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2016年4月21日 (木)

倉本考案の国語テストに又吉も挑戦! 「又吉直樹さん×倉本美津留さんの「言葉」をめぐるトーク『倉本美津留の超国語辞典』刊行記念」レポート

4月15日(金)、都内のスマートニュース イベントスペースにて「又吉直樹さん×倉本美津留さんの「言葉」をめぐるトーク『倉本美津留の超国語辞典』刊行記念」が行われました(※以下、敬称略)。

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昨年12月に朝日出版社より刊行された放送作家・倉本美津留による著書『倉本美津留の超国語辞典』。
本書は日本語を使った新たな"遊び"の数々を辞典形式で収録しており、この日のイベントでは小説以外にも俳句創作などの活動もしているピース・又吉とともに、言葉や日本語をテーマにトークを披露し、後半は『倉本美津留の超国語辞典』を題材としたペーパーテストも来場者とともに行いました。

満席となった観客からの拍手に迎えられて登場した倉本と又吉。

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挨拶後、倉本は自身が構成を務める『M-1グランプリ』の予選にて、「今も覚えてるネタが、吸うやつ(言葉)は吸いながらいわなあかんみたいな。ストローとか」とピースのネタについて切り出すと、又吉は「ストローは吸うもんやから、ストロー!」と息を吸い込みながら発し、さっそく笑いを誘います。

いまやピースの代表的なネタでもありますが、当初は漫才のネタではなく、「なんで吸うものやのに、吸わんで発音してんねん」という疑問が浮かび、それを相方の綾部に伝えたところ「考えてきたネタよりも笑ってたんで、あ、こっちの方がええかな」と漫才へ落とし込んだとの逸話を明かした又吉。

次に、倉本が「辞書、辞典に、僕は言葉の分け方を増やしたいなと思ってるんです。吸うものばかりを集めた吸うっていう項目があってもいいなと(笑)」と『倉本美津留の超国語辞典』の狙いを語ります。

新たな切り口の辞典と言えば、又吉も新たに作った四字熟語をまとめた『鈴虫炒飯』(田中象雨との共著)を2012年に刊行。

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又吉お気に入りの新・四字熟語ゆえのタイトルだそうですが、文庫化される際、出版社側から変更をお願いされ、『新・四字熟語』と改題したとの裏話も披露します。

また、「本を読むのが嫌いで、辞書を読むのが好き」な少年だったという倉本は、「だから文学のタイトルとか誰が作者だとか、おもろいタイトルやなあ、おもろい名前やなあっていっぱい覚えていたけど、読んでない(笑)」と述懐。

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その後も2人は、辞書や語源といった話に花を咲かせ、『爆笑レッドカーペット』用に作ったピースのネタ「想像してごらん」について倉本が触れると、元ネタとなったオノ・ヨーコの詩集『グレープフルーツ』の話題で盛り上がったり、又吉が数年前から「勉強している」という俳句の魅力を語るも「言わずとも言えてしまうという日本語の仕組みを理解してしまうと、どんどん言葉が短くなって、研ぎ澄まされていってるつもりで、全く全然相手に伝わらない」との理由で、「芸人にとって、俳句ってやりすぎん方がええのかな」といったジレンマを吐露する一幕も。

ここからは、入場時に配布された「倉本美津留の超国語テスト」と名付けられたテスト用紙を回収し、その回答をスクリーンに映し出しながらトークを展開。

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改めて本書を手にした又吉は、作家の高橋源一郎が帯に寄せた『やりすぎだ、倉本。あんた、日本語のストーカーか!』を取り上げ、「ホンマに高橋さんの推薦文の通りですよね」と日本語に対する執着心に感心する反面、「途中、怖くなる瞬間があるんですよ。こんないっぱい、数多く出たなと思って」といった感想も述べます。

テストの一問目は、「外国の有名人の名前を、その人となりも加味してうまく漢字に変換しなさい」という設問(【外国の偉人に漢字の名前を】として本書に収録)。
「トム・クルーズ→富・狂頭(意味=富を得すぎて頭が狂った)」との例題で、大喜利ムードが漂うなか、客席から回収された回答用紙には「バラク・オバマ→馬楽大穴」「セナ→刹那」「トミー・リー・ジョーンズ→富利上手」といったハイレベルな回答が並び、倉本も「いいですね」を連発します。

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そして又吉が事前に考えた回答は、「タイガー・ウッズ→体餓・渦」で「体に餓えて渦を巻いた」と解説すると、客席から賛同の笑いと拍手が。

次は「同じ読み方をする熟語が三つ以上入っている短文をつくりなさい」という設問です(例:「五階で碁会という誤解」/【同音言葉多入り短文】として本書に収録)。
これに又吉は「講師が公私混同し権力を行使し、鉄格子に入れられた」と"こうし"を4つ入れた回答を。

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「漢字が上下逆転しても成立する熟語を使って、面白い短文をつくりなさい」(例:「気色の悪い色気だね」/本書には【両立熟語】として収録)では、倉本が『火花』と『花火』も両立熟語であり、『火花』が花火のシーンから始まると指摘すると、又吉は「そうですね、イメージとして多分あると思います」と意識していたことを明かします。
その又吉の回答は「一杯目から目一杯」で、「めっちゃええやん!」と倉本も絶賛。

続いての設問「指し示した部分の名称を答えなさい」(【それ、こんな名前だったのか!】として本書に収録)では、灰皿の煙草を置く溝の部分の名前を回答するというイラスト問題で、又吉は「煙(え)くぼ」と回答。
本当の名前は「煙草休め」でしたが、倉本も「業者さんがつけたらうええわ」と又吉に感心します。

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「韻を踏む言い回しを漫才コンビの名前に見立てて、そのコンビのやる漫才ジャンルを書きなさい」(【言葉の漫才師】として本書に収録)との設問には、客席から「にっちも・さっちも=行き詰まり漫才」といった秀逸な回答が続出。
「最初に思いつくの全部載ってましたね」と苦戦した様子の又吉の回答は、「ワンフォーオール・オールフォーワン=客に媚び倒し漫才」で、「僕らがスベってるってことは、みなさんがスベってるってことですからねー!」との漫才セリフに爆笑が生まれました。

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「中原中也の、空中ブランコは「ゆあーん ゆよーん」とゆれる、に負けない擬音表現を考えなさい」(【擬音唱者】として本書に収録)では、中原の擬音を「勇気いりますよね」と述べた又吉ですが、「無くなったシャンプーは『主(しゅ)よ! 主(しゅ)よ!』と『空気を吐きだす。』」と回答で笑いに包まれると、倉本も「擬音に漢字あてましたよ(笑)」と不意をつかれた様子。

最後に「同じ形を含んだ漢字だけしか使えないというルールに則って、味わい深い短文をつくりなさい」(【淋しい森林】として本書に収録)は、「淋しい森林」では「木」が入る漢字しか使っていないように、同じ形を持つ漢字のみを使って短文をつくろうという難問です。
ここで又吉は「モンスターエンジンの大林に会う度に、"お前は森やで"って言うんですよ。先祖の認識で大きい林って言ってるけど、森やん。小森さんは林」といった見解も。
そんな又吉の作品は、「桑野信義が綴る叙述ミステリー『双子から受け取ったトランペット』」と「又」を12個も使いましたが、ルールに反して「又」を含まない漢字も使ってしまい、「惜しい」と考案者の倉本も残念がります。

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その後の又吉は、「この(淋しい森林)ルールを俳句に持ち込んで、どんな反応になるか一個作った」そうで、それで作った「桑の実や双子反する綴り方」という一句を句会で発表したそうです。
句会では「『又』っていう字がこんなにいっぱいある俳句、誰ですか作ったの?」みたいな反応を得たそうで、満足気な又吉に「作ったの"又"吉やからね(笑)」と倉本。

イベント中、倉本は随所で「縛りが出来ることによっておかしな文章が出来て、そこに風景が出来るという楽しさなんですよね」と本書で提案した遊びの醍醐味を語り、本書をPR。

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最後に倉本から「小説、書いてんの?」と訊かれた又吉は、「書き始めたところですね。(二作目という)プレッシャーあったんですけど、書き始めるとないですね。没頭できるというか」と順調に筆を進めている様子を伺わせます。
倉本は改めて「そのために生まれて来た人やと思うんですよ」と又吉の執筆活動を称え、「早死せえへんように(笑)」と激励すると、「なんとか40代を目指して(笑)」と答える又吉でした。

こうして、日本語の奥深さと新たな言葉遊びが堪能できた今回のトークイベント。
終演後は、倉本によるサイン会に列が出来ていました。


【ピース】【又吉直樹】

『倉本美津留の超国語辞典』

倉本美津留・編著
朝日出版社刊
定価:1,814円(本体1,680円+税)
判型:B6判変型
ページ数:370ページ
ISBN:9784255008974
Cコード:0095