インドネシア語バージョンの「あたりまえ体操」が、動画サイトで500万回以上再生され、ツイッターフォロワーの約3割がインドネシア人であるなど、インドネシアで絶大な人気を博しているCOWCOW。そんなCOWCOWが、よしもと芸人では初となるインドネシアを含むアジア3国でのツアーを行いました。
今回訪れた国は、インドネシア、タイ、マレーシアの3国。インドネシアには何度も訪れているCOWCOWですが、タイ、マレーシアには初進出で、タイではタイ語、マレーシアでは英語でネタを披露したそう。また、4月に出発した各国の「住みますアジア芸人」にも再会し、さまざまな交流があったようです。
ツアーから帰国したばかりのCOWCOWのおふたりに、ツアーの感想や住みますアジア芸人との交流についてのお話を伺ってきました。
COWCOW(左:多田健二、右:善し)
――最初に3カ国ツアーに行くことになったときは、どう感じましたか?
善し 驚きがない...っていったらなんなんですけど、インドネシアにはこれまで6回行ってますからね。だから今回、「え? アジアツアー行くの!?」って感じにはならなかったというか。
多田 「日本の活動、どうすんの?」っていう(笑)。「なんか、日本から出そうとしてる......」って。
――そんなことはないと思いますけど(笑)。でも、タイとマレーシアは初めてですよね。まずは最初に行った、今回で7回目となるインドネシアでの印象深かったできごとを教えてください。
多田 インドネシアでは、今まではインドネシア語のあたりまえ体操と、向こうの大統領・ジョコウィ(ジョコ・ウィドド大統領の通称)のモノマネをセットでやってきたんですね。で、ジョコウィ大統領は、僕が顔が似てるっていうので、選挙のときによくジョコウィ大統領が「salam dua jari(サラムドゥアジャリ。2番に入れてください、という意味のジョコウィの選挙時のスローガン)っていうことを言われていたみたいで、僕モノマネのときはいつも「サラムドゥアジャリ」って言ってまして。で、そこからちょっと発展して、「ジョコウィさん、ジャカルタに来られてどのくらいですか?」「ドゥア(※2という意味)」「いつまでいらっしゃるんですか?」「ドゥア」「ところでおいくつですか?」「ドゥア」みたいな、そういうやりとりをやるんですけど、それがいつも結構ウケるんですよ。しかもウケるプラスお客さんが一緒になって「ドゥアー!」ってやるんですね。で、「みんなドゥアって言うなぁ......」って思って。一緒にやって、一緒に笑うみたいな。そしたら相方が「ドゥアの歌を作ろうじゃないか」って。で、「ドゥアドゥアドゥ~アー」っていうネタを作って。日本でいうところの数え歌みたいなものなんですけど、今回インドネシア7回目で初の試みとして、そのネタを持って行ったんですね。
善し 童謡に近いような感じのもので。
多田 最初はテレビでやらしてもらったんですけど、テレビは目の前にお客さんがいなかったので、反応がちょっとわからなくて。で、次の日屋外のレストランで食事をしてたら、30人ぐらいのインドネシアの小学生の団体がいて。なので、「あたりまえ体操知ってる?」って話しにいったんです。そしたら知ってるっていうから「あれ俺らやねんで」って言ったら「ウソや」っていうから、衣装に着替えにいったんです。着替えて小学生の前に現れたら「ホントだ!」ってなって。で、ちょっとだけやったんですよね、あたりまえ体操を。で、ジョコウィのモノマネもやって。で、せっかくやからこの「ドゥアドゥアドゥ~アー」もここでやろう、ってなったんです。そしたらちょうどそこはステージのあるレストランで、「せっかくやからステージでどうですか?」って言ってもらって、ステージでやって。そしたら子供たちは楽しそうにはしてるんですけど、どんな曲やろ?みたいな探る感じで。で、終わったんですけど、もしかしたらもう1回やったらもっとウケるんじゃないかって思って。で、2回やったら案の定みんな盛り上がってくれて。そしたら店員さんもお客さんおんのに「アンコール! アンコール!」って(笑)。で、小学生と店員さんと僕ら全員で「ドゥアドゥアドゥ~アー」を大盛り上がりでやって。それが印象深かったですね。
――では次はタイでの思い出を。タイでは1日2回公演の「週末よしもと」というイベントに出演されたとか。
多田 そうなんです。普通に中川家さんとかも出てはるし、タイのお笑いの方も出てらっしゃって。600人くらいのキャパの会場なんですけど、タイには9万人ぐらい日本の方が住んでらっしゃるんで、2回の公演のチケットが30分で完売して。日本のお笑いに飢えている日本人の方がたくさんおられたみたいで(笑)。
善し お客さん全員日本の方なんで、普通に日本語でネタをやりました。
――外国なのにお客さんが全員日本人って、なんかシュールですね(笑)。
多田 そうですね。だから、逆にタイのコメディアンは結構アウェイでしたね(笑)。タイでは知らない人はいないぐらいのコメディアンの方も出てはったんですけど......いちばんアウェイやったんちゃうかな(笑)。
善し そこは求めてないというか。ほんまにずっと日本にいて、2~3年、今だけタイに来てるって感じの日本人の方が多かったと思うんで、そこまで現地の言葉が理解できないっていう人も多かったみたいですし。
――現地の大学(チュラロンコーン大学)で学生向けのライブもされたんですよね。
善し はい。こっちのライブのお客さんはオールタイ人なので、ネタもタイ語のあたりまえ体操を用意していったんです。あらかじめ、タイの住みます芸人のぼんちきよしくんと、ブンシリさんっていう日本在住のタイのコメディアンの方に、タイの「あたりまえ」を聞いて、それをちょっとアレンジして持って行って。
多田 タイの「あたりまえ体操」の、言ってみれば新ネタですよね。
善し それが予想以上にウケて。例えば、「雨が降ったらビニール袋をかぶる」とか、そういうやつなんです。「お酒飲んでドリアン食べたらオナカ痛くなる」みたいな。僕らわかんないじゃないですか、そんなん。それがボカーン!!ってウケて、ビックリしましたね。
多田 それは気持ちよかったです。
――3カ国めのマレーシアはいかがでしたか?
多田 『One Mic Stand』っていうショーに出演したんです。 日本だと、若手芸人が出る劇場ぐらいの大きさで、いろんな国の方――マレーシア人はもちろん、カナダ人やアメリカ人のコメディアンとかも出演してて。みんな共通して英語でネタをやってるんです。で、出番が終わったコメディアンが客席の後ろで他の人のネタを見てるんですよね。
――ちょっとイヤですね(笑)。
多田 日本ではイヤなんですよ。でも、そのコメディアンたちがいちばん笑ってくれるんです。「ようこそ来てくれました。楽しんで帰ってくださいね」みたいな雰囲気で、いちばん大きな声で笑ってくれたりするんで、そこにすごく感動しましたね。
――そういうの、いいですね。国境を超えて、コメディアン同士通じ合うものがあるというか。
多田 そうなんですよ。リハーサルのときからずっと仲良くて、笑いが絶えない空間で。特にリーダー格の人がすごい率先して笑ってくれる人で......、僕らは「マレーシアの鶴瓶さん」って呼んでたんですけど(笑)。
――(笑)。それは見た目が似てるとか、そういうことなんですか?
多田 まぁ見た目は坊主頭でヒゲとかなんですけど、あったかみがあるといいますか。
――一緒に出演した中で衝撃を受けたコメディアンの方はいましたか?
善し 英語やし、みんな厚切りジェイソンに見えてくるっていうか(笑)。しかもみんな衣装がTシャツとジーパンとかなんで、よくわかんないんですよね、誰が出演者で誰がお客さんなのか。
多田 見た目がいちばんヘンやったんは、タイのコメディアンの方でしたね。ムエタイのカッコして、目の周りを黒く塗ってるっていう。それであんまりウケてなかったのが面白かったですね(笑)。楽屋の真ん中にえらそうに座ってて、「あんなウケてなかったのにようえらそうに座れんな」って(笑)。
――(笑)。話は代わりますが、今回、4月から始まったプロジェクトの「アジア住みます芸人」の方々と2カ月ぶりの再会をされて、いかがでしたか? インドネシアとタイは3組ずつと、多いですよね。
多田 恵まれてるんですよね。だから日本語ばっかり仲間同士でしゃべってて、全然インドネシア語が上達しなくて。「おまえら、絶対日本語しゃべんな」とは言うときましたけど(笑)。
善し もちろんみんながんばってたんですけど、別れ際にね、「ほんまにおまえら、しゃべれなあかんぞ」って。で、日本の番組にも出てるんですけど、「それもいいけど、ほんまにやるべきことは、インドネシアで人気が出ることやし、人気が出なかったら日本の番組だって取りあげてくれへんぞ」って言ったらみんなしゅんとしてました(笑)。
――住みます芸人の中で、印象深い方はいますか?
タイのあたりまえ体操のネタ作りにも協力してくれた、タイのぼんちきよしくんと3人で初めてネタをやったのが印象深かったですね。彼もすごく熱い文章をfacebookに上げてて。なぜかタイトルが「ブラマヨ小杉くんへ」みたいなタイトルでしたけど(笑)。
――なぜ(笑)?
善し 仲いいんですよね、同期で。で、(タイに)行く前にもふたりで飲みに行って熱いことを語り合ったみたいなんです。「今回ネタをやって、気づきました。やっぱり僕がやるのはお笑いです」って。
――でも、「住みますアジア芸人」に選ばれたことって、チャンスですよね。
善し いやこれ、チャンスどころじゃないですよ。激激チャンスですよ。今東京にいたって、芸人は埋もれちゃうんで。これだけ名前が出たり、テレビに出たりできるなんて、激激チャンスですよ。
多田 あと、エスディーきんじょうくん(※マレーシアの住みます芸人)が僕らと一緒にいた時間がいちばん長かったですね。なんかすごいグイグイくるヤツで、日本ではちょっとうっとおしいなと思ってたんですけど、マレーシアで会うとちょうどいいぐらいで。そのグイグイさがいいというか、海外に向いてるというか。元々英語ができるというのもあって、海外の人ともしゃべれるし。意外とこいつがいちばん順応してましたね。
――でもマレーシアの住みます芸人は1組だけだから、仲間もいないですよね。
多田 「日本語でしゃべんの、久しぶりですわ~」って言ってましたね。最初の仕事だけで一緒にいるのは終わりやったんですけど、「もっとついて行っていいですか?」って言われて。で、食事も来て、次の日も来る予定じゃなかったんですけど、「行っていいですか?」って聞かれて、ずっと一緒で。結局、僕らが飛行機乗るとこまでついてきて、でもなんかそのグイグイさが心地いいグイグイさやったな、って。帰るときもさみしそうで。「日本で会っても、もうそんな感じで来るなよ」とは言いましたけど(笑)。「日本はまた別やぞ」って。
――(笑)。ところで、自由時間はあったんですか? そこでなにかやりたいことができたりしましたか?
善し 特にやりたいこととかはなくって、情報もそんなになかったんで、現地に行って知る、みたいな。いつもそうなんですけどね。仕事内容の全部が現地に行って初めてわかる、みたいな(笑)。
――え、そうなんですか!?
善し そうなんです。もちろん行くことはわかってるから、事前にネタも用意していきますけど、番組なんかの打ち合わせも全部現地に着いてからなんで。
――じゃあ結構バタバタですね。
多田 そうなんですよ。こっちは結構バタバタなんですけどね、向こうがなんにもバタバタじゃないというか。
――それはお国柄的なことですか?
多田 そうですね。
――暑い国って、やっぱりのんびりなんですね。
多田 超のんびりですね。最初はイライラするというか......たとえば、日本だったらリハーサルはお客さんがいない状態でやるじゃないですか。でもインドネシアはお客さんを入れてリハーサルをするんですよね。だから、本番はお客さんにとって2回めになるんですけど、それは「笑ってください」というより、「リハーサルで覚えて、本番で一緒にやってください」っていうことなんですね。それを知らずにいたので、お客さん入ってるままでいきなりネタの音を流されて、「いやいや、ちょっと待って!」みたいな感じやったんです。で、「なんやねん、ここ」みたいな感じやったんですけど、実はそういう文化だっていうことを知ってからは、こっちももうなにも驚くこともイライラすることもなく(笑)、「向こうに合わせてやるしかないよな」って。
善し 何も決まってなく、何が起こるかもわからないって思ってないと、とんでもない目に遭うんで(笑)。用意していっても、それ以上のことも以下のこともあるよ、って。元々インドネシアでも『ダシャト』っていう、ずっと出させてもらってるテレビ番組があって、その番組への出演も予定されてたんですけど、ラマダン(断食月)の時期とかぶって、番組自体なくなってしまって。「なくなんのかい!」って(笑)。
――海外ならではのトラブルはありましたか?
多田 僕が、インドネシアから移動してタイに着いたときに体調を崩して、食事にも行けなくて、夜中ずっと震えながらもらった薬飲んで、水分とって、汗かいて......っていうのをしてて。で、翌朝まだ体調がすぐれないのでタイの病院に行って。で、熱はかったら36度6分だったんです。すごいちゃんと、自分で熱を下げられてた(笑)。
善し 僕もタイなんですけど、タイってタイ料理がめっちゃめちゃうまいんですよ、当たり前ですけど。日本で食べるタイ料理のトムヤムクンと全然違うんですよ。で、つい食べすぎまして、トムヤムクンで通風が発症してしまって。ピリピリって足が痛くなって、ちょいちょい腫れして......。ギリギリ、あたりまえ体操で歩けたっていう(笑)。
――あれがギリギリですか(笑)!? じゃあ、そのあとの食生活は気を遣いますね。
善し でもね、アジアの食って結構プリン体が多いものが多くて。だから結構たいへんでしたね。
――今後行ってみたい国はありますか?
善し どうせ行くなら僕はモンサンミッシェルとモアイ像ですね。モンサンミッシェルをバックにあたりまえ体操をやってみたい。「そんなとこでやってんのかい!」みたいなとこでやってみたいですね。ただやるんじゃなくて、もちろん現地の人にも伝わって、面白いと思ってもらえるようなネタをやりたいです。
――素敵ですね(笑)。多田さんは?
多田 僕はやっぱりハワイですね~。
――それは"旅行したい"ではなくて(笑)?
多田 いや決して旅行したいとかではなく、曲調もちょっとハワイアン風にして。で、まぁ、家族が住める戸建を用意してくれたら......全然ハワイに住みますね。
善し 誰でも住むわ! そんなん(笑)。
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