珠玉のロックを紡いできたバンド、音速ラインが明日10月24日(水)、初のセルフカヴァーアルバム『Grateful A.C.』をリリースします。ということで、二人へのインタビューを敢行。作品に込めた思いからはじまり、新たに始まるツアーへの意気込み、さらには音楽に対する姿勢まで…掘り下げて広がりゆく、二人のトークをどうぞご堪能ください。
左:藤井敬之(ボーカル・ギター)、右:大久保剛(ベース)
なお『Grateful A.C.』は、「逢瀬川」や「逢いたい」などファンの間で人気の高い曲を選りすぐって、アコースティックでセルフカヴァー。“切なくて美しい”彼らの楽曲の魅力を、より深く認識させてくれる作品に仕上がっています。そしてインタビューは、手渡しで届けてくれたような温もりが満ちる、アルバムについての話から始まります――。
――今回、なぜセルフカヴァーのアルバムを出そうと? 藤井「最近、これまでやってきたバンドスタイルとは別に、二人でアコースティックでライブをする機会がけっこうあったんですよ。そんな中で、僕たちはずっとメロディーを大切にしてきているんですが『あ、アコースティックでも伝わるな』と思ったのが大きいですね。そこで、じゃあ今までの曲の中からいくつか、アコースティックでレコーディングしてまとめてみようかって」
――そもそもの素朴な疑問ですが『Grateful A.C.』の“A.C.”ってなんですか? 藤井「アコースティック・カヴァーの頭文字です」
――なるほど。「アダルト・チルドレン?」「西暦?」とかよぎっちゃいました(笑)。 藤井「アダルト・チルドレンってのはいいっすね(笑)。そういうことにする?」 大久保「いいかも(笑)。っていうか西暦っていうのは、付けた時に実は僕もちょっと頭をよぎりました」 藤井「B.C(紀元前)とA.D(紀元後)がごっちゃになって(笑)」
――すいません(笑)。そんな風に今回、アコースティックで録音する中で、新たに感じたことはありますか? 大久保「単純な話ですけど、やっぱりメロディーがいいというのは、すごく感じました。曲がバンドだから成り立っていたわけじゃなく、曲自体でちゃんと立ってるなと。だからそう思えたということはむしろ、より歌が伝わりやすくなってるのかもしれないです」 藤井「それはあるかもね。基本的に僕らはひねくれ者なので、書いたメロディーを普通にやりたくないところがあるんですよね(笑)。だからいいメロディーを、あえて激しいサウンドに乗っけてきたとも言える。今回アコースティックでやることで、中心が浮き彫りになったのかなと思います」 大久保「でもまあ、ただのアコースティックにはならなかったけどね」 藤井「狙ったわけじゃないんだけど、ちょっとエモい感じになったかな。ま、やっぱりひねくれ者なんだね(笑)」 大久保「あんまりそこを強調するのもあれだけどね(笑)」
――でも本当、メロディーの良さが際だった作品ですよね。 藤井「そうですね。で、僕らもそう感じたときにふと浮かんだのが、かつて好きで聴いてきた80年代の音楽の感覚なんですよね。80年代の音楽って、そこを通った人なら今でも頭の中にメロディーが残って、いつでも口ずさむことができるじゃないですか」 大久保「『ルビーの指輪』とかね(笑)」 藤井「そうそうそう(笑)」
――来生たかおさんとか、村下孝蔵さんとか? 藤井「ああ、そうですそうです(笑)。つまりなんというか、サウンドだけじゃなくメロディーも含めた曲の力ですよね。それが今回、作品からは感じられるのかなと。だから今の若いコで、80年代を通ってない人には新鮮かもしれないです。歌謡曲のスゴさを体感したことがない人にはぜひ聴いてみてほしいし、きっと響くものがあると思います」 大久保「だからこれを聴いて、80年代の音楽をさかのぼってみるのもアリだよね」 藤井「あ、いいねえ。荒井由実さんとか…」 大久保「わあ、いいねえ(笑)」
――その話とも通じますが、今作は歌詞もより沁みてくる感じがします。 藤井「だとしたら、僕らとしてもすごく嬉しいです。やっぱり日本人って、歌詞で感じるところが大きいと思うんですよね。とりわけ最近、僕らの中でも歌詞への思い入れがより強くなってきたところだったんで、そう受け止めてもらえたら作った甲斐があります」 大久保「実は僕たち自身、そのことは音速ラインをやっていく中で、再認識してきたんです。すごく自然に、歌詞も大切なんだとだんだん気づいてきた」
――最後に収められた、新曲の『心の中にパレードを』の詞がまた印象的で。 藤井「今伝えたいメッセージを込めましたね。そして実はこれ、昨年出した前のアルバム『Alternative』の中にある『心のままに』の“次”という曲でもあるんですよ。『心のままに』では、“息苦しい世の中だけど、心のままに生きよう。人生一回きりなんだから”というようなメッセージを歌った。『心の中にパレードを』では、それを踏まえた上で“楽しい時はちゃんと楽しもう”ってことを詞にしました。イコール、それは笑顔になるってことだし、やっぱり笑顔は何物にも代えがたいですからね」 大久保「だからただのセルフカヴァーじゃなくて、この次のオリジナルアルバムへの懸け橋にちゃんとなっていると思います。必然性があるなと」
――あと聴いて思ったのですが、この季節にとりわけ合うんですよね。というか刺さりました(笑)。 大久保「あざっす(笑)」 藤井「ズバリ言っちゃうと音速ラインは…秋なんですよ」 大久保「秋に聴くと間違いなくグッとくると思います(笑)」 藤井「人肌恋しい時に聴くと、刺さります(笑)」
YouTube: 【新川優愛・井上正大主演】音速ライン「逢いたい」MV
――そして、まさに秋真っ盛りの今月末からはアコースティックツアーが始まりますね。 藤井「今回のミニアルバムを制作したのは、年内にもう一回ツアーを回りたいなというのも、きっかけとして大きいなんですよ」 大久保「でもどうなるんだろうね。想像がつかないくらい自由な雰囲気になりそう」 藤井「完全に二人だけで回るからね。相当ゆるい感じになるかもしれない(笑)。ただ今ちょっと考えているのが、すべての会場で即興で曲を作ってみようかなと。そうすると、みんなの思い出にもなるし、いいんじゃないかって」 大久保「参加している感じにもなるよね」 藤井「僕らも、気づいたらお客さんに混じって歌ってるかも(笑)」
――本当にやりそうですよね(笑)。だって前回のツアー最終日、お客さんをステージに上げて合唱しちゃったわけですから。でもあれにはとても驚きました。 藤井「ステージの世界と、みんなが観てる世界の垣根をぶっ壊したかったんですよ。前代未聞みたいに言われましたけど、やってみたらできた(笑)」 大久保「でもそれぐらい、僕らはみんなと一緒にいるんだという気持ちが強いんですよね。その表れです」
――その前までのステージがすごくカッコいい雰囲気だったので、ギャップに驚いたんですが、でも本当はどちらも音速ライン、なんですよね。 藤井「そうなんです。だから、その意味でも新作は『音速ラインはこういう人たち』っていうのが素直に出ているのかなと。音速ラインの名前は知ってても、実際音楽を聞いたことがないひとがいたら、入口にしてほしいなと思います」 大久保「そうだよね。ある意味ベスト的な作品とも言える」
――切なくて刺さることもありますが(笑)。 藤井「でもグッとくるのって人間らしい感情で、すごく大事なことだと思いますよー(笑)」 大久保「たとえば失恋とか、心の揺れ動いた経験ってずっと記憶に残っているじゃないですか。僕らはその胸を震わせる経験を、音楽でやりたいなと思ってやってきてますから」 藤井「だからアルバムで刺さったなという人は、ぜひライブにきてほしいですね。きっと笑顔になれるはずですよ」
●CD情報 『Grateful A.C.』 2012年10月24日(水)発売 価格:2000円/製品番号:YRCN-95197 ≪収録曲≫ 01.Birthday 02.逢いたい 03.逢瀬川 04.Baby Baby!!!!! 05.ポラリスの涙 06.真昼の月 07.心の中にパレードを
●ツアー情報 『音速ライン Grateful A.C.Tour2012』 10月30日(火) 福岡 ROOMS 10月31日(水) 長崎 Ohana Cafe 11月2日(金) 岡山 MO;GLA 11月3日(土) 高松 SUMUS cafe 11月5日(月) 神戸 BO TAMBOURiNE CAFE 11月6日(火) 京都 拾得 11月7日(水) 三重 松坂M'AXA 11月9日(金) 名古屋 今池りとるびれっじ 11月11日(日) 金沢 もっきりや 11月12日(月) 新潟 ジョイアミーア 11月14日(水) 福島 Player's cafe 11月15日(木) 仙台 retro BackPage 11月18日(日) 札幌 musica hall cafe 11月21日(水) 静岡 UHU 11月22日(木) 渋谷 7th Floor <追加公演> 11月29日(木) いわき Bar QUEEN 11月30日(金) 渋谷 7th Floor
●音速ライン公式サイトhttp://onso9line.com/