来たる10月31日(金)、桂三風がなんばグランド花月で『桂三風30周年独演会』を開催することが決定しました。
桂三風は、1984年に桂三枝(現・文枝)に7番目の弟子として入門。創作落語に挑戦し続ける師匠の文枝の意思を継ぎ、数々の創作落語を作り、演じてきました。2001年には、客席と高座が一体となって噺を運ぶ独自のスタイル「客席参加型落語」を確立。史上初めて、独自の高座スタイルを商標登録しました。そんな桂三風が、落語家生活ついに30周年を迎えます。
8月7日(木)、『桂三風30周年独演会』開催発表会見が行われました。会見には桂三風と、師匠、桂文枝も出席。
まず桂三風からご挨拶がありました。「吉本の落語家として、やはり本拠地のなんばグランド花月で落語をするのがひとつの目標であり、夢でした。15周年、20周年、25周年と、5年おきにやってきまして、30周年はやはり大々的に、(文枝)師匠と、オール阪神・巨人師匠にゲストに来ていただきます。そして自分が持っている作品の今一番おもしろい2作、そして自分が気に入っている落語を映画化して、皆さんに楽しんでもらうという風に思っています」。と意気込みを語りました。また、「師匠のように、大きな会のときにやはりネタおろしをしてやったらどうやと思っていたんですが、やっぱり鉄板ネタで皆さんに大いに笑ってもらおうと思っています」とも。
三風の師匠、桂文枝からもご挨拶。「三風が入って30年。今回、独演会というわけなんですが、本当に30年も経ったのかなぁなんて思っています。そんなにやっていたのかな、と」と語りました。また、三風を弟子に取ったきっかけも。「三風くんは、私が枝雀師匠とやっていた『三枝と枝雀』という番組の中でコーラスみたいなのがあり、それに応募してきました。その打ち上げの席で『落研を出た子や』ということでしたので、『それならやってみるか』と。普通はそう言われても、『いや、それはちょっと…』と臆するものでございますが、彼は(落語を)やりまして、『おもしろいやないか』と。私は、相手は素人で学生さんですから、お世辞でね(笑)。そしたら本人は真に受けて、『プロに言われるぐらいやねんから、やれるんとちゃうかな?』と思って入ってきたのが、30年前ということでございます」と当時をふり返りました。また、「三風」と付けた理由も。「字画がいいというのもありましたし、その頃は私も三枝で、『枝』という画数と、『風』の画数は一緒だったものですから、いい名前、と思いました。また、彼には落語界に新しい風を吹かせてほしいという思いでこの名前を付けたんですが、どうも今まで風が吹いてるように思えないような高座を続けてきました。そよ風みたいな、生温かい風とか。私としては、もうそろそろ旋風を起こしてほしいと思っています」と期待を込めて語りました。また、「ここ2、3年、私も舞台の袖から聞くようになりましたが、彼は独演会などに起用することも多くなりました。それまでは、わりと上の人たちを使っていたのですが、彼もがんばっているということで。ここ2年、3年で非常に落語が良くなってきたと受け止めています」と三風の成長をうれしく感じているよう。「彼もいろんなことをやりまして、路上パフォーマンスをバック転ができる人とか中国語を操れる者とかを使って、自分は何もせんと、親方みたいな感じで」という辛口(!?)に記者陣から笑いが。「そんなところもありまして、ですからどうしても表現が大げさになっていて、それが僕はどうも好きじゃなくて。『もうちょっと普通にしゃべれよ』と言うてたところがありました。最近は、そのへんのところは抑えたしゃべり方という感じで」と三風の近年の成長を語りました。「この間は、私がやった『引き出物』という落語をやってくれましたが、これが誠によかった。かみしもはちょっと間違えてましたけど(笑)。表現力がよかった。また、自分で工夫するというか。その前に『ハンカチ』という落語をよくやってくれていたんですが、それは2丁拳銃(小堀)が作った作品で。そろそろ自分の作品も作ったらどうやと言ったら、こうしていろいろ作品も作ってきたわけですけども、今回は大変自信のある落語という2作。これは本当に彼が自信を持って。鉄板ネタと言ってますけども、私は聞いたことがないんです。私が聞いているのは『ハンカチ』と『引き出物』だけで。私としては、最近の『引き出物』は非常に秀逸だと思っています。それから進化した三風をきっと見せていただけるもんやと思っています」と期待をかけました。「もう30年ですので、そろそろここで旋風を巻き起こして世間にアピールして、大きな看板になって、落語界を引っ張って行ってほしいな、と。年齢的にも30年やっているということは、50歳を過ぎたということですから。このへんでひとつ、心を入れ替えて、稽古の上に稽古をして。本当に、命をかけてやってもらいたいと思います。よろしくどうぞお願いします」と激励しました。
師匠の言葉を聞き、三風は「『三枝と枝雀』の音楽の生徒をやっていたときに、打ち上げで、『落研やからいっぺん落語やれよ』と言うていただきました。そのときも創作落語をやりました。『熱湯甲子園』というやつで」と、落語の内容を説明。「一人暮らしの学生が、コンビニへ行って熱湯甲子園というカップ麺がある、これは不思議やな、なんやろうとお湯を注いだら、応援団とかチアガールが出てきて『一人暮らしは寂しくないぞ、応援してるぞ』と言って部屋の中でうわーとやる、という」とふり返ります。「ワケのわからん落語で、『こんなんでええんかな?』と思ってたら『おもろいやないか』と言ってくださったので。『君、落語家になりたいんか?』と聞いていただいたので『そんなん考えたことないです。夢のような話を言わんといてください。でも師匠、サインだけはお願いします』と、師匠に扇子を出しましたら、そこに『夢から始まる 桂三枝』と書いていただきまして。落語家なんか夢のような話です、と言うてるのに『夢から始まる』と書いていただいたんで、てっきり師匠にスカウトしていただいたと思っていました」。その後、弟子入りをして2年間、文枝の家で修業した三風。「最後の年に、師匠と一緒に。カバンを持って回りましたら、楽屋口にたくさんのファンの方がいらっしゃいました。で、誰にでも(サインに)『夢から始まる』、『夢から始まる』と書いていらっしゃったんで(笑)、『あ、別にスカウトじゃなかったんやな』と、あの時初めてわかったんですが。でも、あのときの勘違いがきっかけで落語界に入れて、30周年を迎えることができました。本当に師匠に感謝しております。ありがとうございます」と改めて感謝の気持ちを言葉にしました。また、「師匠の創作落語はすごくクオリティが高いし、なかなか追いつかないんですけど、できるだけ師匠に近づける様にいい作品を作っていきたいと思います」と、創作落語への思いも。
今回は、独演会のオープニングに約20分間を予定しているサイレント映画『下町の理髪店』も上映されるということで、その内容にも触れました。「『ゴルフ夜明け前』が映画化になったり、師匠の作品が映画やドラマの題材になっていくのをすごくうらやましく見ておりました。自分も、作品を何か落語以外の形で残したいなと思いまして。全編映画にするとなるとお金もかなり高くつきますので、サイレント映画でショートムービーにしたら独演会の予算ぐらいでできるんじゃないかな、と。それで自分が気に入っている『下町の理髪店』という話を映画化させていただきました」とのこと。『下町の理髪店』は、散髪屋の常連客のヤンキーが主人公。力がありあまあったヤンキーは相撲界に飛び込むも、相撲取りとしては大成せずに鳴かず飛ばずのまま帰郷。断髪式がなかったため、理髪店の主人に「まげを切ってくれ」と頼み…。というストーリー。ほのぼのと笑って泣ける内容です。出演者は、理髪店の主人を三風が、相撲取りの役を桂三金、親方を桂文福など、そのほかの役も落語家が演じます。
この話を思いついたきっかけは、三風と同郷の、滋賀県出身の蒼樹山の断髪式に出席し、蒼樹山のまげにハサミを入れたとき、蒼樹山から聞いたエピソードが元になっているそうです。「断髪式をやってもらえるのはほんの一握りの力士だけで、たいていは部屋で親方が切ったりとか、実家で親が切ったり、というのが多いんや、という話を聞きました。じゃあ、その日の当たらない力士の話を作ってみようと思って、作ったのがこの話です」と作品への思いをかたりました。「僕はやっぱり、自分が体験しておもしろいなと思ったものを、できるだけ落語にしていきたいと思っています」とも。
今回、披露する落語の話も。前半に披露する『目指せ!ちょっと岳』は、上毛高原で見かけた登山に向かうおばちゃんがたのエピソードをモチーフに。後半に披露する『農といえる日本』は、都会へ行ってしまった若者が故郷へ帰って農業を始めるという落語。「日本の農業に明るい未来を見せたい、という思いで作りました」とのことです。「この2作は、本当に笑って泣いていただけると思いますので、よろしくお願いします」と自信を覗かせました。
また、中入り後は、オール阪神・巨人以外にも、特別ゲストを招くとのこと。「ちょっと変わったゲストです。ある町のゆるキャラを呼んでいます」とのことです。
これらの企画内容を聞き、文枝は「三風は、なかなか上手になってきましたし、今までの、ただただ前に押して出していくという落語から、ちょっと引いたりもできるようになりましたので、おもしろくやってくれるんじゃないかなと思っています」と太鼓判。
また、サイレント映画については、「『どんな感じや?』と聞いたら、『まだ全然撮ってません』というから、9月から撮るということですが、『大丈夫かいな?』と。三風は今まで、だいたい困った時に頼ってくるというタイプですので、また近々になってから何か頼んでくるんちゃうかな? と思って、非常に恐怖を感じています(笑)。もう30年もやってるんやから、もう一人前になれよ、と思っておる次第でございます。30年の記念公演で、大きな看板になってくれると思います。たくさんのファンの人を引き付けてやっていただきたいです。最近では、女性のファンも増えているとか…」と話し、思わず三風が「えっ!?」と驚くひと幕も。
質疑応答では、「これまで、創作落語をいくつぐらい作られましたか?」という質問が。「作ったのは師匠に負けないぐらい作りました。200本以上は作っていると思います。ただ、打率が低くて…。師匠は9割9分のヒット作を作られますけど、僕は1割程度でございます。人様に聞いていただけるのは20本、30本ぐらいしかないんですが…」とのこと。創作落語を作るときの心構えとして、「僕がおもしろいなと思ったことを、落語というフィルターを通して笑っていただこうと思っています。自分が疑問に思っているような出来事も、落語というフィルターを通したら、きつくならずに語れるんじゃないかなと思ってやらせてもらってます」と語りました。
「30年をふり返っていかがですか?」という質問には「海外に移り住んでみようかなとか、それで大道芸をやったりしてたんですけど。ほかにもテレビのタレントになりたいなとか、いろんな欲があったんですけど、やっぱり落語が一番自分に向いてるなと思いまして。しっかりと自分の作品を作って、皆さんに認知してもらえるように、とここ何年かは思っています。かといって、テレビに出ないわけではないんですよ。でも、自分の作品をしっかり聞かせられる落語家に、これからもなりたいと思っています」と決意を新たにしていました。
また、サイレント映画についての質問も。「独演会で上映する以外にも、何か広がりはあるんでしょうか?」と尋ねられ、「今は独演会のみのつもりなんですが、好評でしたらいろんな会で上映して、また同じようなショートムービーをたくさん作って見てもらえるような会も作れたらいいなと思っています」と三風。「映画祭に出品とかそういったことは?」との質問には「考えてないですけども…」という三風に「沖縄国際映画祭があるやんか」と文枝。すると三風は「そんなん言うてもらえると思ってませんでした(笑)。沖縄国際映画祭に出せるようにいい作品を撮っていきたいですね」と語りました。
「前までは師匠の落語をやっていましたが、今は自分の落語に懸ける感じですか?」という質問も。「そんなことはないです。一応、お稽古は、古典と師匠の作品と僕の作品と、1日3つはそれぞれするようにしてるんです。古典は古典でちゃんとやってます。ただ、あまり期待されていませんので。繁昌亭でも僕が位置的にも創作を期待されるような番組の組み方が多いですし、並びのメンバーでも僕が入っている時はほかの創作メンバーが入っていなかったりして、うまくそういう風になってるんで、古典はなかなかやりにくいです。でもやるときは、古典もしっかりできるように準備はしています。師匠の作品も、もちろん毎日1つはやっております。最近、よくやっているのは『引き出物』です」と語りました。
「先ほど師匠の話にも大看板という話がでましたが、芸歴30年の重みをどうお感じですか?」という質問には「師匠の30周年のときは、『すごいなぁ』と思って見ていましたけど、自分が30周年はそないに何も。あまり重みも感じていません。ただの通過点だと思っています。やはり、師匠は30周年を迎えるまでにすごいチャレンジをなさってきていたと思います。僕が好きなんは、『ああ、懐かしの歌がよみがえる』。立って落語ができるんや!と思いました。すごく感動しました。あと、『スキヤキ』とか、『仲良くやろう雀』とか、何か、こうしたらおもしろいんじゃないかというのをいつも考えてらっしゃいます。そういうチャレンジは、僕はまだ。客席参加型落語というのを1回やった程度でたいしたチャレンジはしていませんので、そのへんのチャレンジ精神ももう少し磨いていきたいと思っています」と語りました。
チケットは、8月8日(金)から一般発売開始!
「落語界に旋風を巻き起こせ」という師匠の言葉を胸に、三風の落語家としての30年の集大成をぜひお楽しみください!
「桂三風 30周年独演会」
日時:10月31日(金) 18:40開場/19:00開演
会場:なんばグランド花月
出演:桂三風
ゲスト:オール阪神・巨人、桂文枝 ※他、お祝いゲストあり
料金:前売り3,000円、当日3,500円 ※全席指定
問い合わせ:0570-550-100(10:00〜19:00/チケットよしもと予約問い合わせダイヤル)
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