なぜか着ていた服をすべてその下に着ていた肌着の上下に突っ込み、謎の格好になりながら、「来い! 来い!」と相手を挑発するので、相手も戸惑いを隠しきれず、「どこのゆるキャラやねん!」というツッコミも飛び出します。戸惑ったリゾート開発会社の2人はいったん出直すとペンションを後にしますが、入れ替わりにみやげもの屋の内藤さん(ポテト少年団・内藤輝彦)が「かくまってくれ!」とペンションに駆け込んできます。
内藤さんを追って登場したのが借金取りの辻本茂雄と子分2人。辻本の登場に思わず拍手が巻き起こります。なぜ自分たちはここにいるのか、それは借金を返してもらうため、といった内容のトークを、3人でセリフを少しずつ分散し、クルクル回りながら順番に話す「ローテーショントーク」、ミュージカル調に話す「ミュージカルトーク」、輪唱で話す「輪唱トーク」などさまざまな話し方で説明した後、今年らしく「アナと雪の女王トーク」で締めていました。これは「おまえを一発ギャグで笑い殺す!」と宣言してからやったギャグが全くウケず、その後「少しも寒くないわ♪」と歌って締めるというもので、場内を爆笑の渦に巻き込んでいました。
その後、寛平&辻本の貴重な絡みがあり、借金取りの3人がいったん出直そうと帰りかけたその時、寛平が「待てや」と一言。ここからは(おそらく)台本にまったくないアドリブの応酬が始まり、辻本が帰ろうとするのを何度も「待てや」としつこく止める寛平に、辻本も「ジジイ同士の初絡みの緊張も解けたわ!」と思わず本音を漏らしたり、止めるだけ止めて何も言おうとしない寛平に「なんもないんやったら呼び止めんとって!」と呆れたりしていましたが、しまいには「お願いやから帰らして!」と懇願する始末(笑)。
見応えのあるジジイ2人のやりとり(笑)のあとは、5年前に飛び出したペンションオーナーの娘・公美子(中野公美子)が、恋人・遠藤かおるを連れ、ペンションに戻ってくるのですが、遠藤を追ってまた別の借金取りの2人組がやってきます。借金取りの金成(ギンナナ・金成公信)が柄もののシャツを着ていることにさっそく絡む寛平。「12月24日やで。シャツ1枚で寒ない?」とか、シャツの柄を「アロハでもないし......なんなん?」と不思議がり、言いたい放題の寛平に、最初は戸惑いながらもなんとか返していた金成ですが、しまいには「ひとつ言っとく。予定にないことをやるな!」とビシッとツッコんでいました(笑)。
結局、リゾート開発会社の社長はその悪徳な仕事ぶりが露呈し逮捕され、みやげもの屋の内藤さんはなんとかお金をかき集めて借金を返済、辻本が花子に一目惚れしたおかげで、内藤さんの返済したお金を辻本が金成に渡して借金は綺麗になり、公美子は結婚してペンションを継ぎたいと宣言、きれいに全てがおさまったところで辻本がペンションから一歩出て空を見上げ「雪降ってきたな......」とカッコよくつぶやいて去り、幕......かに思えましたが、そこで寛平が「雪降ってへんよ」と余計な一言を発したため、なかなか幕は降りません(笑)。
「(雪降ってへんよとか)言うな(笑)!」と辻本がツッコみ、またもや引っ込もうとしたところを引き止められまくる辻本が呆れて「何をしたいんや、オマエは」と言うと、「何をしたらええんや」と返す寛平。しまいには2人で握手を交わし、「このまとめなんやねん!」と辻本が絶叫、寛平が「なかなかええヤツや」とご満悦になったところで、ようやく幕、となりました。
予定よりかなりの長丁場となった新喜劇でしたが、貴重な絡みやアドリブの応酬など見応えのあるシーンが満載で、観客も惜しみない拍手を贈っていました。
年齢層も幅広く、たくさんのお客さんが楽しめる「グランド花月」。これを機に東京にも定着し、これからもたくさんの方に楽しんでもらえる寄席として成長していくことでしょう!
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