板尾創路が行定勲監督のロマンポルノに主演! 「ロマンポルノ リブートプロジェクト」完成報告記者会見
8月24日(水)、東京・日本外国特派員協会にて「ロマンポルノリブートプロジェクト」完成報告記者会見が開催され、映画監督の塩田明彦氏、白石和彌氏、園子温氏、中田秀夫氏、行定勲氏が登壇しました。
同プロジェクトは、「日活ロマンポルノ」45周年をきっかけとして、映画監督へ新しい映画表現の場を提供したり、クラシック作品群の上映等を通して、新作と旧作を活性化することを目的としてスタートしたもの。
約28年ぶりとなる新作の製作では、国内外から注目される気鋭の監督の中から5人の監督が選ばれ、同じ製作条件のもとで表現を競うことに。ロマンポルノの"定番ルール"を踏まえながら、現在のフォーマットに置き換えた6つの条件(総尺80分前後、10分に1回の濡れ場、製作費は全作品一律、撮影期間は1週間、完全オリジナル作品・脚本、ロマンポルノ初監督)が設けられ、それぞれの監督が作品を作りあげました。
日活の代表取締役社長・佐藤直樹氏より本プロジェクトの説明があったあとは、各作品のメイキング映像が放映されました。
その後監督が登壇。簡単なプロフィールが紹介されたのち、質疑応答にうつります。
塩田氏がメガホンを取った『風に濡れた女』は、第69回ロカルノ国際映画祭の国際コンペティション部門で若手審査員賞を受賞。そのことについて塩田は「今、ロマンポルノを撮ろうと思ったら、女性の観客のことも意識することが必要だと思いました。ロカルノ映画祭では、20代から60代までの幅広い女性に支持をいただけたので、女性もこのような作品を求めているんだな、自分はその期待にある程度は応えられたんだなと実感しました」と思いを明かします。
また、「今の日本映画は自由だと思いますか?」という質問には、「すごく答えにくいですが、映画業界にはあらゆる不自由があるのが大前提です。どこまでこの脚本のままでいけるか、どこまでキャスティングの希望が通るか。真夏に真冬の撮影をしなきゃいけないこともあるし、常に不自由はつきまといます。その不自由とどう向き合っていくかが監督の力量でもあると思います」と答えていました。
白石氏は、自身の監督作である『牝猫たち』が、田中登監督が手がけたロマンポルノ作品『牝猫たちの夜』とタイトルが似ていることについて聞かれると、「僕は田中登作品を観ながら映画を勉強しました。デビュー作の『ロストパラダイス・イン・トーキョー』のほうが強く影響が表れていますが、この作品もオマージュといえると思います」と語ります。
5人の監督の中で、唯一日活ロマンポルノの制作にかかわっていた中田監督。ロマンポルノ作品を量産した小沼勝監督のもとで助監督として経験を積んでいたことから、今作『ホワイトリリー』は小沼監督へのオマージュですか?という質問を受け、「小沼監督からは多くを学びましたが、この話をもらってから参考にしたのは、曽根(中生)監督の『続・レスビアンの世界 愛撫』の脚本など。だから小沼監督にはインスパイアはされたが、オマージュというほどではないですね」と振り返っていました。
自身の監督作『アンチポルノ』について、「ポルノ業界を皮肉に描いている、という解釈で合ってますか?」と聞かれた園氏は、「いえ、間違ってます」とキッパリ否定したため、場内からは思わず笑いが。「最初は断ったんです。今、ポルノを撮る必然性はないと思ったので。でも日活さんから『じゃあ、必然性がないことを映画にしたら?』と言われたので、タイトルが『アンチポルノ』になりました」と経緯を述べ、「僕の高校時代はロマンポルノには必然性があった。今は時代も違うし、センチメンタルな意味でのポルノは消滅したと思います。そんな中で女性の裸がどのように消費されるか、女性の権利と自由とは何かを考えて撮りました」と語ります。また、観客をどの程度意識して作品を作っているかという質問については、「去年は怒ることばっかりで......。この国に対してとか、いろいろなんですけど、その怒りをぶつけたいと思って作ったのがこの作品。なので、誰に向かって作ったかというと自分に向けて作っていて......だからこの映画見なくていいです。自分だけが見ればいいんで」と言い切り、会場を沸かせていました。
この日、手がける作品タイトルが『ジムノペディに乱れる』であることが発表され、板尾創路が主演を務めることが明らかになった行定監督。板尾が演じるのは、鬱屈した気持ちを抱えながら、肌のぬくもりを求めてさまよう映画監督。ヒロイン役を芦那すみれさんが務め、岡村いずみらさんらが共演します。
©2016 日活
そんな行定監督は、「昔、映画少年だった時代に日活ロマンポルノをよく観ていて、特に神代辰巳監督の『悶絶!!どんでん返し』には感銘を受けたので、今回のお話をいただいたときは嬉しかったです」と話します。
しかし、「実は今回、脚本を2本書いたんです。1本は自分が観たかったロマンポルノ。でもそれは日活さんからNGをくらいまして......(苦笑)。その理由は『女性が観るにはどうか』というものだったんですけど、それを言われて(頭が)真っ白になって、1回やめると言ったんですけど。ボツになった作品は僕の実体験を元にして"性の目覚め"を描いたものだったんですけど、ちょっとスカトロの要素が入っちゃって。それがダメだったのかなぁ。自分としては美しいものだったんですけど。で、女性の視点が必要だと思ったので、女性の脚本家さんにお願いして、女性プロデューサーと一緒に作って。結果的に女性の目線の入った作品を"作らされた"(笑)と思います。本当は1本目を観てほしかったんですけど......。自分で作ります(笑)」と冗談まじりで話し、報道陣を笑わせます。
さらに「(日活ロマンポルノは)『自由だよ』と言われたのに、1本目がボツになったので、自由じゃない。映画監督への信用がないんですよね。商業映画を撮ってても、こいつら(監督陣)は目を盗んで何か企んでいるという、公安の目を常に感じる(笑)。もっとわかり合いたいです」とおどけて話し、笑いを誘っていました。
また、この日は塩田監督、中田監督、行定監督の3作品が第21回釜山国際映画祭に正式招待されることも発表されました。
「ロマンポルノ リブートプロジェクト」の各作品は、2016年11月中旬より新宿武蔵野館ほか全国順次公開されます。
【130R】【板尾創路】
ロマンポルノリブートプロジェクト
・塩田明彦『風に濡れた女』(出演:永岡佑、間宮夕貴 ほか 12月上旬より公開)
・白石和彌『牝猫たち』(出演:井端珠里、真上さつき、美知枝 ほか 2017年1月中旬より公開)
・園子温『アンチポルノ』(出演:冨手麻妙 ほか 2017年1月下旬より公開)
・中田秀夫『ホワイトリリー』(出演:飛鳥凛、山口香緒里 ほか 2017年2月上旬より公開)
・行定勲『ジムノペディに乱れる』(出演:板尾創路、芦那すみれ、岡村いずみ ほか 11月中旬より公開)